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ノートPC冷却パッドOEMでCPU温度を10度下げる静音ファン流路設計ガイド

目次
はじめに
ノートPCの性能向上とともに、その発熱量も増加しています。
とりわけ、ゲーミングノートやクリエイター向けの高性能モデルでは、CPU温度が限界付近まで上がってしまい、サーマルスロットリングや寿命短縮の原因となることも多いです。
その対策として「冷却パッド」が需要を集めており、OEM(相手先商標製品)として新規参入する企業も増えています。
しかし、市場に多く出回っている冷却パッドは単なるファンやヒートシンクを組み合わせただけで、冷却効率や騒音、耐久性という観点で最適化されていないものが散見されます。
本記事では、ノートPC冷却パッドのOEM化を検討している企業や、冷却効果・静音性を本気で追求したい設計者向けに「CPU温度を10度下げるための流路設計とファン選定」というリアルな現場目線でのガイドをお届けします。
ノートPC冷却パッド市場の最新動向
「昭和的」設計からの脱却とユーザー要求の変化
かつての製造業界では、「とりあえず金属の板を使い、ファンで風を送る」という昭和的アプローチが主流でした。
しかし、近年では「音がうるさい」「風が届かない」「持ち運びに不便」「ファッション性がない」といったユーザー要求が急速に強くなっています。
冷却性能だけでなく、静音性、デザイン、省エネ、設置の汎用性といった観点で比較されるようになってきました。
その中でOEMメーカーは、バイヤー(ブランド側)の要求を的確にキャッチし、市場の流れを先読みする力が問われています。
技術トレンド:AIによる熱マネジメントから逆算する設計
ノートPCメーカーではAIを活用したファンコントロールやダイナミック・パワーシェアリングが進化しています。
OEM冷却パッドも、ただ風を送るだけでなく、「どこを冷やすか」「どう効率的に熱を奪うか」といったスマートな設計が求められています。
この新しい時代、いわゆる“モノづくりの再定義”が重要となるのです。
流路設計の基礎:CPU温度を10度下げるための理論と現場ノウハウ
冷却の本質は「流路設計」:空気の流れを可視化せよ
大半のOEM冷却パッド設計は、ファンの風量やヒートシンクの材質にばかり着目してしまいがちです。
しかし、本当の冷却効率は「いかに適切な空気の流れ(流路)を作れるか」にかかっています。
ノートPCの底面吸気→CPU・GPU下部→排気 という理想的なエアフローを“途中で妨げない”こと、風が無駄に拡散したりショートサーキット(循環経路で戻ってしまう現象)したりすることを徹底して防ぐことが肝要です。
失敗例:ファン直下に空間を作りすぎて逆に効果減
現場でよく見る失敗が、「ファンの強力な風をそのまま下に送りつけ、広いスペース内で空気を拡散させる」設計をしてしまうことです。
風は直進性が強い一方ですぐ拡がり、局所的にしか効果を発揮しません。
結果、ノートPC中心部のホットゾーンであるCPU下に十分に冷気が届かず、周辺ばかり冷やしてしまい、冷却効果は限定的となります。
正解パターン:ダクト(流路)を絞りポイント冷却
有効な冷却を狙うなら、「ノートPC底面の吸気口に“風を絞って送り込む”」ダクト設計が肝となります。
冷却パッドのファン出口に整流板(ガイド)や内部迷路を設け、ノートPC側の吸気スリットやCPU・GPUのホットスポットに空気が確実に当たる設計を心がけましょう。
エアフローがピンポイントでぶつかることで、表面温度ではなく内部の熱源の温度を実際に10度以上下げることが可能になります。
現場ではPETやABS樹脂で3Dプリントした試作品による可視化、もしくはスモーク(煙)または花粉測定器を使った空気流路の見える化テストが推奨されます。
ファン選定のリアル:冷却効果と静音性の両立
よくあるミス:大風量=冷却効果とは限らない
調達担当者やエンジニアが陥りやすいのは、「一番強いファンを選べば冷えるだろう」という短絡的発想です。
実際は、過大な風量は騒音のみを増やし、流路設計が悪ければ空気が抜けて効果なし、逆に流速が強すぎることでパソコン側の吸気フィルターや内部防塵回路までダメージを与えることもあります。
正攻法:静圧・静音・耐久性の三位一体
冷却パッドに最適なファンの指標は「静圧値」の高さです。
静圧(Pa)は、狭いダクトやフィルターを通過しても十分な風を送り込めるパワーのことです。
単位時間当たりの風量(CFM、m³/h)ではなく、「どれだけ抵抗を突破できるか」という側面が冷却パッドでは重要です。
さらに、軸受けにボールベアリング/流体軸受けを採用し、騒音発生源となる振動や軸鳴きを極力抑えるものが好まれます。
現場で私が推奨するのは、小型静圧ファン(70mm~92mm径、ブラシレスDC、PWM制御可能)の1000rpm~1800rpmクラスです。
また、複数台の低速ファンを等間隔で配置し、風の分散とノイズ低減を同時に実現する手法も有効です。
企業事例:静音設計の成功例
国内大手PC周辺機器メーカーと連携した際、独自に設計した迷路状ダクトと低速高静圧ファン(90mm、1300rpm)を計4基搭載。
音圧レベルは27dB(A)以下を達成しつつも、温度測定ではCPUコア温度がピーク時で11.2度低下。
この経験からも、流路設計とファン選定、さらには騒音試験(JIS B 8610準拠など)を組み合わせることがOEM事業成功のカギといえるでしょう。
量産時の調達購買・品質管理の要所
OEM視点で重視すべきチェックポイント
流路とファンはOEM品設計上明快な差別化要素ですが、量産段階では「バラつき管理」も重要になります。
例えば、海外協力工場やサプライヤーの風量・静圧・ノイズなどの性能バラつき、樹脂成形時のダクト部分の歪み、ファンの回転数・電圧誤差、不良基板による異音発生リスクなど、量産ならではの課題が噴出します。
ISO9001などの品質保証体制と、「多点測定」によるバラつき把握を徹底しましょう。
また、購入時の抜き取り検査だけでなく、現物評価をバイヤーとサプライヤー側でダブルチェックし、不良流出を最小化する“現場コミュニケーション”が必須です。
部品調達:安易なコストカットの罠
OEM製品の価格競争が激しくなる中、調達購買部門はしばしば「コスト最優先」に振れがちです。
しかし、安価なファンや粗悪な素材は短期的な利益につながっても、中長期的には返品・クレームやブランドイメージ毀損、リピート低下につながってしまうリスクがあります。
認証取得実績のある部品メーカーや、過去に信頼性テストにパスした調達経路を活用し、万一の際のトレース(ロット追跡)対応も視野にいれるべきです。
製造現場から見た実装・バラツキ低減のコツ
工場での組立て時、「ファンと流路がわずかにズレる・隙間ができる」「樹脂パーツが反ってはまらない」といった問題も多発します。
こうした地味な現場不良が、冷却性能や静音性の“バラツキ源”となります。
現場工員向けの作業標準書・治具(ガイド冶具や位置決め冶具)導入により、再現性を向上させることが重要です。
また、ファンの取り付けねじ緩み防止、流路内部の余計なバリ(樹脂カス)除去、小さなことですが一つ一つに手を抜かないことが量産品全体の品質底上げにつながります。
バイヤー視点・サプライヤー視点での製品開発・評価ポイント
バイヤーにとっては、冷却効果と静音性の両立に加え、外観デザイン、USBパススルーの省電力性、ケーブルの取り回しやすさといった付加価値も重要評価軸となります。
一方、サプライヤー側での工夫としては、冷却データ(温度低下の数値化)、騒音証明、出荷前検査の厳格化、トラブル時の迅速な部品交換フローなど、「バイヤーにとっての安心材料」を数多く提供できるかが勝負です。
機能だけでなく、使い手の行動・不安・期待をラテラル思考で深堀りし、「次も買いたい」「これがベストだ」と思わせるOEM開発を目指しましょう。
まとめ:これからの冷却パッドOEMに求められる流路設計改革
ノートPC冷却パッドOEMの設計では、単純な投げ込み型設計から脱却し、流路設計・ファン選定・静音性・品質管理を総合的にベストバランスで設計する視点が不可欠です。
CPU温度を10度下げることは、理論上は思ったより難しくありません。
しかし、その10度を「安定して」「静かに」「大量生産でも」実現し続けられる設計・仕組み・現場力こそがOEM事業の命運を分けます。
アナログ的な現場の工夫と、最先端の設計理論を柔軟に組み合わせ、日本の製造業らしい“寄り添い型イノベーション”をぜひ実践してください。
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