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中小企業が初めて挑戦する自社製品づくりで避けるべき“コスト過多”の罠

目次
はじめに―「自社製品づくり」の魅力とリスク
ものづくり中小企業の多くがOEM受託から抜け出し、自社ブランドや独自製品の開発に挑戦する機会が増えています。
受託生産や下請け一辺倒のビジネスモデルは、単価の低下や景気に振り回されやすいリスクを抱えています。
それに対し、「自社製品」は利益率の向上や事業の自立化、新たな市場開拓を狙ううえで有効な突破口となり得ます。
しかし、私が20年以上現場で見てきた経験から言えるのは、「最初の一歩」で“コスト過多”に陥る企業が非常に多いということです。
新しい挑戦のはずが、「採算割れ」「資金繰り悪化」という地雷を踏む例は昔も今も変わらず後を絶ちません。
なぜ“コスト過多”の罠にハマってしまうのか?
どのようにすれば現実的かつ堅実に自社製品開発を進められるのか?
本記事では、昭和時代から続く日本のものづくり現場の「クセ」や、中小ものづくり企業が陥りやすい具体的な罠をヒントに、バイヤー目線・現場目線の両方から実践的な対策を深掘りしていきます。
コスト過多の罠1:大企業流の「完全主義」にとらわれる危険性
大手の手法は中小に通用するか?
これまで部品や半製品の下請けとして、大手メーカーの厳しい品質要求、ドキュメント管理、厳密なコスト管理を体験してきた企業ほど、「モノは完璧でなければならない」「一発で完成度を高めなければ顧客に売れない」という“大企業流”の思い込みに縛られがちです。
特に初めての自社開発案件では、「金型に数百万」「専用治具に百万円単位」「量産ラインをいきなり整備」など、最初から量産ベース・完成形ありきで計画し、投資過多になる傾向が現場でよく見られます。
最小限で市場検証する文化を持つ
世界の先進スタートアップや海外メーカーでは「MVP(Minimum Viable Product)」――最小限の機能で市場での反応を確かめる手法が常識です。
日本でも“試作段階でアナログで確認→受注が入ってから設備投資”的な段階設計が、実は昔から下請け現場では日常的に行われていました。
最低限の投資・手間でまずは小ロット・小規模から始め、「売れ筋・採算を現場で確認しつつ徐々に拡大」する。
それこそが中小の持つ強みであり、機動力です。
アナログで始める勇気。最初から“量産・大量投資・完全自動化”発想を排除し、「できることから、できるだけ安く、作れるものを自分たちで作る」を徹底することが、コスト過多を避ける大前提です。
コスト過多の罠2:過剰な外注依存と「内製化」幻想
外部委託に隠れる見えないコスト
製品設計やプロトタイプ製作、部品調達・組立・検査まで一貫して外注に頼るやり方は、最初は確かに楽に見えます。
しかし、外注比率が高いほど「意思疎通」「納期柔軟性」「トラブル時の対応」「仕様変更時のコスト爆増」等、予期せぬコストやリスクが膨れ上がります。
案外見落とされがちなのが、外注への指示出しや資料作成、進捗管理といった“非生産的コスト”です。
これらが人員・工数ベースで相当な負担・経費増になっていることを、現場にいると痛感させられます。
内製化の本当の意味を見直す
一方で、「すべて自社でやろう」とすると投資額が天井知らずになり、“内製化=コストダウン”の幻想に陥ります。
昔から中小では「得意領域のみ内製し、不得意分野は外部とパートナー化する“選択と集中”」の工夫が生き抜く知恵でした。
設計の初期段階は外部の設計会社や町工場、試作工場とうまく連携し、量産段階で自社ノウハウを注入する――。
技術伝承・工数見積もりの標準化など、“付き合う外部を絞る仕組み”を早めに作っておきましょう。
コスト過多の罠3:市場ニーズ無視の独りよがり製品開発
「作りたいモノ」と「売れるモノ」は別物
技術者や経営者の「夢」や「長年の構想」で自社製品づくりを始めるパターンは多く見られます。
ですが、そのアイデアが“市場性”や“具体的な顧客ニーズ”とズレている場合、開発コストが膨らむだけでなく、在庫や不良在庫・ブランド毀損といった二重三重の損失につながります。
“営業型開発”との両輪が必要
なにより重要なのは、「まず売れるかどうか、問い合わせ・受注を取ってから動く」営業的発想です。
展示会・ECサイトでの先行受注、クラウドファウンディング、既存顧客への事前ヒアリングなど、注文書や予約が取れてから生産側に仕事を出す。
この“受注型開発”なら、必要最小限の投資で失敗リスクを極小化できます。
現場スタッフも営業担当者も「お客様の声」を赤裸々によく聴くこと――。
仮説検証型の開発体制こそ、昭和的な供給主導型からの脱却ポイントです。
コスト過多の罠4:生産ロット過多による在庫地獄
「量産すれば安くなる」の落とし穴
大手メーカーで常識だった「大きなロットで作れば1個あたりコストが下がる」は、単品少量多品種や短納期要求が強い現代の市場では必ずしも正解とは言えません。
初期段階で多量生産に踏み切ると、
・完成後に不良・仕様変更で在庫・廃棄コスト激増
・売れなければ資金繰り圧迫
・検査・保管・物流コストが膨張
など、現場だけで解決できない重いリスク要素になります。
小回り生産と「生産管理型在庫」のバランス
まずは受注生産(受注分だけ即納できる在庫最小化)、リードタイム短縮、最小ロットでの試験製造を重視しましょう。
また、社内のBOMや在庫管理ノウハウを最大限活用し、「絶対に余剰在庫を生まない」ことを人と仕組みで徹底する。
たとえば部品だけ一括購入せず、確実に使う分だけ定期手配するなど、工場長や現場リーダーの現実的な視点がカギになります。
コスト過多の罠5:品質管理とドキュメントの“やりすぎ”
品質保証のための「過剰な書類化」
ISOやIATFなど品質マネジメント認証の取得を目指すのは、大手取引や市場参入には有効です。
ですが、「ISO認証書類・手順書作りばかり」にリソースを割き過ぎると、本来のものづくりの価値が損なわれます。
また、「検査を二重三重に」「全数検査にこだわる」など、大手流を中小規模で無理に再現しようとすると、作業効率やコスト感覚が歪みやすくなります。
本当に価値のある品質管理へ
中小企業の現場では「どこにどうリスクがあって、最低限どこならチェックする必要があるか」の“的を絞った管理”が重要です。
たとえば重要保安部品や人体・環境影響の大きい部位以外は抜取り検査に留め、手順書も「現場で使えるシンプルなもの」に集約しましょう。
現場の観察眼・良品作りの“肌感覚”と、最小限のドキュメント作成との両立が、現実的な品質管理体制につながります。
現場目線で実践するコストコントロール術
調達・購買段階での「価格だけ見ない」発想
安い部品・資材・外注先ばかり選ぶと、品質低下やトラブル発生、納期遅延といった隠れコスト(トータルコスト)が後から増大します。
調達部門・購買担当は、金額だけでなく「信頼度」「技術者同士の相性」「情報共有のしやすさ」といった見えない資産にも目を向けることが肝要です。
生産管理の「見える化」とムダ排除
工程ごとの標準作業時間や原価要素の見える化を徹底し、「どこにどんなムダが潜んでいるか」を常に把握できる状態を維持しましょう。
昔ながらのエクセル台帳でも、各人が日々記録を残し帰納的に分析するだけで意外なボトルネックが見つかります。
現場と経営層のノウハウ融合
経営陣は財務や市場を、現場は実際のモノや現象を見ています。
「現場感」と「経営感覚」が一体化することで、設備投資・人員配置・外注判断といった重要な意思決定もブレがなくなります。
まとめ―中小企業ならではの地に足ついた製品開発を
自社製品を作るには膨大なエネルギー・コスト・労力が必要です。
ですが、昭和的な大手流・形式主義から抜けだし、小ロット・小投資・実証型という“中小企業らしさ”を活かしていけば、コスト過多の罠は十分に回避できます。
「できるだけ小さく始めて、大きく育てる」。
「計画100点より、実績で80点を積み上げる」。
現場・営業・経営が一体となって未来に挑み、製造業全体の発展に貢献できる仲間が増えることを心から願っています。
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