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シャツの襟が崩れない接着芯材とプレス温度制御

目次
はじめに:目立たないけれど重要な「シャツの襟」の品質管理
ビジネスウェアやユニフォームとして欠かせないシャツの襟。
見た目の清潔感や着用時の印象を大きく左右する重要なパーツです。
その美しい形状を生み出している裏側には「接着芯材(インターフェーシング)」の存在があります。
さらに、芯材の機能を十分に発揮させるためには「プレス温度制御」が欠かせません。
この記事では、製造業の現場経験を活かし、シャツの襟が崩れない高品質を実現するための接着芯材選定と、最適なプレス温度制御のポイントを実践的かつ現場目線で解説します。
接着芯材とは何か? 〜シャツの襟を支える縁の下の力持ち〜
接着芯材の基本
接着芯材は、衣服の一部にハリやコシを持たせるために使われる素材です。
主にポリエステルやナイロンなどの樹脂を塗布した不織布や織物で構成され、熱と圧力を与えることで生地と一体化します。
シャツの襟やカフスなど、型崩れが気になる部分では、芯材のクオリティが仕上がりの美しさや耐久性を大きく左右します。
芯材の種類と使い分け
接着芯材には主に以下の種類があります。
- 織物芯 … 高級シャツ、フォーマルに多い
- 不織布芯 … コスト重視の量産品向け
- 編物芯 … ストレッチ性が求められる場合
織物芯は一番ハリがあり、襟立ちが良く高級感を演出しますが、コストがやや高めです。
不織布芯は加工性が高く価格も安価、だれでも取り扱いやすいのですが、持続性や高級感はやや落ちます。
現場では、顧客ニーズ(見た目・価格・耐久性・アイロンがけの容易さ等)を正確に聞き出し、最適な芯材選定が求められます。
バイヤーもサプライヤーも「最終ユーザーに着心地と価値を届ける」視点を見失ってはいけません。
「襟が崩れない」核心はプレス温度制御
芯材接着の失敗例
昭和時代の製造現場では、芯材と生地との間にシワや浮きが生じやすく、洗濯やアイロンがけですぐに襟が「クタッ」となるトラブルが多発していました。
その多くは接着温度・時間・圧力の管理不足に起因しています。
最適な温度管理とは
最近はデジタル制御のプレス機導入が進んでいますが、いまだに「経験と勘」で作業されている現場も多く見受けられます。
一般的に、芯材メーカーが推奨する温度・時間・圧力の指示があります。
例えば、
- 温度:130~150℃
- 時間:10~15秒
- 圧力:1.5~2.5kg/cm²
などが目安です。
しかし、素材や芯材、湿度や生地厚み、仕上げたデザイン(ワイドカラー、ボタンダウン等)によって最適条件は微妙に異なります。
現場では「一律」ではなく、「製品ごとに最適化」を追求するラテラルシンキングが欠かせません。
温度が高すぎる場合・低すぎる場合の弊害
- 高すぎる温度… 樹脂が溶けすぎて生地がヨレる・テカる・芯地が縮む
- 低すぎる温度… しっかり接着されず、洗濯後に剥がれる・膨らみや浮きがでる
これを未然に防ぐには、「加熱前・プレス前の現場検証」が最も確実です。
必ずテストピース(試験布)でMP(最適条件)を設定し、その後製品本番へと移ります。
また、現場スタッフには「なぜこの設定値なのか?」を論理的に伝え、温度・圧力管理の目的意識を持たせることも重要です。
品質へのこだわりがブランド価値を創る
芯材の品質は決して消費者からは見えません。
しかし、シャツの襟がずっと崩れず、何度洗濯しても新品のように立ち上がっている…。
この体験がこそがリピーターやファン、ブランドの信用につながります。
芯材の安易なコストダウンや、温度設定の「手抜き」は、短期的コスト削減にはなっても、長期的には顧客離れを招きかねません。
アナログな昭和的手間と、現場のデジタル化
古き良き技術の効用と時代遅れのリスク
長年、アイロン職人の「勘」に頼ってきた工場では、「微妙な温度変化が読めるベテラン」ほど頼もしい存在です。
しかし、製販一体のグローバル競争時代では、誰がやっても一定品質が出せる標準化・デジタル制御が不可欠です。
古い設備でも、温度ロガーやサーモインジケーターを後付けしてデータ記録し、不具合が起きた際にトレーサビリティを確保する…。
この「昭和+令和」の二刀流が求められます。
無駄な再加工を減らすためのデータ活用
現場で多いのは、襟のシワや芯浮きでの再プレスや手直しです。
これは小さなコストですが、積もれば工程全体の生産性を大きく落とします。
IoTセンサでプレス温度や圧力を常時記録し、QCサークル活動など小集団で課題改善にデータを活用しましょう。
こうした一歩一歩の現場改善が、最終的には「崩れないシャツの襟」=「ユーザー満足」につながります。
サプライヤーとバイヤーのコミュニケーション術
芯材選定での落とし穴
コスト、在庫切れリスク、加工性、耐洗濯性――。
サプライヤーはスペックや価格面を訴求しがちですが、バイヤーは最終的な消費者の価値(着用体験)まで説明できる視野を持つべきです。
「この芯材はなぜ襟が崩れにくいのか?」
「どんなテストを行っているか?」
「生地との相性はどうか? 再現性は?」
こうした項目を定量的に説明し、トラブル時の再発防止策や検証データまで共有するのがプロのバイヤーです。
異常時の責任所在を「見える化」しておく重要性
接着不良や芯浮きが発生した場合、原因は「芯材」「生地」「プレス設定」「管理の習慣」…多岐にわたります。
どんなに良い資材でも扱い次第ではNG品になる。
そのため、バイヤーは「仕様書・工程表・ロット記録」などを正確に整備し、万一トラブル時は迅速に原因特定できる体制構築が必須です。
サプライヤー目線では、現場での評価テストをサポートしたり、問題発生時の再発防止ミーティングに積極的に参加することで、信頼関係を築きましょう。
まとめ:襟芯材とプレス温度は「地味だけど大切な差別化ポイント」
シャツの襟芯材とプレス温度制御は、外からは見えないけれど着心地や品質、ブランドイメージに直結する「縁の下の力持ち」です。
デジタル化の波と昭和的な現場力の両立、そして現場スタッフ自身が工程や品質の本質に向き合う灰色の場所を、データとコミュニケーションで彩りましょう。
現場の知恵と最先端技術を掛け合わせ、「崩れない襟」から製造業の新たな価値を創造し、全ての製造業従事者が誇りを持てるものづくりを推進していきたいと思います。
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