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改善活動を「イベント化」する昭和流が現場に定着しない課題

目次
はじめに ~なぜ“改善イベント”は根付かないのか
製造業の工場現場で永遠のテーマとも言えるのが「改善活動」です。
ほとんどの企業がQCサークル活動や5S、カイゼンイベントなど、何らかの形で業務改善を行っています。
しかし、その一方で「イベント的に一時やるだけ」「結局もとに戻ってしまう」「形骸化している」という悩みは、どの現場でも耳にします。
なぜ昭和流の“イベント化された改善”は、現場に根付きづらいのでしょうか。
本記事では、製造業20年以上の現場経験を踏まえ、アナログ業界独特の風土や購買・生産管理・品質管理等の観点も交えて、問題の本質を掘り下げます。
また、改善活動が“本当に現場に根付く”ためのヒントもお伝えします。
昭和的「イベント化改善」の典型的な光景とは
一斉清掃、QC発表会、カイゼン提案… 毎年恒例行事の裏側
昭和から続く多くの日本の製造現場では、春や秋になると一斉清掃やQCサークル大会、カイゼン提案表彰といったイベントが恒例行事として組まれます。
部署ごとに「今年の改善計画」を作成し、目標件数を設定し、発表用の書類を用意して各自が“イベント”に臨む光景が今も珍しくありません。
やれば「頑張った感」は出ますが、数か月後には元の職場風景に戻ってしまう…というケースが、なぜ繰り返されるのでしょうか。
イベント主導=現場任せ、実務とかみ合わない構造
イベント化される改善には、決まって「担当者(推進者)」が選出されます。
しかし多くの場合、現場リーダーや班長などが日常業務の合間に“ごく短期間だけ”熱心に取り組む形になります。
現場オペレーターやライン担当者一人ひとりの自発的・継続的な取り組みとして定着しにくく、やがて“やらされ感”に変わり、形だけの活動になっていく例が後を絶ちません。
問題解決型ではなく、表彰・報告型になってしまう理由
また現場で多いのは、「何をどう改善したいか」よりも「どんな提案を出せば評価されるか」「今年は○件出す義務」など、“イベントとして数値・実績を出すこと自体が目的化する”事態です。
普段感じている“本当の悩み”やクリティカルな課題がスルーされ、小粒なアイデア集めに終始することもしばしば見受けられます。
こうして昭和流の制度疲労が現場を蝕み、“改善イベント疲れ”を引き起こすのです。
「なぜ続かない?」昭和流イベント型改善が陥る根本的課題
1. 改善の「主体」が現場にない
イベント化された活動はトップダウンで始まり、現場では「この時期がきたからやる」という雰囲気になりがちです。
現場の日々の悩みや課題とは別の「上から降ってきたノルマ」と受け取られ、自分ごととして捉えられづらいのが実情です。
本来改善は現場主導=現場で起きているリアルな困りごとを解決する営みであるべきですが、イベント型だとどうしても“やらされ感”“他人事感”が抜けません。
2. 成功体験や学びが“会社の資産”にならない
イベント型では、せっかく成功した改善も大会発表や表彰で終わり、「その後どうなったか」を検証する仕組みが弱い場合が大半です。
個別の担当グループ内ではノウハウが共有されても、会社全体のベストプラクティスとして“資産化”されにくく、部門や工場の壁を越えた横展開や継続的な育成文化が育ちません。
3. 忙しさと「見える化」のバランス崩壊
現場の実務は年々忙しさを増し、リードタイム短縮や多品種少量対応、コストダウン等のプレッシャーも激しくなっています。
こういった状況下で“イベント時だけの見える化”“一時的なチェックリストづくり”は、現場にとって“本業の負担”と取られやすく、本来は不要な書類仕事や会議が増えて逆効果になるリスクもあります。
構造的な変革が迫られるアナログ業界~昭和から令和へ
なぜ今、現場改善が改めて注目されるのか
世界的なサプライチェーンの分断やエネルギー高騰、熟練工不足、働き方改革……
2020年代の日本のものづくり現場は、昭和とは比べ物にならない複雑さとスピード、そして持続可能性が求められる時代となりました。
特に調達・購買や生産管理の部門にとっては、属人的な経験や現場勘だけに頼る運営はもはや成り立たなくなっています。
この時代においてこそ、日々の職場改善(カイゼン)が「現場力を底上げする唯一無二の武器」として改めて脚光を浴びています。
イベント化が温床になる“昭和型思考”の悪影響
しかしイベント化された改善の延長線上に、令和の競争を勝ち抜く“現場力の本質的強化”はありません。
それどころか、「改善=一部の人だけがやる特別なこと」という昭和的思考が染み付いたままでは、若手が育ちにくく脱属人化も進みません。
現場主導・日常的・自律的な改善文化こそ、今こそ必要不可欠です。
現場で「改善」を定着・進化させる7つの処方箋
1. 毎日の“困りごと”に再フォーカスする
改善はイベントではなく日々の営みです。
「今ここで何に困っている?」を現場で徹底的に聞き出し、可視化しましょう。
日報や5分ミーティングなど“現場発”の声を制度に組み込み、小さな課題こそ拾う仕掛け作りが大切です。
2. 改善サイクルの仕組み自体を現場に任せる
改善の運営は“下から上へ”動かしてください。
経営層や管理職はガバナンスや方向性を示しつつ、「現場で何を、どこまで決められるか」を明確にし、信じて任せる組織文化を醸成することが重要です。
3. 成功・失敗を全員で定期的に“振り返る”文化の確立
どんな改善も成果が出るまでには紆余曲折があります。
「なぜ失敗したのか」「何がうまく回っているのか」を現場全員で率直に語り合い、個人の失敗経験や発見も“全社の資産”にしていきましょう。
そのためには“発表会”より“対話型のフィードバック機会”が有効です。
4. デジタル活用で属人性を外しノウハウを可視化する
改善事例や業務マニュアルをデータベース化し、現場の誰もがアクセス可能にしましょう。
アナログな現場ほど些細な工夫やノウハウが属人化しやすいため、「写真」「動画」「手順メモ」などシンプルなデジタルツールの導入が重要です。
5. 購買・生産管理・品質管理のバイヤー思考を現場に伝える
調達購買やサプライヤーの目線で現場作業を眺める習慣を取り入れましょう。
「原材料の無駄」「品質コストの視点」「顧客との約束を守る視点」を現場で日々意識していれば、イベント的なカイゼンよりも実効性のある改善に繋がります。
6. 成果・気づきの小さな“褒める場”を作る
大掛かりな表彰制度よりも、「いい改善思いついたね!」「昨日よりきれいに使ってるね!」と、その場その場で小さく“褒める”場を設けてください。
こうした心理的安全性が現場の活気と自律的な挑戦心につながります。
7. 継続が見える記録・振り返りこそ“人を育てる”
日々の小さな改善を一冊のノートに書き出す、ホワイトボードに進捗を書いて“全員で見守る”等、“継続すること自体”を可視化しましょう。
3か月後、半年後に「ここまで進んだ!」と自己効用を味わえることも定着の鍵です。
まとめ ~“現場ファースト”こそ競争力の源泉
製造業の現場力はイベント的な活動で一時的に強化できるものではありません。
本質的な競争力は「現場の日々の悩みや気づき」を“自分たちごと”として拾い上げ、みんなで小さく進め、小さく称え合い、継続するプロセスからしか生まれません。
昭和的な「イベント化された改善」は、その負の構造を見直し、令和的な現場自律・全員参画の仕掛けへ抜本的な進化を遂げる必要があります。
バイヤーやサプライヤー、管理職、次世代リーダー、すべての現場人財が一丸となって“小さな挑戦を継続する現場力”をぜひ再構築していきましょう。
(参考情報:改善活動の成功事例やデジタルツールの選び方は今後の記事でも深掘りしてご紹介します。ご質問やご相談もお待ちしています。)
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