投稿日:2025年10月22日

スナック菓子のサクサク感を保つ水分活性と包装気密度制御

はじめに:スナック菓子の「サクサク感」はなぜ重要か

スナック菓子の魅力のひとつに、「サクサク感」があります。
誰もが一度は経験したことがあるでしょう、袋を開けた瞬間のあの軽い歯ごたえこそ、購入した価値を実感する瞬間です。
一方で、しけったスナック菓子は驚くほど味気なく、クレームの対象にもなりかねません。
実は、この「サクサク感」を保つためには、工場の生産プロセスから包装工程、出荷管理に至るまで、さまざまな技術や知識が関わっています。
本記事では、水分活性値と包装気密度という二つのポイントにフォーカスし、昭和的なアナログ現場でも実践できる工夫や、今後の業界動向までを現場目線で解説します。

水分活性とは何か〜スナック菓子の敵は「総水分」ではない

スナック菓子づくりでは「水分量」が強調されやすいですが、実際に食感を大きく左右するのは「水分活性」です。
水分活性(aW)は、食品中の水のうち、微生物や化学反応に利用されやすい自由水(生物化学的に活性な水)の割合を示します。
単なる含有水分だけを見ていては、カビや腐敗、しけりといった品質低下の根本原因を見過ごしてしまいます。

例えば、同じ5%の水分含有量でも、水分活性が0.5と0.8では腐敗リスクや食感の変化が大きく異なります。
スナック菓子の場合、aW0.3未満を維持することが一般的です。
この数値を超えると、湿気やすくなり、カリカリ感が失われてしまいます。
製造業の現場で重視すべきなのは、「総水分量」ではなく「水分活性値の設定と管理」なのです。

水分活性管理のための工程上の注意点

・原材料調達時にロットごとの水分値を確認する(特に小麦粉、コーンスターチなど基幹原材料)
・油で揚げた後の冷却工程で、急激な湿気混入を避けるため除湿空間を設置する
・製造環境の湿度管理によって、最終製品の標準水分活性値を安定化させる
・サンプル測定でロットごとのバラツキを徹底的に記録、フィードバックする

スナック菓子工場では特に、季節ごとの気温・湿度の変動対策が欠かせません。
昭和的な現場では「感覚」で水分管理をしていたケースも多いですが、今後は必ず測定とデータ蓄積が重要になります。

包装気密度がサクサク感を守る理由

工場でサクサクに仕上げたスナックも、物流工程を経て販売現場に届くまでの間に「包装」次第ですべてが台無しになるリスクがあります。
包装袋の「気密性」が低いと、外部の湿気を徐々に吸い込み、あっという間に食感が失われてしまいます。

包装材料の進化と現場が抱える課題

最近では、高バリア性フィルム(アルミ蒸着や多層フィルム)が主流となっています。
しかし、フィルム自体の素材スペック値だけでは品質保証になりません。
実際の製造ラインでは、以下のような落とし穴があります。

・製袋工程でのシール不良(ヒートシール不完全、異物混入によるピンホール発生)
・包装工程での圧力変動による袋破損
・冷却不十分な製品投入による袋内結露
・現場作業員のスキルバラつきによる作業品質の差

これらは、設備を最新鋭化するだけでは防げません。
むしろ、現場の“小さな気づき”と検査体制の強化によって未然に防げる品質トラブルです。

包装機械のメンテナンスと「目視チェック」

長年、工場現場で実感してきたことですが、どんなに設備が自動化されても、ヒューマンエラーや設備経年劣化は避けられません。
包装機械の定期点検記録を徹底すること、またパートスタッフも巻き込んだ「目視によるダブルチェック体制」を常に維持し続けることが重要です。

特に「袋の印刷ズレ」や「異物のシール挟み」など、ちょっとした不具合からカビ発生やしけりに直結するため、現場全員が自らの役割を理解し小まめな報告を習慣化しましょう。

水分活性と包装気密度の測定・コントロール方法

では、実際にどのような手法で『水分活性』や『包装気密度』を管理していけばよいのか、現場のリアルな取り組み事例に基づき解説します。

1. 水分活性値の測定

・専用の水分活性測定器(aWメーター)を導入しロットごとにサンプル測定
・大ロットを生産した場合は、代表サンプル以外にも抜き取り検査を複数実施
・水分活性値が工場規定の範囲から逸脱した場合は、すぐ工程にフィードバック
・データは電子化して「分析→工程改善→教育」のサイクルへ

2. 包装気密性検査の実践

・ヒートシール部分について、引っ張り強度を物理的な荷重試験で定期測定
・袋のバリア性(透湿度、酸素透過度)を抜き取りで測定
・水没試験やガスリークテスト等を活用し、「潜在的欠陥」の早期発見
・強度や耐久性表示にこだわるのではなく、実際の「保存性データ」重視

生産ロットが多品種少量化・短納期化する中で、検査体制の“柔軟な仕組み化”も欠かせません。

アナログ現場で強みを発揮する「現場主義の改善活動」

昭和から続くアナログ重視の現場には、デジタル化が進んでも色褪せない価値があります。
例えば、ベテラン従業員による「袋詰め直前の手触りチェック」や、「毎日倉庫を歩いて湿度ムラを五感で察知」するなど、経験に裏打ちされた行動はデータに勝る“警告信号”となることがあります。

また、包装ラインの定時清掃やちょっとした自主点検をルーチン化することは、未然にヒヤリハットをなくすうえで非常に有効です。
最先端のIoTやAIツールだけに頼るのではなく、人間の感覚と責任感を組み合わせることで、現場力の底上げが可能になります。

サプライヤー・バイヤーが知るべき「相手の立場と期待値」

スナック菓子のサクサク感保持には、サプライヤー(原材料・資材供給側)とバイヤー(製品購買側)の密接な連携が必須です。
それぞれの立場から見た「期待値」を理解することで、より強いパートナーシップを築けます。

サプライヤーが心掛けたいポイント

・納入原材料の水分管理体制を自社でも徹底し、「バッチごと」の情報開示
・資材に新たな気密性素材を提案する際は、「実測値」「経過データ」とともに実例を添える
・現場で起きるトラブル事例やノウハウを積極的に情報交換

バイヤーが重視すべき姿勢

・コスト訴求だけでなく「品質」と「現場工程の安定性」を明示的に要求
・発注時、保存性や水分活性目標などの仕様伝達を具体的かつ双方向で
・現場見学や改善提案の場を“サプライヤーも巻き込んで”積極的に設計

バイヤーはサプライヤーに負担を押し付けるだけでなく、現場実情を理解し歩み寄る姿勢が新しい価値を生みます。
サプライヤーも単なる御用聞きで終わらず、現場改善や工程安定化の知見提供を惜しんではなりません。

今後の産業動向と現場の未来

スナック菓子業界全体として、消費者志向は「食感」や「鮮度」重視にシフトしています。
サクサク感を保つための水分活性と包装気密度の管理技術は今後、以下のような方向性で進化・高度化していくと考えられます。

・IoT+センシング技術の現場実装(温湿度自動記録、バッチ毎aW自動分析)
・サステナブル資材による高バリア包装の開発・普及
・AIによるトラブル予兆検知、工程異常アラートシステムへの進化
・多様な勤務形態・人材を活かした「人×デジタル」協働モデル構築

一方、アナログ技術・現場力の重要性と、“現場を知る”管理職・技術者の必要性は変わらないでしょう。
工場長やバイヤー、現場の若手技術者が一丸となり、日々の「当たり前」を追求していくことが真の競争力に直結します。

まとめ:知識と連携でサクサク感を守る“最強現場”を目指して

スナック菓子のサクサク感は、単なる口当たりの良さではなく、工程と包装とサプライチェーン全体をつらぬく「現場力」の証しです。
水分活性の管理や包装気密度のコントロールに、今こそ現場目線の工夫と最先端技術活用の“合わせ技”が求められています。

昭和的なアナログ現場の知恵を大切にしつつ、データ化・省人化・高効率化も柔軟に取り入れること。
サプライヤーとバイヤー、それぞれの「立ち位置」「悩み」「期待」を本音で共有できる関係づくり。

こうした新しい現場コミュニケーションこそが、「サクサク感を途切れさせない日本のものづくり」を支える基盤となるはずです。

今こそ、私たち自身が現場で培ってきた知恵と経験、試行錯誤の積み重ねを胸に、スナック菓子のさらなる品質向上と産業の発展へとチャレンジしていきましょう。

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