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サプライヤ評価の配点を価格インパクト重視に調整するSRM

目次
はじめに
製造業の現場において、サプライヤマネジメントは経営の根幹を担う重要領域です。
サプライヤとのWin-Winな関係構築や、リスクマネジメント強化が叫ばれる昨今、従来の「価格」「納期」「品質」一辺倒の取引評価だけでは、もはやグローバル競争に太刀打ちできません。
特に昭和から続くアナログな取引慣習や、「安かろう悪かろう」で調達コストだけを重視した古い配点配分は、現代ではむしろ調達リスク増大の温床となっています。
この記事では、「SRM(サプライヤ・リレーションシップ・マネジメント)」の観点から、調達評価配点の再設計、なかでも価格インパクト重視型の評価へ移行するための実践的なアプローチを現場目線でご紹介します。
バイヤーを目指す方、現役のバイヤー、サプライヤーとしてバイヤーの内実を知りたい方にも役立つ内容となっています。
なぜ今「価格インパクト重視」なのか
従来評価の限界と世界的な潮流
かつての調達評価(サプライヤ評価)は、「価格」「品質」「納期」をほぼ同等の比重で評価してきました。
日本の大手製造業でも、これら3大要素が定量的(配点化)に並ぶことが多く、配点割合の変更には現場でも抵抗感があるのが実情です。
しかし、近年の国際情勢やコストプッシュ型インフレ、原材料価格の高騰、グローバルサプライチェーンの複雑化により、「価格インパクト」が経営に与える影響はかつて無いほど増大しています。
加えて、DX推進やカーボンニュートラル志向により、取引コストの最適化・統合的なSRMの強化が世界標準となりつつあります。
価格インパクト重視の意義
「価格インパクト重視」とは、単純な価格の安さではなく、特定取引が全体コスト・収益にどれほど影響するかという“インパクト”を意味します。
たとえば、購入金額の大きい部材、コモディティ化した材料類、年々単価が変動しやすい資材などは「調達価格のわずかな変動」が会社の利益に直接影響します。
逆に、少額で購買頻度も低い材料や代替が効きやすい部品に無理なコストダウン交渉をしても、総コストインパクトは限定的です。
限られたバイヤーリソースをどこに集中させるべきか、SRM視点での優先順位付けが不可欠となります。
サプライヤ評価配点を再設計する際のポイント
現場の現実:昭和的評価体制から抜け出せない理由
多くの現場では、いまだに「去年の評価配点をそのまま使用」「担当バイヤーの裁量ベース」で運用されており、実態に即していません。
これには以下のような理由があります。
– サプライヤとの人間関係やしがらみ
– 評価変更による社内外の摩擦や説明コスト
– 過去の実績に引きずられる惰性
– 指標の定量化が面倒、もしくは困難
しかし現場の皮膚感覚で見ても、これからはコストインパクトの大きい領域にこそリソース集中する必要があります。
これができなければ、部材高騰やグローバル競争に打ち勝てません。
新しい評価配点設計の実践ステップ
(1)調達額ランキング(ABC分析)で特定する
まず全ての購買品目を「調達金額順」に並べ、全体に占める割合を確認します。
上位20%の品目(Aランク)が調達コスト全体の8割以上を占めることも普通です。
この“インパクトゾーン”こそ、価格評価に最大の配点を置くべき領域です。
(2)配点比率の再配分
従来型:価格30%、納期30%、品質30%、その他10%
新型(価格インパクト重視型):価格50~60%(Aランク)、納期20%、品質20%、その他10%
B、Cランクは従来型バランスでも構いません。Aランクではあえて「価格」のウェイトを引き上げ、そこだけバイヤーの力量を集中すべきです。
(3)取引金額だけでなく“経営インパクト”で再評価
単価補給品であっても一時調達停止や大幅高騰が「生産ライン全停」のリスク要因となる場合は、納期確保や供給安定性の配点を上げます。
現場の声と現実リスクを整理した上で、価格インパクトの定義を行いましょう。
(4)配点変更のサプライヤ通知・交渉
配点比率の変更はサプライヤとの信頼関係にも影響します。
「Aランク品はコスト競争力をより重視するため、今後価格項目の比率を高める」旨を、調達方針として説明しましょう。
事前通知や説明会を実施し、業界内の健全な競争を促すことが重要です。
バイヤー・サプライヤーの新たな関係性構築
SRM推進のためのバイヤーの意識転換
従来の“価格交渉屋”から、SRM時代のバイヤーには「ビジネスパートナー」としての関係構築力、“価格・付加価値・サプライチェーンの全体最適化”感覚が求められます。
調達評価の配点を現実に合わせて変更することは、バイヤー自らが経営を意識した戦略プレイヤーへ進化する第一歩です。
サプライヤーは何を考え、どう動くべきか
サプライヤー側にとって、「価格インパクト重視型評価」は単に値下げ圧力が強くなる意味だけではありません。
むしろ、Aランク取引先に認定されることで経営インパクトの大きなパートナーであることが明確化されます。
これによって、将来的な長期契約や投資回収計画、技術開発協力など、“パートナーとしての成長機会”が増えるのです。
但し、どんな合理的な配点設計も一方的な値下げ要求にならぬよう「なぜこの指標が重視されるのか?」という説明責任を持つことが重要です。
現場目線で実現する配点調整のコツ
実践Tips1:部門横断の合意形成を先に進める
バイヤーは営業・設計・生産管理・経営層とも配点比率変更の意義を共有しましょう。
サプライヤの反発を抑えるためにも、中長期経営戦略や原価低減目標、リスクマネジメントの観点からも配点理由を整理します。
実践Tips2:サプライヤと継続的な対話を
調達配点が「納期60%」→「価格50%」へ変わる場合、数値が変わった理由と背景、期待する取り組み(コスト競争力の強化)を具体的に伝えましょう。
セミナーや協力会議で調達戦略を共有すると円滑です。
実践Tips3:データ分析×現場感覚で柔軟に微調整
単純なABC分析や過去データだけに頼らず、実際の市場変動・サプライヤ動向・ニアショア化などの変化を敏感にキャッチします。
“現場から見て本当に重要か?”という判断軸を持つことが昭和的なルールの打破となります。
まとめ:今こそサプライヤ評価配点の進化を
これからの製造業サプライチェーンは、「コストダウンの源泉は厳しい値下げ交渉」ではなく「正しいインパクト評価とリソース集中」によって生み出されます。
バイヤーが現場感覚と経営感覚を併せ持ってSRMを推進できれば、自社の競争力もサプライヤとの関係性も飛躍的に向上します。
昭和的な評価配点から脱却し、価格インパクト重視のSRM型配点に刷新することで、あなたの現場が一歩先を行く“現場主導・経営主導”のサプライヤマネジメントを実現できるはずです。
今ここから、製造業の新しい地平線を共に切り開いていきましょう。
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