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事例や演習を交えて学ぶわかりやすい文書の書き方六つのルールと十七の書き方

目次
はじめに:製造業の現場を変える「伝わる文書」の必要性
製造業の現場では品質、生産、調達など多様な業務が密接に連携しており、日々多くの文書が飛び交います。
技術指示書、工程管理表、調達仕様書、クレーム対応報告書――そのどれもが、「正しく、簡潔に、早く」相手に伝わることが不可欠です。
しかし現実には、古い慣習にとらわれた読みづらい文書や、なかなか本質が伝わらないレポートが散見されます。
この記事では、長年現場で培った文書作成のノウハウを、具体的な事例や演習を交えつつ解説します。
新人バイヤーやサプライヤー、そして現場をまとめる管理職が必ず押さえておきたい「六つの基礎ルール」と、応用力を磨く「十七の書き方」を紹介します。
六つのルールで基礎力アップ:文書は「共通語」
1. 目的を明確に
出発点は「この文書は何のため?」です。
現場指示書なら「作業手順の統一」、調達仕様書なら「誤解なく発注要件を伝える」など、読む人が「どう行動すべきか」を意識して書きます。
2. 誰が読んでも分かる言葉で書く
昭和の現場文化では独特の略語や言い回しが好まれがちです。
たとえば「アポイ」「ジャミング」など部署特有のスラングは他部署や取引先には通じません。
「○○装置 停止要因あり」「検査基準値を超過しています」など、事実をそのまま簡潔に記載しましょう。
3. 文章を短く、箇条書きを活用
一文が長いと、現場の多忙なメンバーは要点をすくい取れません。
「○○部品に傷発見
-9時30分:工程停止
-現状復旧見込み 11時」を参考に、結論・要因・対策・期限を分けて記述すると一目で伝わります。
4. 数字やファクトで根拠を示す
「品質が悪い」「作業が遅い」では漠然としています。
「コンベア速度 10m/分 → 8m/分低下(5/20 16時計測)」のように測定値、時間、現場の誰が確認したか等を示すと、納得感が高まります。
5. 読み手(相手)目線に立つ
「自分では分かるけれど、他部署や外部の人は分からない」は大きな失敗要因です。
読者層(新人、ベテラン、取引先など)をイメージし、「相手だったらどの一文が重要か?」を考えて推敲しましょう。
6. 書いた後は、必ず見直す
誤字・脱字はもちろんですが、一度書いたら声に出して読んでみたり、第三者に見せてみましょう。
現場の仲間同士、「意味が分からない」「○○の説明が抜けている」と指摘しあう文化を作れば、自然と文書の質も上がります。
十七の書き方Tips:現場で役立つ実践例
1. 5W1Hを必ず明記する
いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どうしたか――「○月○日、○○作業場で、○○部品に傷を発見。担当:A。原因:配膳時の接触。」
2. 見出しやタイトルを的確に付ける
取引先宛や社内報告書は、「○○不良発生・対応報告」「生産計画遅延連絡」など、内容がひと目で分かるタイトルを意識します。
3. 箇条書き・番号書きで構造化
だらだら長文でなく、「(1)現象 (2)原因と推定根拠 (3)今後の対策」のように分類するだけで、グッと読みやすくなります。
4. グラフや写真を組み合わせて視覚情報を活用
品質管理や生産現場では、言葉だけで説明すると誤解が生まれやすいです。
「傷の位置を写真で○印」「稼働率グラフ」といった挿絵を使い、見落としを防ぎます。
5. 重要ポイントは太字や色分けで強調
工場の掲示や社内通達では、「納期厳守」「安全ルール厳守」など、目立たせたいキーワードを強調しましょう。
ただし、色使いは赤・青・黒でシンプルに。
6. 一文一義に徹する
「○○の不具合は○○によって発生しました。対策は○○です。」と、一文で一つのことだけ述べましょう。
複数要素をダラダラつなげると、誤解の元です。
7. 行動指示は具体的かつ期限をつけて
「対応をお願いします」だけでなく、「5月25日までに山田課長から現状と対応案をメールで連絡」と納期・担当・方法をセットで指示します。
8. 固有名詞・正式名称を使う
主語や対象が曖昧だと、工場間やサプライヤーとのやり取りで混乱します。
「○○ライン第三工程」(誰でも分かる設備名)、「A社製サーボモーター」(型式や固有名詞)で記述しましょう。
9. 専門用語は簡単な説明を添える
初めての取引先や若手バイヤーが「自己流で解釈」してしまうトラブル例は多いです。
「イニシャルテンション(初期張力)」など、( )で補足を加えることが重要です。
10. 反対意見や問題点もきちんと記載
失敗事例や課題が「なかったこと」になると、同じミスが繰り返されます。
「今回の不良率は従来比1.5倍増。主因として○○が挙げられますが、現場の一部から工法見直しの希望あり」と正直に記載しましょう。
11. テンプレートや定型フォーマットを準備する
「現場報告書」「定期連絡」などよくある文書は、日付・担当・内容・対策案など必須項目をひな形化し、抜け漏れを防ぎます。
12. フロー図や工程図で作業手順を明確に
文章だけだと伝わりづらい複数手順は、「①原材料受入→②加工→③検査→④出荷」など、フローチャートを併用します。
13. シンプルな敬語・ビジネス用語に統一
現場独自のヒエラルキーが色濃く残る業界ほど、堅すぎたり特殊な表現が多いものです。
「ご多忙のところ恐れ入りますが」「何卒よろしくお願いします」など、無理のない定型文を使いましょう。
14. 改行・空白を上手に使う
一行ごとに話題を整理したり、ブロックごとに空行を挟み、視認性を上げます。
特にスマホやタブレット閲覧にも対応できる書き方です。
15. 自分の主観・推測だけに頼らない
「たぶん」「~と思われる」よりも、「○月○日、○○データにより確認」とエビデンス重視で記述します。
16. 定期的なアップデート・バージョン管理
工程変更や品質規格の改定など現場変化に応じて、「ver1.2(2024年6月更新)」などバージョン表記や改定履歴を文末に残しましょう。
17. 最終確認は第三者にゆだねる
「全員が分かるか」「抜け・誤記がないか」、自分だけでなく他の現場メンバーに読んでもらい、フィードバックを必ずもらう習慣をつけましょう。
具体的演習:事例で分かる良い文書・悪い文書
例えば、バイヤーが部品不良の報告を受けた場面――
【悪い例】
「ラインで止まりました。よろしくお願いします。」
【良い例】
「5月18日(木)、第3組立ラインで11時15分、不良品(ボルト欠損)の混入を確認。
現象写真を添付。
担当:佐藤。
原因調査中。応急対応として該当ロット全数検品を実施し、ライン再開は13時を予定しています。」
このように、目的、現象、エビデンス、担当、進捗・見通しを分かりやすく具体的にするだけで、読み手の行動が大きく変わります。
昭和的アナログ文化から一歩先へ:自動化時代の新・文書作成術
現場では今なおFAXや手書き報告書など、アナログな情報伝達手段が根強く残っています。
しかし、DXや自動化が進むいまこそ、
「ひと目で分かる」
「システムで再利用しやすい」
「誰が読んでも誤解がない」
という文書力が、業務効率化とリスク低減のカギとなっています。
AIやRPA、自動翻訳ツールの活用で、「テンプレート+自動生成+チェック体制」といった新しい標準も加速しています。
しかし、その根底にはやはり、「書き手が相手にどう伝えるか」を意識した、地に足のついた文書作成スキルが不可欠です。
まとめ:伝わる文書は現場を強くする――今日から始める習慣化
文書は「共通言語」であり、現場・調達・品質・経営すべてを守る大切なツールです。
本記事でご紹介した「六つのルール」と「十七の書き方」は、すぐにどんな現場にも応用できます。
毎日の業務の中で「伝える力」を磨き、自部署や取引先との信頼関係・業務効率UPに役立ててください。
現場で培った知識・実践例を活かし、誰もが分かるシンプル&具体的な文書作成を目指しましょう。
この積み重ねが、製造業の未来を切り開く第一歩になります。
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