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使用頻度の高い消耗品を標準化して全社で調達する仕組みづくり

目次
はじめに:消耗品調達の“昭和的ムダ”を問い直す
製造現場に長年身を置いてきた方なら、「またこの手袋、勝手に個別で注文されてる」「同じ潤滑油なのにラインAとラインBで別メーカーを使っている」といった現象に頭を抱えた経験が少なからずあるのではないでしょうか。
現場でよく使う消耗品――手袋やウエス、梱包材、ボルト、オイル、簡易工具類。これらは小さな単価の積み重ねですが、企業全体で見れば驚くほどのコストインパクトとなります。
にもかかわらず、多くの製造業では昔ながらの慣習や“どんぶり勘定”が今も根強く残り、管理体系や調達スキームが各部署・工場任せ――いわば“昭和のアナログ調達”から抜け出せていません。
今日この記事では、そんな製造業における消耗品調達の非効率を打破し、「使用頻度の高い消耗品を標準化して全社で調達する」ための仕組みと、その現場ならではの落とし穴、成功へのリアルなポイントについて深く掘り下げていきます。
なぜ消耗品の標準化・全社調達が重要なのか
コスト削減だけじゃない、標準化の本質的価値
単なる「まとめ買いで安くなる」というコストメリットばかりが強調されがちですが、標準化と全社調達の意義はそれだけではありません。
– 管理負荷の大幅削減(在庫管理、オーダー処理の簡略化)
– 品質・安全基準の統一(不適合品やトラブル削減)
– サプライヤーとの良質な関係構築(安定供給・サービス向上)
– 社員教育・現場運用の明確化(迷わない・困らない現場づくり)
これら現場と管理部門双方に恩恵をもたらします。中長期で全社のPDCAサイクルにも好影響をもたらす重要なカイゼンなのです。
“購買”・“現場”・“サプライヤー”三者の視点で考える
標準化には、購買部門の意志だけでは実現できません。
現場作業者のニーズや不安、サプライヤーの提案力や柔軟性も不可欠です。
「本社主導のトップダウン」だけでは現場の納得感が得られず、せっかくの標準化も形骸化してしまうリスクが潜んでいます。
逆に言えば、三者が同じゴールを目指し協働できれば、大きなシナジー(相乗効果)が生まれるのです。
具体的な標準化・全社調達のステップ
ステップ1:調達消耗品の実態を“見える化”する
まずは現状把握から始めます。
– どんな品目がどの現場で、どのくらい使われているのか
– 個別発注はなぜ発生しているのか(理由・言い分)
– 不良やロスが出ているポイントはどこか
例えば、同じグリスでも部署ごとにメーカー・品番違いのものを使っている場合があります。それぞれの背景理由をヒアリングしましょう(「品質仕様が違う」「前任からの引継ぎでそのまま」「なんとなく」など―驚くほど多様です)。
この実態調査には、製造現場で働いてきたベテラン社員の協力が不可欠です。時に“面倒なムダ話”の中に重要なヒントが潜んでいます。
ステップ2:標準品目の“合理的選定”と“基準づくり”
現場ヒアリングの中で必要とされる機能・性能・安全性を突き詰めて整理します。
「あれもこれもOK」から「本当に必要なスペックは?」に絞り込みます。妥協できないポイントはどこか、現場とのすり合わせが肝要です。
サプライヤーとも意見交換を行い、業界最新の標準品・ロット管理ノウハウ・納入方法も加味しましょう。その上で――
– 標準品カタログ(品番リスト)
– 仕様書・管理基準書
などの形で、わかりやすく“会社のルール”として可視化します。
ステップ3:調達チャネルの集約とロジスティクス最適化
標準品が決まったら、調達チャネル(サプライヤー・商社)を選定します。
– 一括契約による価格・納期条件の最適化
– 統一物流(センター配送・自動倉庫・現場前納置き等)の運用
– 仕掛在庫や自動補充の仕組み
など、調達コストだけでなく、全体の業務負荷が減るよう工夫します。
例えば、RFIDやバーコードシステムを組み合わせて在庫切れリスクを管理したり、IoT化で現場からの直接発注を可能にする形など、時代にあった仕掛けも有効です。
ステップ4:現場教育と運用定着化、カイゼンサイクル
新たな標準品・調達ルールは、必ず“現場に理解されること”が大前提です。
現場説明会や勉強会、わかりやすい掲示物、Q&A対応など細やかなコミュニケーションで不安や戸惑いを解消しましょう。
「標準品で困った時は? 個別調達は例外としてどうするか?」といったトラブル時フローも、明文化しておくことが大切です。
運用が軌道に乗ったら、定期的な見直し会議(現場との意見交換やフィードバック)を設けて、改善のサイクルを維持し続けます。
「昭和のアナログ現場」で陥りやすい落とし穴
落とし穴1:現場の「不安」や「こだわり」に配慮せず失敗
多くの会社で、標準化を急ぐあまり現場の声を軽視しがちです。
「安いものに変えられて手が荒れるようになった」「こっそり前のメーカーを個人で手配している」――
このような例外が横行し、形だけの標準化になってしまうことも。
「なぜそれが必要か」「なぜこれが安全・高品質か」を現場の言葉で説明し、納得してもらう粘り強さが大切です。
落とし穴2:形式的な管理で効率低下
標準化することで「発注の申請手続きがかえって増えた」「融通が利かなくなった」と現場から反発が上がることもあります。
本来、人手・コストの“省力化”につなげるのが標準化の目的。
「誰が、どこまで現場判断で動けるか」という“ゆるやかな規定”も必要です。
落とし穴3:「価格偏重」の発注先固定化リスク
価格競争の結果として特定サプライヤーに依存しすぎると、品質・納期リスクや災害時の調達多様性が損なわれます。
定期的な見直しにより、バックアップ先やリスク分散も同時に構築していくことが大切です。
現場が真の価値を感じる「全社調達」の成功事例
ケース1:某自動車部品メーカーA社「軍手の標準化」が生産性向上に直結
A社は約10の製造拠点ごとに違う軍手や作業手袋を使っていたため、在庫・発注漏れ・現場不満・品質トラブルの“ムダ”が絶えませんでした。
現場作業員の手荒れや安全性への不満を徹底的にヒアリングし、標準品として「人間工学に基づいた高耐久品」を選定。
全社まとめ買いの一括調達で単価を25%低減でき、さらに「自動補充BOX」導入で発注業務、在庫管理が1/3に省力化されました。
「標準化したことで余計なことを考えなくよくなった」「ストレスフリーな作業で班全体の生産性まで上がった」という透明な現場の声が、全社展開の後押しになりました。
ケース2:電子部品大手B社「化学薬品・洗浄剤」の標準化が環境対応で優位性
B社では各現場ごとにバラバラの洗浄剤・化学薬品を調達していたため、管理工数・危険物管理・CO2排出量の多さが課題でした。
購買部と環境管理部が主導し、現場・サプライヤーと共創型のワークショップを行い、本当に必要な洗浄性能・安全性・環境負荷基準を設定。
サプライヤーから新しいエコロジー対応品の情報提供を受けながら、全社で「環境配慮型標準品」に刷新。
法規制への対応も一気に進み、環境認証取得でも大きな効果を発揮しました。
サプライヤーの立場で考える「標準化調達への提案力」
標準化=値下げ要請、と受け止めてしまいがちなサプライヤーですが、購買側が本当に評価しているのは「課題解決と持続性」。
– 「在庫レス納入」「緊急時納期保証」「自社ラボによるテストサポート」
– 「IoT連携提案」「帳票レス納品」などデジタル化サービス
このようなトータルサービスでバイヤー側と“共創”する意識が強く求められています。
現場課題を掘り下げ、標準化のうえで“他社と差別化”できる情報・価値を提案することが、これからのサプライヤーにとって重要な成長ポイントです。
まとめ:製造業発展の「新たな地平線」としての全社調達
消耗品の標準化、全社調達は「コツコツした小さな改革」と思われるかもしれませんが、現場と購買、サプライヤーの三位一体で取り組めば、組織全体のパフォーマンス・競争力に直結する「大きなインパクト」となります。
昭和的な慣習・ルールや忖度にとらわれず、現場目線の徹底した実態把握、納得感ある標準化、柔軟なパートナーシップを進めることが、これからの製造業の“新しい旗印”です。
そして、バイヤーを目指す方やサプライヤーの皆さんにも、単なる安さや形式美だけでなく、「現場が本当に困らない仕組み」と「共創のストーリー」を大切にしてほしいと願っています。
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