- お役立ち記事
- 日本サプライヤーと進める共同在庫運営による調達リードタイム短縮
日本サプライヤーと進める共同在庫運営による調達リードタイム短縮

目次
はじめに:日本製造業が直面するリードタイム短縮の課題
日本の製造業は、かつて世界に冠たる「ものづくり大国」として名を馳せてきました。
しかしグローバル競争の激化や、デジタル化の波が押し寄せる現代では、従来のやり方では生き残るのが難しくなりつつあります。
とくに調達のリードタイム短縮は、顧客要求への即応や在庫削減、コストダウンなど数々の課題解決に直結する重要テーマです。
一方、日本のサプライチェーン業界は、未だに「昭和のやり方」から脱却できていません。
エクセルやFAXでのやり取り、年功序列な意思決定、厳しい商習慣…。
この“アナログ文化”とどう向き合うべきか。
今こそ、サプライヤーとバイヤーが協力し合い、「共同在庫運営」の手法で一歩踏み出すことが重要です。
本記事では、豊富な現場体験まで踏み込み、実践的な共同在庫運営のポイントや、意外な業界動向も掘り下げてお伝えします。
なぜ調達リードタイム短縮が求められるのか
顧客からの即納要請の高まり
昨今、顧客の要望は益々厳しくなっています。
納期短縮、少量多品種、小ロット対応。
これらに応えるには、すばやい材料・部品の調達が不可欠です。
各工程ごとにリードタイムを削減することは、生産性と顧客満足を両立させるための基本条件となりました。
在庫削減圧力とコストダウンの両立
過剰在庫はコスト増、過少在庫は機会損失。
このジレンマに答えを出すには「必要な時に必要量」を早く調達できる仕組み作りが不可欠です。
共同在庫によるジャストインタイム供給が、その最適解となり得ます。
リスク分散とサプライチェーン強靭化
天災・コロナ・地政学リスク。
こうした外的要因が調達を直撃する時代です。
一か所集中・単一在庫では危うい状況の中、サプライヤーとバイヤーが協働してリスク分散型の在庫運営を進めるメリットがますます高まっています。
共同在庫運営とは何か?
共同在庫とは
共同在庫とは、バイヤー(製造業メーカー)とサプライヤー(部品・材料メーカー)が在庫を物理的または情報的に共有し、双方の業務効率・リードタイム短縮を図る手法です。
たとえば、サプライヤーが自社敷地内にバイヤー向け製品をストック、バイヤーは必要量だけ即時引き取る方式や、第三者の物流拠点に共同在庫を設定するモデルなどが該当します。
共同在庫運営の主な種類
・サプライヤー側在庫(VMI: Vendor Managed Inventory)
・第三者倉庫型共同備蓄
・工場内委託在庫(サテライト倉庫)
・コンソーシアム型共同在庫(複数社連携)
それぞれの方式を、現場状況や商流に合わせて使い分けることが肝要です。
具体的な共同在庫運営の導入ステップ
1. サプライヤーとの信頼関係構築
日本の製造業は、価格競争一辺倒になりがちですが、「相手と一緒に利益を作り出す」視点が最重要です。
共同在庫運営は一種の共存共栄策。
お互いの在庫コストや補填ルール、不良品・滞留リスクについても包み隠さず議論し、信頼を積み重ねることが大前提です。
2. 適正在庫量・品目選定
何でもかんでも共同在庫化するのは逆効果です。
A. 需要変動が比較的小さい
B. 安定生産品
C. サプライヤーの補充能力が高い
こうした品目から始めるのがお勧めです。
3. IT・情報連携インフラの準備
FAXや電話、エクセル発注ではスピードが出ません。
受払や在庫残数の自動連携、リアルタイムなデータ共有が重要です。
クラウド型在庫管理システム(WMS等)やEDI(電子データ交換)の活用が有効です。
4. 契約・オペレーションルールの明確化
在庫責任の分担、所有権移転タイミング、不良・滞留時補填のルール設定が不可欠です。
現場目線での「例外対応」も最初によく話し合っておくことで、後戻りトラブルを防げます。
現場で実感する共同在庫運営のメリット
1. 調達リードタイムの劇的短縮
必要な部品を即時で引き取れる体制が整うことで、バイヤーは緊急生産や突発オーダーにも迅速に対応できます。
一方サプライヤー側も、急な増産依頼・突発短納期対応を減らせ、効率的な生産計画・労務管理が可能になります。
2. サプライチェーンの最適化と全体最適
バイヤー単独の最適化から、サプライチェーン全体の最適化へ――。
たとえば輸送費の削減、バラ積み・少量輸送の抑制など、トータルコストダウンにも繋がります。
3. 導入のしやすさ(昭和的商習慣の中でも…)
現場で実感するのは、昭和型の「長年の付き合い」や「阿吽の呼吸」がかえって武器になるという点です。
日本特有の“義理人情”と“厳しめ調整文化”が、共同在庫運営の現場推進では大きな安心材料となることも多々あります。
昭和から抜け出せない現場と共同在庫運営のギャップ
デジタル化の壁とアナログ現場の現実
業界全体がデジタルトランスフォーメーション(DX)を叫んでいる一方で、現場は「今日も電話や手書き日報」「受発注ミスはベテランが頭でカバー」といった昭和流の泥臭い運営が根強く残ります。
共同在庫運営の推進には、IT投資の観点だけでなく、現場スタッフの教育・巻き込みが必須です。
「朝礼で進捗共有」「現場での現物一致確認」といった地道な習慣も、共同在庫の精度を生みます。
失敗しがちな落とし穴
・在庫責任の押し付け合い
・情報連携の不徹底
・現場負担増・形骸化
こうした失敗事例を未然に防ぐには、経営層~現場レベルまでの風通しがカギです。
「アナログな人間関係力+デジタルな情報連携」が、最高のバランスになります。
共同在庫運営でバイヤー・サプライヤーが得られる変化
バイヤー(調達購買)の視点:交渉力と生産性向上
バイヤーはサプライヤーとの協業体制を構築することで、単純なコストダウン交渉から、共に利益を追求する「パートナー型交渉力」へシフトできます。
調達担当者の働き方改革にもつながります。
サプライヤーの視点:安定経営と付加価値提案
サプライヤーにとっても、需要変動の平準化、安定受注、廃棄ロスの削減など、経営リスクの低減が期待できます。
また、共同在庫を通じて品質保証・納期保証・工程改善といった付加価値提案の機会も増えます。
若手・将来バイヤー志望者への示唆: “枠を超えた交渉力”を
従来型の「値切り交渉」や「納期催促」を超え、生産計画や物流現場・ITまで理解する“帯域の広いバイヤー”が今後は必要です。
一歩踏み込んだ現場同行やサプライヤーの工場見学、現場の課題ヒアリングからスタートを切りましょう。
最新業界動向:共同在庫運営が「標準化」する未来へ
昨今の経営層や現場では、共同在庫やリードタイム短縮は特別なノウハウではなく、「やっていて当たり前」の発想へと進化しつつあります。
・JIT(ジャストインタイム)の発展系
・IoTでの自動在庫管理、AIによる需要予測型共同備蓄
・サプライヤーとの共創型SCMプロジェクト
・異業種共同備蓄や業界コンソーシアムの設立
こうした新潮流に乗り遅れないためにも、まずは自社の現場改善から小さく始めることが肝心です。
まとめ:人間力とデジタルの融合が製造業の新時代を創る
調達リードタイムの短縮は、工程ごと、取引先ごとに地道な改善の積み重ねが不可欠です。
共同在庫運営は、サプライヤーとバイヤーが「一緒に成長していく」ための強力な改善ツールとなり得ます。
昭和の伝統文化や人間関係力をベースに、デジタル活用や現場の巻き込み力を組み合わせて進めることで、日本のものづくりはさらなる高みに到達できるでしょう。
“調達購買の未来形は、共同在庫と現場力にあり”
未来のサプライチェーン担当者は、「交渉屋」から「現場主義のビジネスデザイナー」へ。
小さな一歩が、必ず大きな進化につながるはずです。
現場で汗を流すすべての製造業関係者が、新たな地平線を共に切り拓いていきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)