投稿日:2025年10月17日

食品保存容器の密閉性を保つシリコンパッキン硬度と溝設計

はじめに:密閉性は食品保存容器の命

食品保存容器は日常の台所から業務用まで、あらゆる現場で使われている重要なアイテムです。
特に「密閉性」は、食品の安全性や鮮度保持、保存期間に直結するため、絶対に欠かせない基本性能となっています。
そして、この密閉性を大きく左右しているのが「シリコンパッキンの硬度」と「溝(シール部)設計」です。

この記事では、20年以上製造業の現場に携わってきた経験をもとに、シリコンパッキン硬度と溝設計が密閉性に与える影響について、現場レベルのリアルな視点も踏まえながら解説します。
また、バイヤーや調達購買担当者として知っておきたいポイント、サプライヤーとしてアピールすべき差別化要素についても触れていきます。

なぜ密閉性が重要なのか?

密閉性の高い食品保存容器は、単に「汁漏れを防ぐ」「におい移りを防ぐ」だけでなく、食品ロス削減や衛生管理の観点からも社会的意義を持っています。
特に近年は、食材価格の高騰、消費者の食品衛生意識の高まり、HACCP制度化など、食品保存に対する要求レベルが急激に上昇しました。
また、グローバルサプライチェーン全体を俯瞰すれば、鮮度保持によるジャストインタイム納品や、在庫ロスの低減、物流過程での食品事故防止も目的となっています。

このような時代背景の中で、密閉性を支えるシリコンパッキンや溝設計にも、確かな専門ノウハウと現場でのテスト検証が求められるようになっています。

シリコンパッキンの役割と基本構造

まず初めに、シリコンパッキンの果たす役割を整理します。

シリコンパッキンの主な役割

– 液漏れや空気の侵入を防ぎ、食品の保存性を確保する
– 蓋と本体の隙間を埋めて、ガタつきやすき間を解消する
– 温度変化や繰り返し開閉による劣化リスクを低減する
– 洗浄やメンテナンスが容易で衛生的である

一般的な構造としては、本体(容器)と蓋の合わせ面にシリコンの輪を装着し、蓋を閉じることで弾力のあるシリコン素材が隙間をしっかり埋めます。

密閉性を左右する「シリコンパッキン硬度」とは?

シリコンパッキンの「硬度」とは、JIS規格のデュロメータ(Shore Aなど)で定義されるゴム弾性の数値です。
通常、15~80度程度の範囲で設計されます(一般的には30~50度)。
硬度が低いほど柔らかく、高いほど固くなります。

硬度違いによる密閉性・現場での影響

硬度が柔らかい(30度前後)パッキンは、本体と蓋の微細な凹凸まで密着しやすく、気密性・液体保持力が上がります。
一方で、柔軟すぎる場合は以下のような問題もあります。

– 開閉時にパッキンがよじれてズレやすい
– 繰り返し使うと変形・劣化しやすい
– 衝撃や温度変化に弱い(劣化が早まる)

反対に、硬度が高い(50度以上)パッキンを使う場合は、次のような特徴があります。

– 耐久性、変形耐性は高まる
– 繰り返し開閉でも型崩れしにくい
– しかし、蓋の密着力が低下し隙間が生じやすい
– 滑りが悪くなり、蓋が閉まりにくい

現場感覚としては、「本体-蓋の精度が非常に高い(高級ブランド品)」であれば硬度がやや高くても問題ありません。
しかし、多品種生産や大量生産品の場合はバラツキが大きいため、多少柔らかめのシリコン(35~40度)を使うケースが多いです。
この辺りのさじ加減は、バイヤーや開発部門の腕の見せ所でもあります。

溝設計が密閉性に及ぼすインパクト

パッキンだけでなく、その「受け皿」となる溝(シール部)の精度・設計は密閉性を飛躍的に向上させます。

溝にはどんな工夫があるのか?

– シングル溝:ごく一般的な一本溝。コスト重視の量産品でよく使われる設計です。
– ダブルリブ溝(2段階の段差溝):2箇所でパッキンが押さえられ、密閉性が格段に高まります。
– 可変断面溝:溝の幅や深さを位置によって変化させ、外周部では水分・中心部では気密性を確保。

特に、最新の研究では「マイクロリブ(微細な段差)」を設けることで、経年によるパッキンのつぶれ・変形にも追従できる設計が見られます。

金型精度のトレードオフ

溝設計を高精度にするには、樹脂成型用の金型精度を格段に上げなければなりません。
これは設備投資に直結するため、バイヤーや開発担当は、価格・量産性と性能要求のバランスを冷静に見極める必要があります。
また、安価な海外工場では金型のメンテナンス頻度低下から精度ダウンする場合があり、現場監査が必須です。

密閉性と生産管理・品質管理のリアル

昭和から続く「目視検品」「バリ取り」だけでは、現代レベルの密閉性は担保できません。
現場では、以下のような対策が主流になりつつあります。

製造ラインでの自動化トレンド

– パッキン自動挿入装置の導入(人手によるズレや傷を防止)
– エアリークテスターによる全数非破壊検査(一つひとつの密閉テスト)
– 溝部のCCDカメラ画像判定による微小クラック検出
– ロット管理による工程追跡(トレーサビリティ強化)

また、「ISO9001」「HACCP」など国際規格対応には、工程管理/記録のデジタル化も必須です。
現場のアナログなやり方からの脱却、IT/IoTとの融合による品質向上が業界のキーワードになっています。

調達担当・バイヤーの選定ポイント

バイヤーや調達担当が保存容器の密閉性を評価・比較する際、次のチェックリストが使えます。

– シリコンパッキンの材質・硬度グレードの明示
– 溝設計の詳細確認(CAD図面/成型サンプルの取得)
– サンプル品での実使用テスト(汁漏れ試験、冷凍冷蔵、繰り返し開閉耐性)
– 製造ラインの自動化・品質管理体制のレベル
– 前後工程でのパッキン交換サイクルとスペアパーツの入手性
– 海外工場の場合は金型・材質管理の実態(現地監査)

いわゆる「安かろう悪かろう」を避けるために、少なくとも繰り返しテストと現場確認を実施し、ベストなパッキン・溝設計を持つサプライヤーを選びましょう。

サプライヤーが差別化すべきポイント

競争が激しい容器部品業界では「差別化」がキーです。

– 特殊シリコン配合/二重パッキン構造の商品化
– 金型精度アップ(微細溝設計)→ 業界トップレベルであることの見える化
– 自動検査設備による全数検査への対応
– 部品・パッキング部のみのサプライ(アフターサービス力)

これらは、バイヤーの信頼度獲得、継続取引、値崩れ防止に直接影響するため、積極的にアピールしたいポイントです。

まとめ:現場目線でのベストバランスを探る

食品保存容器の密閉性を高めるためには、シリコンパッキンの「最適な硬度設定」と、それを活かす「精緻な溝設計」の両輪が不可欠です。
現場で使い続け、品質トラブルを未然に防ぐ観点では、多少コストアップになっても“芯の通った設計思想”が必要です。

バイヤーはサンプルテストや現場監査を重視し、サプライヤーは技術・品質・安定供給をバランスよく強化しましょう。
アナログな業界だからこそ、「細部へのこだわり」が競争力の源泉となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。
密閉性の本質を押さえ、製造業のさらなる発展に一緒に貢献していきましょう。

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