古段ボールを活用したリサイクル原料の安定供給と調達戦略

はじめに：製造業における古段ボールリサイクルの重要性

現代の製造業において、環境配慮やサステナビリティの取り組みは避けて通れないテーマになりました。

特に原材料価格の高騰や、資源枯渇リスクが現実味を帯びている中で、古段ボールをはじめとしたリサイクル原料の安定供給は、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。

バイヤーや購買担当者、さらにはサプライヤーにとっても古段ボールの調達戦略をいかに構築し、現場で適切に運用していくかが問われています。

本記事では、昭和以来のアナログ業界ならではの課題や風土も踏まえながら、現場目線で実践的かつ深掘りした内容を共有します。

古段ボールリサイクルの現状と業界動向

紙リサイクル率と市場背景

日本は世界トップクラスの紙リサイクル大国です。

2022年の段ボール古紙回収率は約95%を達成しており、製紙工場では新規原料の約6割以上がリサイクル由来となっています。

中国など海外への古紙輸出規制強化、環境規制の影響、プラスチック削減の流れ、それに伴う段ボール需要の高まりが、近年原料ひっ迫や価格高騰を招いているのが現状です。

サプライチェーンと調達構造の特徴

古段ボールは、コンビニ・スーパー等の流通業界、製造業現場等から発生し、回収事業者（古紙問屋）を経て製紙メーカーに集約されます。

安定供給のためには、「誰から何を・どの品質で・どの価格で・どんな条件で」仕入れるか、という調達戦略が欠かせません。

また、古紙市場は昭和の時代から“顔の見える関係性”を重視する文化が残り、デジタル化の遅れも顕著です。

ここに大きな課題と機会が存在します。

古段ボール原料調達の現場課題

1. 品質のばらつきとその管理

古段ボール原料には、水濡れ、ラミネートや異物混入、色・厚みのばらつきがつきものです。

品質基準の明文化、受入検査の徹底、回収ルートごとの選別基準の統一が安定した原料供給の鍵となります。

しかし現実には、昭和時代からの「職人の勘と経験」に頼る風土も色濃く残り、トレーサビリティの確保や、IT活用による標準化には遅れが生じています。

2. 調達コストと価格変動リスク

古段ボールは新リサイクル法施行以来、需給バランスが変動しやすくなりました。

原油高や物流費高騰、国際市場の需給変化がストレートに調達価格へ波及します。

単価交渉は実需トレンドだけでなく、業者間の人間関係や“長年の貸し借り”に影響されるため、サプライヤーとしては柔軟な価格交渉力も必要です。

3. 安定供給体制とBCP（事業継続計画）

昨今の自然災害やパンデミックを経験し、「複数ベンダー確保」「在庫持ちの見直し」「輸送ルートや回収ネットワークの多様化」が一層求められるようになっています。

単一ベンダー頼りや、ローカルなリレーション“だけ”の調達から脱却し、多層的ネットワークを構築できるプレイヤーだけが、安定供給を実現できます。

実践的・現場目線の調達戦略構築法

1. ベンダーマネジメントの進化

昭和流の「義理人情」を大切にしながら、ベンダー評価基準を数値化・可視化し、データドリブンで関係性をアップデートしていく試みが重要です。

取引実績・納品品質・納期遵守率・リスク対応力を点検表に落とし込み、サプライヤー同士を定期的にスコアリングすることで、感覚頼みの選定を脱却できます。

2. “見える化”とDXの活用

工場や倉庫、回収拠点で発生する古段ボールの回収実績、品質情報、異物混入の傾向などを、IoTデバイスやクラウドシステムでデータとして蓄積し始める動きが広がっています。

アナログだった入出荷伝票を電子化し、異常発生時にリアルタイムでバイヤーとサプライヤーが共同で対策を打てる仕組みづくりが効率化と安定供給のカギとなります。

3. ESG時代に沿ったサステナブルな調達方針

「再生紙比率」「CO2排出量の可視化」「地域社会への貢献」など、古段ボール原料のサステナビリティ情報を明確化・公開することで、取引先からの評価も高まります。

バイヤーは調達先のESG取り組みも選定基準に加え始めており、従来“安さ一辺倒”だった選定姿勢が変わりつつあります。

サプライヤー側も、「自社の環境価値」をデータで証明し、新たな競争優位性に繋げるべきです。

バイヤー・サプライヤー別：現場で明日から実践できるアクション

バイヤーが取るべき行動

– 価格や供給量だけでなく、品質データや納品履歴にも注目し、長期的な信頼構築・パートナーシップを重視する
– サプライヤーに対してESGやSDGs基準を積極的に提示し、一緒に改善PDCAをまわす
– 複数の取引先と定期的にカンファレンスを行い、品質情報や市場変動の共有・ベストプラクティス水平展開を図る