投稿日:2025年7月18日

ヘアオイルOEMでダメージケア需要を捉えるシリコンフリー処方戦略

ヘアオイルOEM市場におけるダメージケア需要の変遷

ヘアオイルの需要は、ここ数年で大きく変化し続けています。
かつては、髪にツヤを与える表面的な仕上がりが重視される傾向が強く、シリコン系成分を配合した製品が主流でした。
しかし、消費者の知識が向上し、SNSや口コミサイトの拡大によって情報が瞬時に広がる現代、髪の内側(インナーケア)へアプローチするダメージケア需要が急増しています。
特にOEM(受託製造)分野では、大手化粧品メーカーからインフルエンサー発のD2Cブランドまで、多様な顧客ニーズに応えることが不可欠です。

また、昭和的なマス向け「一律大量生産」から、令和時代の「多様性・パーソナライズ」へと市場構造も劇的にシフトしています。
この記事では、ヘアオイルOEM業界の構造変化を現場視点で捉えつつ、なぜ「シリコンフリー処方」がダメージケア需要に不可欠なのか、具体的な戦略設計について掘り下げていきます。

ダメージケア市場の拡大と背景

ヘアダメージ要因の多様化と消費者意識の変化

現代のヘアケア市場では、単なるブローやパーマだけではなく、カラーリング・紫外線・アイロン・乾燥環境・花粉・エアコンなど、多様な外的ダメージが発生源となっています。
SNSの普及によって「素髪」や「美髪」への意識も高まり、消費者は目に見えるツヤだけでなく、「芯から健康な髪」を求め始めています。

特に20代から40代女性、さらには男性向けへの広がりも顕著です。
Z世代は成分に敏感で、エビデンスや配合目的にも強い関心を払います。
裏を返せば、メーカー・OEM事業者側にも「科学的根拠」や「誠実な処方」、「余計なものを入れない」姿勢が問われる時代に突入しています。

昭和的マーケティングとの決別

かつては大手広告代理店主導の大規模CMや店頭販促が販売の主力でした。
そのときは「とりあえずシリコン入り、髪がまとまる!」訴求が中心であり、根本的な差別化は希薄でした。

しかし今や、消費者ニーズはネット口コミ、SNSインフルエンサー投稿、実体験レビューへ大きくシフト。
「根拠ある成分」「本質的なケア」「ライフスタイルと調和する商品設計」を企業が約束しないと、市場で選ばれません。
ヘアオイルOEM事業でも、自社オリジナル技術や独自コンセプトを持つことが生き残りに必須となっています。

OEM立場から考えるシリコンフリー主流化の必然性

シリコン成分の役割と限界

シリコンは「ジメチコン」「シクロペンタシロキサン」などの名前でヘアケア製品に多用されてきた成分です。
髪表面に膜をつくり、手触り・ツヤを出し、指通りを格段に良くします。
一方で、一度ついたコーティングはなかなか取れないため、過度の使用は「重さ」「ベタつき」「頭皮トラブル」を招きます。
近年は消費者が「本来の髪質を妨げない」「素髪志向」に価値を感じるようになり、徐々に敬遠される傾向にあります。

シリコンフリー処方がもたらす価値

シリコンフリーとは、シリコン系合成ポリマーを一切配合しないことを意味します。
その分、単なる質感操作ではなく「髪を補修し・内部から整える」ケア成分の配合が求められるため、OEM企業としては本質的な製品力の高さが問われます。

そのメリットとして、下記の流れが定着しつつあります。

・素髪志向消費者やアレルギー、皮膚感受性が高い層にも選ばれる。
・複数回使用しても重くなりにくく、日常使いしやすい。
・ヘアカラーやパーマ後のダメージ毛の内部補修ニーズに対応。
・頭皮につけても安心な処方設計がしやすい。
・多様なナチュラル・オーガニックコンセプトと親和性が高い。

OEM現場が直面する処方開発の壁

シリコンフリー処方は、単純に「シリコンを抜く」だけでなく、補修・保湿・質感向上のバランスを高度に取る技術力が必要です。
特に、「指通り」「まとまり」「ツヤ感」を天然由来や高機能オイル、ペプチドなどで創出するには各原料メーカーとの密接なコミュニケーション、配合設計のノウハウの蓄積が不可欠となります。

OEM受託側は、単なる「安価なノーブランド」から脱却し、顧客ブランドの価値向上に直結するレシピ提案型のビジネスモデルに進化していく必要があります。

現場で実践するシリコンフリー処方戦略のポイント

顧客ブランドの“軸”を形にするOEM伴走設計

OEM事業者が競合との差別化を図るには、単なる「処方開発」だけでなく、ブランド立ち上げの初期から顧客のコンセプト設計に伴走することが重要です。
ヒアリング、ターゲット分析、市場競合分析から始まり、配合成分だけではなく、製造ライン設計や品質保証の基準設定にも一貫して携わることで、「信頼して任せられるパートナー」と認知されます。

特にダメージケア訴求商品では、カット・カラー施術後のサロンユーザー、ホームケア派、美容オタク、メンズ市場と多様化しています。
自社の得意分野(例えば高分子ペプチド技術、植物エキス配合、エシカル調達原料など)を明確にし、ブランド側とターゲットを明確にすり合わせることが結果的に“売れる商品”への近道となります。

ラテラルシンキングで処方開発を深化させる

ヘアオイル=アルガンオイル・ツバキ油・オリーブ油などの「定番原料」だけに留まっていては、競争激化から簡単に埋もれてしまいます。
ここで重要なのが「ラテラルシンキング(水平思考)」の活用です。

例えば、
・コールドプレス製法、発酵抽出オイルなど工業的手法で高度な機能性を引き出す。
・未利用資源からアップサイクルされた原料(例:リンゴの皮、ワイン搾かすオイル)を組み合わせる。
・水溶性・油溶性アミノ酸の複数カプセル化により、髪の表面・内部で段階的に溶出する工夫。
・天然オイルのピュアバージョンと精製バージョンをハイブリッド配合して安定性と機能を両立。

このように、処方設計そのものを“価値創造のプラットフォーム”と捉え、既存の枠組みにとらわれない発想で新たな差別化軸を打ち出すことが肝要です。

製造現場での課題とイノベーション

現場目線で見れば、植物オイル由来原料はロットごとに性状がブレやすく、安定した製品品質維持が難題です。
ここに昭和的な「経験と勘」も生きますが、「温故知新」を活かしながらIoT・AIベースの品質管理や、リアルタイムデータの分析も積極的に導入すべきです。

具体的には、
・原料納入時点での成分スペクトル測定×AIでの品質予測
・IoTセンサーによる製造工程ごとの温湿度・粘土・pHトレーサビリティ
・小ロット多品種生産対応の切り替え効率化(段取り短縮・SMED手法活用)

現場のベテラン知見とデジタルの力を「二刀流」で併用できる企業こそ、これからのOEM市場での勝者となっていきます。

サプライヤー視点で捉えるバイヤーの本音と未来戦略

バイヤーがOEMパートナーに求めること

一人の工場長・調達責任者として現場に向き合ってきた経験から言わせてもらえば、バイヤー(商品開発側)が求めているのは「安定供給」や「コスト削減」だけではありません。

むしろ、
・自社ブランドの世界観を理解し「売れる化粧品」に仕立て上げてくれるか
・予期せぬトラブル時、最後まで誠実に解決策を提案してくれるか
・成分トレンドやパッケージ動向など、隠れた市場変化を先回りして示せるか

こうした“共創”姿勢をOEMサプライヤーに期待しています。
バイヤーは社内で「購買=コストだけで生きる部署」ではなく、「マーケット創造の主役」になることが求められ、その使命感・危機感も日々強くなっています。
その意味で、OEM現場には「伴走型の試作提案力」「課題発見型の品質管理」「持続可能なサプライチェーン構築力」など、より高次元の価値を提示できるかがカギになります。

まとめ:ヘアオイルOEMで未来を切り拓くために

ダメージケア分野におけるヘアオイルOEMは、華々しい表面競争の裏側で、現場レベルからの本質改革が静かに加速しています。
シリコンフリー処方は、ただの“流行”ではなく、
・本格ダメージ補修へのニーズ
・ナチュラル・オーガニック・エシカルへのシフト
・消費者(特にZ世代)の情報リテラシー進化
に応える必然的な進化形といえます。

OEMプロジェクトは顧客ブランドの根幹を左右する存在です。
“昭和の大量生産神話”から一歩踏み出し、ラテラルシンキングと現場改革を武器に、製品群一つひとつに本物の価値と未来基準を宿すことが、これからの製造業サプライヤーに求められる使命です。

現場経験豊富な方も、これから購買・調達・バイヤーを目指す若い方も、ぜひ最新トレンドや現場知恵を融合させて、新しい地平線を切り拓いていきましょう。

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