投稿日:2025年8月3日

シャンプーバーOEMがゼロウェイスト市場を拡大する固形化技術

はじめに——シャンプーバーOEMとゼロウェイストの親和性

近年、製造業界が直面している大きな課題のひとつがサステナビリティへの対応です。
特にパーソナルケア製品では、環境負荷の少ない「ゼロウェイスト」を目指す商品開発が急速に進行しています。
その中で、従来の液体シャンプーに代わって注目を集めているのが「シャンプーバー」です。

OEMメーカーがこの新市場に進出し、固形化技術を武器にゼロウェイスト市場拡大の立役者となるケースは増え続けています。
この記事では、20年以上製造現場を見てきた視点から、OEMという立ち位置がゼロウェイスト潮流をどう牽引するのか、またシャンプーバーという商品が持つ可能性、製造・調達・バイヤー目線での実践的課題や業界動向について深く掘り下げてみたいと思います。

シャンプーバー市場急拡大の背景

ゼロウェイストという消費者ニーズの高まり

日本においても廃プラスチック問題や海洋汚染が社会課題化し、個人レベルでの環境配慮行動が浸透しています。
シャンプーのような日用品は使用量も多く、プラスチック包装のゴミ削減が急務です。

そこで、プラスチックボトルを使用せず、使い切り型に近い「固形化」という選択肢が生まれ、「シャンプーバー」へと需要が流入。
再利用可能な紙包装や包装レスで流通する例も相次いでいます。
欧州や豪州ではすでに先行しており、日本でも大手ドラッグストア・通販サイトを舞台にシェアを伸ばしています。

OEM供給によるブランド競争の激化

今や大小さまざまな化粧品ブランドが、シャンプーバー分野に相次いで参入中です。
しかし自社に固形化技術や専門設備、人材が揃う企業は多くありません。
このスピード感を支えているのが「OEM生産」の存在です。
OEMメーカー各社は受託生産に加えて、商品設計から原料提案、包装資材調達までワンストップでサポートし、ブランド側は自社で研究開発リソースを大きく割かず、短期間で新しい市場に参入できます。

固形化技術とは? シャンプーバー生産の裏側

固形化技術の基礎と応用

シャンプーを固形化するには、洗浄力・泡立ち・溶解速度と保持性、さらには香りや質感など液体シャンプーと同様の満足感が求められます。
そのため「界面活性剤のブレンド」、「オイル分や保湿剤の配合」、「加圧・冷却・真空成型」など、製造に多様なノウハウが必要となります。

従来は石鹸工場の応用技術が多かったのですが、最近は最新の乳化技術や粉体混合、連続押出・スティック化など、各OEMで独自工程の開発競争が繰り広げられています。
この固形化技術自体がOEMメーカーを差別化する重要な競争軸なのです。

製造現場での苦労とイノベーション

私自身が工場で体感してきたのは「固形化」という単純な言葉に種々のハードルとイノベーションが詰まっているということです。
たとえば均質な固形物を作るには原料投入の精度管理、成型中の温度・湿度制御、表面仕上げ、歩留まり向上——いずれも高度な生産管理が必要です。

アナログな調整作業が主体だった昭和の石鹸生産現場からは様変わりし、多くの工場で生産設備のIoT化やリアルタイム異常検知、ロットトレーサビリティを導入しているのも特徴的です。
固形バーは完成体が目視しやすく、異物混入や重量差のAI判別を導入しやすいのも導入が進む要因です。

調達購買・バイヤー視点の課題と工夫

原材料調達の多様化とサプライチェーン構築

シャンプーバー生産に必要な原料は、従来の液体品と成分も形状も異なります。
粉体原料や、従来使われてこなかった植物性バター・ワックス、さらには新たな香料・色素が必要です。
加えて「オーガニック」「RSPO認証パーム油」「動物実験・パラベンフリー」など、サステナ基準を満たす原料調達が要求されます。

バイヤーにとっての悩みどころは、これら新規原材料のサプライヤー開拓、ロットごとに品質確保、価格変動リスクへの対応です。
調達契約の多様化、パートナー企業への現場視察・監査、原材料時の事前検査強化といった運用が現場のバイヤーには欠かせません。

包装材の最適化とトレーサビリティ

ゼロウェイスト市場で評価されるのは、環境配慮型の包装資材装着と最小限化です。
「未包装で販売」「耐水紙」「生分解性フィルム」「バルク納品」など、さまざまな包装形態を企画段階で詰め、本当に無駄を削ぎ落とした提案がブランド側から求められます。

包装材サプライヤーの選定においても、環境認証(FSC認証紙やバイオマスフィルム)や分解性評価、材料トレーサビリティ確認など、バイヤースキルの高度化が問われています。
この分野で一歩リードできれば、OEMメーカーの戦略的優位にもつながります。

サプライヤーとしてOEMバイヤーの価値観を読み解く

OEMバイヤーは表に見えない部分で、受託先ブランドと消費者双方の声を常に意識しています。

「なぜ固形バー化なのか?」「どうして今この配合なのか?」それぞれの要求の裏に消費者のライフスタイルやSDGsへの期待、競合他社のアクション、規制動向があります。

単に品質・コスト・納期を守るだけでなく、提案型の原材料調達(例えば不要物からの有効利用、地域資源の活用、賞味期限短縮によるロス削減)など、付加価値ある調達姿勢が今後さらに求められます。
また、シャンプーバーのOEMに取り組むことで、サプライヤーも自社開発力や品質保証体制に磨きをかけ、多様な業界・ブランドとネットワーキングできるという側面も見逃せません。

現場目線で読み解く業界トレンド

昭和からの脱却——変化に挑む現場力

筆者が現場で実感しているのは、歴史あるアナログ産業もこの「固形化イノベーション」を機に意識転換が加速していることです。
「今まで通りの液体シャンプー」「従来通りの包装手法」から抜け出し、「現代のサステナ商品は現場の創意工夫から生まれる」を体感しています。

その象徴が、設備投資・ラインレイアウト変更・IoT活用・人材再教育に積極的な企業と、そうでない企業の成長格差です。
また、現場発の問題点・改善案が全社的に活かされる組織風土を持つことで、新分野参入時に最大限のスピードと柔軟性を発揮できています。

OEM側の視点——競争力の要素とは何か?

今後のOEMメーカーが生き残るには、コストダウン能力のみならず「開発・製造・調達・品質マネジメント」の統合的な競争力が不可欠です。
ゼロウェイスト分野では「製品デザインから原料・包装資材調達、製造管理・輸送・最終ユーザーの体験」まで包括的に意識し、PDCAを最短サイクルで回す実力が試されます。

また固形化OEMは一度ノウハウが構築されると、他社への横展開(スキンケアバー、洗顔バー等)や地域企業との共創、新素材の共同開発も容易になります。
つまり「OEMとしての地平線を切り拓く人材・組織」が業界全体を牽引するエンジンとなる時代が来ているのです。

まとめ——シャンプーバーOEMと持続可能な産業の未来

シャンプーバーへのOEMソリューションは、ゼロウェイスト社会の実現と現場力を両立させる次世代のものづくりとして急成長しています。

原材料・包装資材・工程・販売流通まで、バイヤー・サプライヤー双方が徹底して本質を問い直すことで、かつての製造業とは比較にならない価値の創造が進んでいます。

多くの既存ノウハウと全く新しい技術イノベーションが両立するこの市場に、ぜひ現場目線を武器に新たな挑戦をしてほしいと願っています。

シャンプーバーOEMの固形化技術は、サステナ社会の新たなスタンダードとして、これからの10年、業界動向をリードしていくと確信しています。

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