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短期成果追求型のソフト品質向上とその実践

短期成果追求型のソフト品質向上とその実践
はじめに ― 製造業における「ソフト品質」とは何か
製造業の現場における品質管理といえば、従来は「ハード」すなわち製品や部品そのものの物理的品質向上が中心でした。
しかし近年では設計開発のデジタル化や、工場内のFA(ファクトリーオートメーション)システム、さらには受注管理や生産管理に使われるITシステムなど、「ソフト」そのものの品質が企業競争力を大きく左右しています。
ここでいう「ソフト品質」とは、SE(システムエンジニア)やプログラマが従事するIT業界だけの話ではありません。
たとえば製造現場のMES(製造実行システム)、生産スケジューラ、調達管理システムなど、工場を支えるあらゆるIT・情報システムの信頼性や現場親和性を指します。
この「工場発想のソフト品質」は今まさに見直しが求められています。
短期成果追求型が求められる理由
従来の製造業、とりわけ昭和から続く現場文化では、システムやソフトの導入は三年計画のような長期スパンが一般的でした。
しかしグローバルサプライチェーンの急速な変化、VUCA時代に象徴される不確実性の高まり、デジタルによる競争激化などを背景に、短期間で事業インパクトを生み出す「短期成果追求型」のマネジメントが求められています。
とくに購買や調達、生産管理、品質管理の分野では、ソフト品質が短期間で改善されることで納期遵守やコストダウン、トラブル削減といった実利がスピーディに現れます。
昭和型IT導入の課題と「短期成果追求型」のギャップ
昭和から続くアナログ主義が根強い製造現場では、大規模パッケージやカスタムシステムをゼロから数年かけて導入し「一気に置き換える」やり方が主流でした。
その結果、下記のような課題が生じがちでした。
・現場運用と乖離したまま「使われないシステム」になる
・バグ修正や機能追加が一向に進まず、かえって工数やコストが肥大化
・進捗と成果検証の見える化が弱く、内製と外注でノウハウが分断されがち
・調達購買側と現場ユーザーの意識ギャップによる対立
このような構造的課題を解消するには、IT業界だけでなく「現場目線の短期成果追求型ソフト品質向上」が不可欠になります。
ソフト品質向上の具体策 ― なぜ「スモールスタート×アジャイル」が有効なのか
「短期成果追求型」で最も有効なのが、いわゆる“スモールスタート&アジャイル開発”です。
これは単なるITトレンドではありません。
多品種少量生産、現場作業の多様性、情報活用が高度化する現代だからこそ、下記のような理由で理想的なのです。
1. 最小限の業務範囲に、まず小さなシステム・機能を実装
2. 実際の現場ユーザーと即時にフィードバックループを回す
3. 成果(今までできなかったことが・現場でできた!)を数週間―数か月で可視化
4. 最初に生み出された“現場成果”を起点に展開を水平展開
5. ユーザーとバイヤーの距離が近く、納得感と浸透度が段違い
たとえば調達購買のバイヤーであれば、在庫管理と発注業務の見える化(Excel自動集計・在庫アラート表示・受発注連動)のようなミニシステムを、まず一ラインやごく小さな業務フローでリリース。
ユーザー自身が「自分たちですぐ改善できる」と体験した時、そのシステムは現場に強く根付きます。
現場目線のソフト品質改善 ― “製造現場での生声”を生かす
現場でのソフト品質向上は、トヨタ生産方式(TPS)に代表される「現地現物主義」と非常によく似ています。
・現場(ライン)でどのような作業や困りごとが起こっているのか
・品質やトレース対応でどこにムダやリスクがあるのか
・現場担当者自身が小さなシステム改修や設定変更を自律的にできる仕組み
これらを「現場を巻き込んだシステム導入」として実現することが、ソフト品質の飛躍的な向上に直接つながります。
たとえば、私の経験では、部品ロット番号の記録ミス、書式の異なる帳票の手作業転記といった“小さな不一致”が、後のクレームやトレーサビリティ不良として致命傷になりました。
こうした不一致を現場でその場でデジタル記録できるようにしたところ、現場メンバーは「自分たちの仕事が直接システム改善につながる」実感を持ち、積極的に運用に参加してくれた経験があります。
バイヤーとサプライヤーの共創で生まれる短期成果
調達購買部門でバイヤーの立場にある方、あるいはサプライヤーとしてバイヤーとの折衝を日々行う方にとって、ソフト品質向上は「武器」となりえます。
短期的な成果を重視するなら、たとえば下記のような連携が効果的です。
・現場での困りごとや業務フローの可視化をサプライヤーに開示し、共創で改善策を練る
・「できない理由」ではなく「やってみたらこの効果が出た」をデータで共有し、次のPDCAへ素早く移行
・費用が発生しない範囲でのカイゼン案、RPAやノーコードツールをサプライヤーとの実証実験で検証
こうしたバイヤーとサプライヤーの現場協働は、旧来型の「条件交渉⇒丸投げ発注型」と全く異なります。
変化の早い業界では「発注書一枚で終わらず、成功事例ごと社内外に伝播する」ことで、ソフト品質の標準化・水平展開が加速します。
ラテラルシンキングで切り拓く、現場ソフト品質の未来
短期成果を生むためには、従来の“縦割り最適化思考”ではなく、ラテラルシンキング(水平思考)が極めて重要です。
たとえば調達購買と生産管理がバラバラにシステム導入するのでなく、サプライヤーやエンジニアとも「現場の困りごと」や「過去の失敗」をオープンにし、“小さな改善”を一つ一つ積み上げていくべきです。
予算やリソースの壁を超えて、たとえば次のような着想・アプローチが現場で成果を出しています。
・旧来の紙ベース帳票のOCR自動化と現場向けスマホ入力対応
・簡易的なRPA化による転記ミス・人為的エラーの根絶
・IoTセンサーやQRタグを使った「誰でも使える」工程進捗可視化
・現場リーダーが主導する分科会形式での運用ルール整備
・サプライヤー・ユーザー・ITベンダーの三位一体レビュー
ソフト品質は決して「システム屋やIT部門だけの問題」ではありません。
ものづくりプロセスと情報系改善の“両輪”を同時に最適化した企業こそ、短期で目に見える競争優位を築くことができるのです。
まとめ ― 短期成果追求型の“強い現場”が未来を切り拓く
製造業の現場では、今も「昭和型のアナログ志向」や「長期遠大な全社最適主義」が強く根付いています。
しかし、これからの時代に必要なのは、現場目線・ユーザー目線を最優先し、小さく始めて短期間で確実な成果をだす“短期成果追求型”のソフト品質改善です。
このアプローチは、バイヤー、サプライヤー、管理者のポジションすべてに共通して、新しい協働・共創の可能性をひらきます。
「デジタルは現場になじまない」と思われがちな領域にこそ、現地現物を追究した小さな挑戦が大きな価値につながります。
あなたの職場、あなたの担当領域から、スモールスタートのソフト品質改善にぜひ取り組んでみてください。
確かな手応えと、現場の仲間たちとの一体感が、組織とビジネスの未来をきっと変えていくはずです。
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