- お役立ち記事
- サイロ化が進み部門間の情報共有が阻害される問題
サイロ化が進み部門間の情報共有が阻害される問題

目次
はじめに:サイロ化とは何か
製造業の現場において、しばしば聞かれるキーワードが「サイロ化」です。
サイロ化とは、各部門や部署が独立して活動し、お互いの情報やナレッジの共有が阻害される状態を指します。
この問題は、工場のアナログな文化や長年の慣習に根ざしており、デジタル時代の現代においても根強く残っています。
私は20年以上にわたり、調達購買、生産管理、品質管理、工場自動化といった多様な部門で勤務し、工場長として現場と経営の橋渡しも経験してきました。
この現場目線をもとに、サイロ化の実態や起こる理由、そして今求められる解決策について解説します。
なぜ製造業でサイロ化が起こるのか
業務プロセスと組織構造の複雑化
製造業は工程ごとの分業体制が発展してきました。
調達、設計、生産、品質、物流といった各部門が明確に役割を持ち、それぞれのKPIや成果指標に従って動いています。
この縦割り構造が、部門ごとの最適化を促し、自部門の利益や効率を最優先してしまう原因となります。
昭和的価値観と情報管理の壁
日本の製造業に根強く残る「現場主義」「暗黙知の重視」「属人化」は、長年の成功体験に支えられた文化です。
情報は経験豊かなベテランの頭の中や、紙の帳票、手書きの日報に眠ったままです。
例えば調達部門と生産管理部門の間では、材料調達状況がメールやFAXでしか共有されていないことが未だにあります。
これでは部門横断的な問題発見や素早い判断が難しくなります。
IT・デジタル導入の遅れ
多くの現場ではシステム導入が進んできたとはいえ、現場~管理部門間、またはサプライヤー~バイヤー間で真のデータ連携が実現している例はまだ一部です。
部分最適なITツールの乱立、使いこなせない従業員、現場とシステム部門との溝が、サイロ化の解消を妨げています。
サイロ化がもたらす4つの弊害
1)情報伝達の遅延と伝言ゲーム化
部門間での調整や情報共有が遅れることで、工場全体の意思決定も遅れます。
例えば、品質トラブルが発生しても、生産現場から調達部門に情報が届くまでに何日もかかることがあります。
この間に不良品の流出や無駄な仕入れが進行してしまうのです。
2)全体最適の阻害とコスト増加
各部門が自部門の目標を優先することで、過剰在庫やムダな工程が発生します。
調達部門がコストダウンを狙い大量一括発注をしても、生産現場や倉庫が対応しきれず、結局、不良在庫や品質低下に繋がるケースは現場では頻出しています。
3)現場改善スピードの低下
現場からの課題提起が、管理部門や他部署へ届くまでにエネルギーと時間がかかります。
社内調整に追われすぎ、せっかくの改善アイデアが実現されず、従業員のモチベーション低下を招きます。
4)サプライヤー・バイヤー間の信頼毀損
サプライヤーとしては「なぜ急遽仕様が変わるのか」「必要数量をもっと早く教えて欲しい」といった不満が常につきまといます。
それらはバイヤー内部のサイロ化によるコミュニケーション不足、伝達ミスによるものが多いのです。
やがて自社からの信頼も低下します。
今、製造業が直面している業界動向
DX推進の波と“改革難民”
日本の製造業各社ではDX(デジタルトランスフォーメーション)推進が必須の課題となっています。
しかし、長く続いたサイロ化と紙文化がネックとなり、本質的なデータ共有や連携は思うように進んでいません。
一方で、サプライチェーン全体を見渡した最適化、迅速な意思決定、在庫削減といった狙いから部門横断のプロジェクトや共通プラットフォーム導入も加速しています。
旧態依然としたままでは生き残れないという危機感が、経営層まで浸透しています。
外部環境変化への即時対応が不可欠に
パンデミック、半導体不足、戦争や地政学リスクなど、今や外部環境の変動要因は増す一方です。
部門の壁を超えて連携し“全体最適”“即応力”を高めることは、もはやサバイバルの最低条件と言えるでしょう。
サイロ化解消へ向けた具体的アプローチ
部門間コミュニケーション・共感の再構築
ITや制度も大切ですが、まずは部門を跨いだコミュニケーションの場を意図的に設けることから始めてください。
日々の朝礼・昼礼を合同化する、品質・納期トラブルの全社共有会議を開く、調達・生産・品質のリーダー同士が定例ミーティングを設けることは小さな一歩ですが効果的です。
「業務プロセス見える化」と全社的KPIマネジメント
どこで、どんな情報がボトルネックになっているか、現場レベルまで落として業務プロセスを徹底的に棚卸しましょう。
全社KPI(例:納期遵守率、在庫回転率、品質クレーム数など)を部門共通の“目標”とすることで、「自部門だけ良ければよい」という意識から「全体最適」志向へ組織マインドを転換できます。
ITツール導入は“手段”であって“目的”ではない
昨今はERPシステムやサプライチェーンマネジメントツールの導入も盛んですが、現場の困りごとや情報断絶ポイントを明確にした上で、小さく始めることが重要です。
現場にとって「助かる」「作業がラクになる」と実感してもらえて初めて、ITは浸透します。
バイヤー、サプライヤー双方に求められる“共創”姿勢
購買部門は、自社・他部門情報をきめ細かく整理し、サプライヤーへの伝達精度と鮮度を高める努力が不可欠です。
また、サプライヤーも積極的にバイヤーの業務や業界トレンドを理解し、「お困りごとはありませんか」と逆提案していく姿勢が現場信頼を勝ち取る近道です。
現場目線で考えるサイロ化の未来
私はこれまで、サイロ化の弊害を身をもって経験してきました。
たとえば、購買部門がコスト一辺倒で材料調達を進めても、現場で困るのは調達部門の“数字の達成”以上の“スムーズな生産維持”です。
現場と管理部門、バイヤーとサプライヤーが同じ課題意識を持ち、“ひとつの会社”“ひとつの現場”として問題解決を目指すことが、真に強い日本の製造業に必要なマインドチェンジだと痛感しています。
サイロ化は根深い問題ですが、まず「なぜこのような分断が生じたのか」を歴史や構造から理解し、小さな一歩から着実に変革を続けていくことが重要です。
おわりに:サイロ化の解消が切り拓く新たな地平線
製造業の未来は、部門間の壁を越え、社内外に渡るチームワークとリアルタイムな情報連携なしには切り拓けません。
現場からの声を生かし、サプライヤー・バイヤー双方が同等のパートナーとして共創し続けることで、日本の製造業は再びグローバルで戦える存在へと変貌するはずです。
今こそ古い“閉じた城塞”から抜け出し、“ひらかれた現場・組織”への大胆なステップを踏み出しましょう。
サイロ化を乗り越えた先に、現場も経営も、お客様でさえワクワクできるものづくりがきっと待っています。
変化を恐れず、まずは一歩を踏み出しましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)