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OEMトレーナーのリピート生産時に品質差を防ぐ仕様統一ルール

目次
はじめに:製造業の現場で起こるOEMトレーナー品質問題の本質
OEMトレーナーなど消費財のOEM生産において、意外と多いのが「リピート生産(再注文時)で品質差が生まれてしまう」問題です。
バイヤー(発注者側)は、初回発注時の品質や仕様を当然「次回も同じものが上がる」と考えています。
しかし、実際には
「色味が微妙に違う」
「縫製ピッチが異なる」
「風合いが前回と違い着心地が変化した」
といったクレームが起こりがちです。
この問題は、国内外を問わずアパレルをはじめとしたOEM生産の現場では多発しています。
なぜリピート生産で安定した品質を出し続けることが難しいのでしょうか。
また、昭和から続くアナログ現場でも実施しやすい仕様統一ルールとは何でしょうか。
ここでは、現場のリアルな視点と業界全体の潮流を踏まえ、OEMトレーナーのリピート生産時に品質差を生まないための仕様統一ルールと、バイヤー・サプライヤー双方が押さえるべきポイントを解説します。
リピート生産時に起こる品質差のメカニズム
担当者・工場・資材ロットの変化がトリガーになる
実は、多くの品質差は「同じものを単純に再生産しているだけ」のつもりでも、以下のような現場の変化で生じます。
・担当者が変わり、仕様解釈の微妙な違いがでる
・工場ライン・協力工場の変更による作り方の差
・同じ品番でも素材メーカーの生産ロット違い(糸・生地・リブなど)
・染めやプリント、縫製の現場加工条件のばらつき
「同じ仕様書」と「現物」が手元にあっても、現場サイドの判断や資材供給のずれによって、微妙な品質差が生まれるのはこのためです。
昭和・平成初期のアナログ現場では、現場ベテランの「勘と経験」でかなりの部分が埋め合わされてきました。
しかし、担い手不足や多品種小ロット化、グローバルサプライチェーンの複雑化により、個人技頼みでは品質標準化が追いつかない時代です。
品質・仕様差を生まない「仕様統一ルール」とは
1. 仕様書の「解像度」を徹底的に上げる
バイヤー・サプライヤー双方で最も基本かつ重要なのが、仕様書の情報密度と明確さです。
トレーナーの場合は
・主資材(本体生地)…メーカー、品名、混率、ゲージ、組織名、色番、ロットNoまで管理
・リブや付属パーツ…同上
・寸法…出来上がりだけでなく第一工程時点・洗い後などの測定プロセスを明確化
・縫製仕様…ステッチ幅、ピッチ数、公差、糸種類と番手
・プリント/刺繍…版、インクレシピ、刺繍糸、試し打ちデータの保存
など、抽象的な記載や「従来通り」「一般的な○○」を排し、現物の物差しで語り合う仕様書がカギとなります。
「資材メーカーに直接品番指定」「色番をPANTONEなど国際標準にする」など、サプライチェーン全体で共通言語になる管理を徹底しましょう。
2. サンプル管理をデジタル・物理の両面で残す
現場でありがちなのは「現物サンプルが工場で消失」「色があせて誰も正解が分からない」といったトラブルです。
そこで、初回生産時の「保管サンプル」を物理的に複数ストックしておくのは鉄則です。
加えて、近年は高精度スキャニングや色差計、3Dデータ化などで「型紙・仕上がり画像・色データ」をデジタル化し、クラウド保存しておくのも有効です。
アナログ現場でも「現物サンプル」「写真付き基準書」「色見本帳」など目視で分かる資料を必ず残すことで、再生産時の品質ブレを大幅に抑えられます。
3. バイヤーとサプライヤーの仕様確認・合意フロー
サプライヤー任せ、バイヤー任せで発生する失敗がよく見られます。
仕様書に不明点があれば「Q&A表」など記録形式ですり合わせることで「言った・言わないトラブル」を未然に防げます。
また、リピート発注ごとに「前回実績の確認→今回のロット条件ヒアリング→変更点や課題抽出→主要項目の再合意」といったフローを設けましょう。
実際筆者が工場長時代にルール化したのは、「必ずリピート前に30分の仕様確認オンライン会議」をセットし、仕様書・現物・データを双方で見ながら意思統一するものでした。
これだけでも、リピート生産のヒューマンミスは大きく減少します。
現場あるある「仕様ズレ」5選と対策
1. 生地色・風合いが違う
ロット違い、染色の都度の微妙なブレは必ず発生します。
対策は、「ロットNo単位の管理」「色差計管理(許容ΔE範囲)」「風合い基準サンプル保管」「毎回ラボダイ(試し染め)取り直し」など、現場目線の工程管理が重要です。
2. リブと本体の色が合わない
主生地とリブの資材メーカーが異なる場合、ロットや染色工程をまたぐと色差が生じやすいです。
可能な限り「同一時期にまとめて一括生産」「本体生地メーカーでリブも共通管理」などの管理統一でブレを防ぎましょう。
3. 裁断・縫製寸法が異なる
特に汗じみ吸収テープや裏起毛、縮みが強い素材では、裁断時点と製品寸法で差が出がちです。
「パターン(型紙)のCADデータ保管」「各工程での出来上がり寸チェックリスト作成」「収縮率表の添付」などが現場レベルの有効策です。
4. ネーム・タグ・プリント位置ずれ
初回だけ試行錯誤された結果、次回打ち合わせがないと「見た目が違う」というクレームが…。
設計寸法値+実際の縫い付け後写真+タグ位置マーキング指示(型紙にも印字)など、データと現物でダブルチェックする運用が必須です。
5. 洗い加工後の風合い・寸法ずれ
「納品後に風合いが違う」「縮みが前回と違う」といったケースは、洗濯・乾燥条件、加工業者変更で起こります。
再発注時は、「加工業者と工程条件を固定」「工程ごとのサンプル洗濯試験」「完成品サンプル洗濯のトラブルチェック」もルール化しましょう。
昭和的慣習とDX・デジタル管理の両立がカギ
伝統的なアナログ現場では、現物主義・職人技術に多くを頼っています。
一方でデータ標準化、デジタルアーカイブ、クラウドで仕様一元管理などDX(デジタルトランスフォーメーション)も進みつつあります。
「現物サンプルの保管・現場写真の貼付」「Excel・PDF仕様書の定型化」「オンライン会議・チャット社内外即レス」のように、アナログとデジタルの融合で品質・仕様差を抑えつつ、現場に根差したルール設計が重要です。
ヒント:
ベテランの暗黙知を明文化し、「新人が読んでも同じ判断ができる資料」作成が企業価値の継続的向上につながります。
バイヤー・サプライヤー双方が押さえるべき3つの視点
バイヤー(発注側)視点
・「完成品の見た目」だけでなく中間工程・原材料・標準値まで指定
・リピート時に「なぜその仕様になっているか」経緯を記録・共有
・現場見学や資材サンプルチェックで現場とのギャップ埋めを継続
サプライヤー(受注・生産側)視点
・「仕様書の不明点は必ず質問」「現場が悩む予兆事例は早期報告」
・各工程管理(資材、縫製、加工ごと)で現物基準の合意を徹底
・前回ロット・初回現物のサンプル管理体制を強化し水平展開
業界全体の風潮・現場動向
・大手バイヤーは海外調達やDX推進でより標準化・証跡重視傾向
・一方、中小業者はアナログの強み(現物主義)をどう残すか模索中
・サプライチェーン全体の高度化が、今後の生き残りの分水嶺
まとめ:現場主義と仕様ルールの未来
OEMトレーナーのリピート生産時に品質差を防ぐ仕様統一ルールは、複雑化・多様化するアパレルOEMの現場でどの会社にも必要不可欠です。
仕様書の明確化・サンプル管理の徹底・バイヤー&サプライヤー間の継続的なすり合わせ。
この3つが昭和型アナログ現場でも、令和のDX現場でも、大きな成果をもたらしています。
CO2削減やカーボンニュートラル、生産のQCD高度化など業界の大きなうねりの中でも、「現場で実践できる」「すべての担当者が参照できる」仕様ルールの整備が日本の製造業を支えていくことになるでしょう。
本記事がバイヤー志望の方、サプライヤー側で提案力を上げたい方、そして現場の全ての方にとって、明日の品質安定・ビジネス発展の一助となることを願っています。
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