投稿日:2025年12月26日

兼任業務が原因で業務改善が進まない構造

はじめに:兼任業務がもたらす現場の課題

製造業の現場において、兼任業務はもはや当たり前となっている企業文化の一つです。
特に中堅・中小企業、あるいは古くから存続する昭和的な管理体制が根強く残る現場では、「1人何役」を背負うことが“優秀さ”の証であり、“仕方のないもの”とされています。
しかし、こうした兼任業務が実は業務改善を根本から妨げている最たる要因であることは、現場の内側にいるからこそ痛切に感じられるのではないでしょうか。

本記事では、兼任業務が業務改善の足かせとなる構造的な要因を、購買・調達、生産管理、品質管理といった製造業の主要部門の視点から分析します。
また、アナログ文化が色濃い製造業界で、どのように“脱・兼任”のトレンドを生み出し、現場の力を最大化できるかについても深掘りします。

兼任業務の構造と“昭和的組織”のDNA

人手不足の慢性化と多重業務化の悪循環

少子高齢化や若手人材の製造業離れにより、現場は慢性的な人手不足に陥っています。
この状況に対応するため、1人の従業員が調達と生産管理、品質管理と技術折衝など、複数の業務を“兼任”して担うことが常態化しています。
このスタイルはときにフットワークの良さや現場知識の蓄積につながる反面、慢性的な過重負荷と「やりっぱなし」「手が回らない」状況を生み出します。

“オールドノーマル”な経営層の考え方

昭和から続く文化では、「一人ひとりの責任感こそが現場力」という認識が根強く残っています。
人ではなく属人化されたノウハウや現場リーダーの“経験”に業務が依存しており、“見える化”や標準化といった改善活動の腰が重い傾向があります。
特に製造業特有の“昭和的職人気質”が、「尻ぬぐいも現場のプライド」といった精神論を助長し、変革への障壁となっています。

日々の火消しと“並行線”の業務改善

本質的改善よりも、毎日起きる小さなトラブルへの「火消し」対応が優先されがちです。
特定の誰かに属する“暗黙知”が多く、“標準化”や“プロセスの可視化”“デジタル化”が一向に進みません。
「明日も変わらず現場が回ればよい」「明日もトラブルを消せばOK」という近視眼的運営が常態化し、抜本的な業務改善が「机上の空論」に終わりやすくなっています。

業務改善が進まない具体的原因

兼任による“時間資源の分散”

兼任者は、1日に優先順位の異なる複数のミッションを同時に抱えます。
午前中は購買のコストダウン対応、午後は生産会議、夕方は品質クレームの処理といったように、自分の脳内を何度も“切り替える”ことで慢性的な集中力の低下を招きます。
「業務改善についてじっくり考える」「新しい仕組みを導入して効果測定する」といった余地が生まれにくくなります。

“やらなければならないこと”優先の罠

複数業務をこなすうち、どうしても「急ぎの納期・緊急対応・トラブル対応」といった“今やるべきこと”に意識が向きます。
一方で、「未来のために必要な業務改善」は切迫感が薄いため、「後回し→永遠の後回し」となり、結局誰も真剣に取り組みません。

属人化の温床と“改善”リーダー不在

業務が人に依存し、担当者の経験とノウハウで現場が「何となく」回る状態が続くと、その人がいないと現場が止まるおそれも生じます。
このような属人化が続いた結果、改善活動を先導できる“旗振り役”が育たず、仕組みやルールも整備できません。
“走りながら考える”文化が、「改善のために立ち止まる」ことすら許さないのです。

なぜ兼任から脱却できないか?

“改善”の投資対効果が見えにくい

合理化・効率化の必要性は現場でも痛感されていますが、直近のコストダウンや売上向上と比べると、「業務改善」は成果が形になりにくい分野です。
管理職や経営層も、「今すぐの業績」や「現場の火消し」の方が優先順位が高くなりがちです。
「専任ポストの新設」や「人数増」は費用面のハードルも高く、簡単には導入できません。

“変える怖さ”と“現場慣性”の壁

既存のやり方に慣れてしまった現場、特に50〜60代のベテラン技術者が多い工場の場合、「新しい手法=リスク」と捉えられがちです。
特定のメンバーやキーパーソンに「任せている」という認識自体が、“自分の裁量”を守る“縄張り意識”として機能してしまうのです。

人材育成と伝承の断絶

複数業務をこなすこと自体が「成長」と称される一方で、新人や若手が業務の全容を体系立てて習得できる場が減っています。
結果として「人が辞める」→「業務が割り振られてさらに兼任が拡大する」という悪循環に陥っています。

現場起点で考える兼任脱却と改善のアプローチ

まずは“棚卸し”と見える化

最初の一歩は、「誰が、いつ、何をしているか?」を徹底的に棚卸しし、見える化することです。
アナログ管理が根強い現場にこそ、手書きの業務リストやポストイットによる付箋管理からはじめてみてください。
意外と、“やってるつもり”のダブりや、名ばかり業務の温床が明確になります。

ムダな兼任のカットと役割分担の再設計

見える化した業務を冷静に整理したうえで、「本当に兼任しないと回らないのか?」を現場メンバーで徹底的に議論しましょう。
業務の一部はアウトソーシングや自動化(たとえば帳票印刷や簡単な進捗管理などのRPA導入)で十分な場合もあります。
“人しかやれない仕事”と“標準化や自動化できる仕事”を切り分け、今いる人材で無理なく成り立つ役割分担に再設計します。

“最低限の改善活動”を固定業務に組み込む

「兼任者だから改善活動はできない」ではなく、たとえば毎週1時間だけ必ず「業務を見直す」「業務改善のアイデアを出す」時間を事前に組み込むようにしましょう。
“ついで”や“空き時間”任せでは進まないからこそ、ルーティン化し、評価制度にも連動させるのがポイントです。

事例紹介:現場目線の変革例

ケース1:購買部門の“脱属人化”で効率3倍

ある中堅メーカーでは、調達担当者が見積り取得・発注・納期管理・サプライヤー評価まで一気通貫で対応していました。
ある日、棚卸しで「何にどれだけ時間がかかっているか」を調べたところ、複数工程のやり直しや確認の二重三重が見つかりました。
そこで、標準化とシステム化を進めて業務分担を明確化。
発注業務はアシスタントに、サプライヤー評価は定例会議に持ち込み、全社で情報を共有。
結果として“人に依存しない”運用が出来るようになり、調達担当者はより戦略的な業務や新規サプライヤー探索に注力できるようになりました。

ケース2:生産管理のRPA化で若手も定着

多品種小ロットで混乱しがちな生産管理に、RPAによる生産指示・進捗報告自動化ツールを導入。
ベテラン社員が習熟している伝票業務や紙帳票をPC・タブレットで一元管理する仕掛けに切り替えました。
以降、異動で配属された若手社員でも早期に業務を習得できるようになり、中堅・若手の離職率が大幅に改善しました。

バイヤー視点・サプライヤー視点から見た“兼任業務”

バイヤーを目指す方へのリアルな現場感

購買・調達バイヤー業務の現場では、「付加価値のある交渉」「サプライヤーとの信頼構築」に集中したい一方で、実際は様々な兼任業務に追われがちです。
専任で“戦略的購買”を目指せる環境か、まだまだ“雑務だらけ”か――。
現場で活躍するには、「何をどこまで自分でやるか」「どの業務を仕組みに変換するか」という視点が不可欠になります。

サプライヤーがバイヤー思考を知る意味

サプライヤー側から見れば、取引先バイヤーが多数の兼任業務で“手一杯”なことが往々にしてあります。
改善提案や納期調整、仕様変更依頼も、先方のリソース状況をイメージしたうえで“提案型コミュニケーション”を意識するだけで、関係性が格段に改善します。
「今は難しい」、「あと○日待てば余裕が出る」というバイヤーの実情を知ると、双方が生産的にやり取りできるのです。

まとめ:兼任文化から“分業による強い現場”へ

製造業の根強い兼任文化は、現場力や粘り強さの象徴であると同時に、しがみついていては21世紀の業務改善のブレーキにもなってしまいます。
人材の持続可能な成長と“強い現場”のためには、「誰が何をすべきか」「何を自動化・仕組み化できるか」「改善活動をどこで仕組み化するか」といった、現場起点の“構造改革”が不可欠です。

古い体質に捉われず、一歩ずつ業務の見える化から着手してみてください。
兼任業務に埋もれず、分業化・自動化・標準化を進めることが、これからの製造業現場を支える最大の原動力になるのです。

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