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OEMトレーナーで品質を左右する縫製仕様とパターン設計の基本

目次
はじめに:OEMトレーナー、品質の本質とは何か
OEMトレーナーとは、アパレルメーカーやブランドが自社ブランド名で販売する商品を、外部の縫製工場やパートナー企業に生産委託する仕組みを指します。
この中でも、とくに重視される品質の要素が、「縫製仕様」と「パターン設計」です。
製造の現場では、品質がブランド信頼性や消費者の満足度、そして長期的なビジネスの安定を大きく左右します。
しかし、いまだ多くのOEM現場では、昭和から続く属人的なノウハウや、アナログな仕様伝達、現場作業の“勘と経験”に頼る部分が多く残っています。
本記事では、20年以上の製造現場経験を踏まえ、進化が求められるOEMトレーナー製造の品質管理において、基礎でありながら誰もがつまずきがちな「縫製仕様」と「パターン設計」のポイントを現場目線で掘り下げていきます。
また、これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーの視点でバイヤーの考え方を知りたい方にも役立つ情報をお届けします。
OEMビジネスにおける「仕様」と「品質」~現場で起きているリアルな問題
伝わるべき「仕様」が、なぜ現場でブレるのか
OEMトレーナーの生産現場では、発注元(バイヤー)から技術資料や図面、仕様書が送られてきます。
しかし、実際の現場では、その仕様の意図や最終的な品質基準が正確に伝わっていないケースが非常に多く見受けられます。
仕様書に記載された記号や用語は、工場のローカルルールや担当者の経験値に頼る部分が多いため、同じ仕様書でも工場・担当者によって解釈が異なるケースがあります。
例えば、「ダブルステッチ」と記載があっても、ステッチ幅や縫い目のピッチについて明確な指示がなければ、出来上がる製品の印象や耐久性が大きく変わってきます。
このような“仕様の解釈ぶれ”は、クレームの根本的原因となりやすいのです。
バイヤーの「当たり前」とサプライヤーの「現実」のギャップ
バイヤー側としては「仕様書通りに作ってくれるのが当たり前」と考えがちですが、現場では生地の特性や縫製機械、作業者ごとの癖・経験値までが絡み合います。
たとえば、トレーナーのリブ部分の縫い合わせは、見た目や仕上がり感が製品価値に直結します。
しかし、熟練工が多い昭和的な現場では、仕様書よりも現場の「やり方」に重きを置く傾向が根強いのです。
バイヤーが重視する「外観品質」と、サプライヤーが抱える「生産性確保」「歩留まり向上」などの効率性が相反する局面も多く、これが品質トラブルや納期遅延、慢性的なコストアップの一因となっています。
「歩止まり」と「効率性」~現場管理の極意
効率よく生産しつつ、高い品質を確保するためには、歩止まり(良品率)をいかに上げるかが重要です。
実際の工場では、アナログなチェック体制や、検品の属人化が根強く残るため、初期流動で一部工程がボトルネックになりやすい傾向があります。
このボトルネック解消こそ、現場力向上のカギとなります。
OEMのバイヤー・サプライヤー双方が“現場を知る”ことが安定生産と歩止まり向上に不可欠なのです。
縫製仕様の基本と、そのポイント
縫製仕様とは何か?
縫製仕様とは、製品の“形”を作り上げるための作業手順や方法、使う糸の種類、縫い方、ステッチ幅、補強位置などを詳細に定義したものです。
トレーナーの品質を左右する主な縫製仕様は以下のような要素です。
- 縫い合わせ(本体、アームホール、リブなど)の手法
- ステッチの種類(オーバーロック、ダブルステッチ、トップステッチ等)
- 糸の種類と太さ
- 縫いピッチ(針目の細かさ)
- バータックや補強縫い位置
- 各部位のシーム幅
胃に落ちるような現場感覚を持った仕様の作りこみと、指示の徹底が肝になります。
よくある失敗と、現場での工夫
たとえば、糸の色や材質、テンション設定が仕様書に明確に記載されていない場合、上がってきた製品の色味や風合いが想定と大きく異なることがあります。
さらに、リブの付け方や身頃と袖ぐりの縫い合わせ部分で「パッカリング」(生地の凹凸や縫目のシワ)が頻出することもよくあります。
現場では、試作段階で必ず現物確認・現場会議を行い、「このやり方ならこういう仕上がりになる」ことをパターンや縫製担当が“体感”し、数値化・文章化してフィードバックします。
この地道な摺り合わせ(仕様の明文化と現場確認)が、長期的には品質の安定につながります。
デジタル化とアナログ現場の狭間で
近年は3Dパターン設計やデジタルデータでのやりとりも広がっていますが、縫製工程は今なお“手の感覚”が品質に直結します。
経験の浅い作業者や繁忙期の外注先には、ときに「ここは現物見て判断して」といったブラックボックスが発生しがちです。
仕様書デジタル化とチェック基準の標準化を進める一方で、「現場がやりやすい指示か?」という現場目線の配慮が欠かせません。
パターン設計の基本と、その品質インパクト
パターン設計の重要性
OEMトレーナーのフィット感や着心地、綺麗なシルエットを左右する最大要素が「パターン設計」です。
パターン(型紙)が1cm違うだけで、着用時の印象は劇的に変わります。
また、パターン設計の善し悪しは、量産現場での生産性・効率性・歩止まりにも大きな影響を及ぼします。
バイヤーがつまずきやすいポイント
バイヤーやデザイナーが意図したシルエットやサイズ感も、実際のパターンでは「縫製代」「縮率補正」「生地特性」を掛け合わせて初めて再現できます。
よくある失敗が、「イメージ図面やサンプルが良かったのに、量産したら微妙にシルエットが異なる」というケースです。
これは、サンプル段階の生地ロットや裁断伸び、縫製収縮等の条件を、量産現場で正しく補正しきれていないために起こります。
現場では「サンプルパターン」と「量産パターン」の差分検証を必ず行い、確認試験や試着テストも積極的に取り入れる必要があります。
パターン設計と生産効率のバランス
理想のパターンを追求しすぎると、裁断効率や縫製工程が複雑化し、生産効率が極端に下がってしまうリスクがあります。
逆に、現場優先でパターンをアレンジしすぎると、ブランド意図やデザイン性を損ないかねません。
OEM生産においては、「できるだけ歩止まり高く、作りやすく、それでいて美しいパターン設計」が理想となります。
このバランス感覚は、現場経験に裏付けされたパタンナー・生産管理・バイヤー“三者の対話”から生まれるものです。
求められる現場力、そしてこれからのOEMビジネス
現場目線こそが真の差別化要素に
OEMビジネスは大規模になればなるほど、コスト競争や効率化が叫ばれます。
しかし、トレーナーのような定番アイテムでさえ、ちょっとした仕様・パターンの積み重ねで、“ブランド品質”の印象は大きく異なります。
バイヤーが仕様・パターン設計に深く関わり、現場と直接コミュニケーションをとることで、短納期化やコスト削減以上に「作りこみ品質」を得ることができます。
昭和的ノウハウからの脱却と、ラテラル思考のすすめ
製造業全体に言えることですが、“昭和的な属人ノウハウ”に頼るのは、今後ますますリスクが高くなっていきます。
若手世代の育成や技術継承、デジタル化との融合が求められる中で、OEM現場でも「過去のやり方」から一歩踏み出すラテラル(水平的)な発想が不可欠です。
品質を確保しつつも現場力を活かすために、以下を意識すると効果的です。
- 仕様書のアナログ&デジタル両面での明文化
- 短期ロットでの現場トライアルと、そのPDCA化
- パタンナー・縫製管理者・バイヤーの対話重視
- 最新技術の導入と、現場への落とし込み
まとめ:OEMトレーナーの品質は「現場と対話」で決まる
OEMトレーナーの品質は、仕様書の精密さやパターン設計の美しさといった“基礎”を、どれだけ現場レベルで落とし込み、進化させていけるかにかかっています。
現場目線で感じる微細な違和感や改善アイデア、ラテラルな発想が、OEMにおける真の差別化を生みます。
バイヤーとしてもサプライヤーとしても、単なる発注・受注関係にとどまらず、「現場の声」をどうモノづくりに活かすかが、今後の製造業・OEMビジネスの成功の鍵となるでしょう。
そして、それは昭和的なノウハウに“現場の知”と“ラテラルシンキング”という新しい地平線を掛け合わせてこそ実現できるのです。
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