投稿日:2025年8月13日

一次包装から内装材までの標準化で梱包工数と材料費を一掃

製造業における梱包作業の現状とは

製造業では、梱包作業が非常に重要な工程のひとつです。

出荷品質の確保はもちろん、輸送中の破損リスク低減や、顧客満足度の向上に直結するため、実は現場で大きな工数とコストがかかっています。

昭和の時代から続く多品種少量生産体質や、製品ごとに異なる梱包仕様が根強く残っている現実もあります。

しかし、デジタル化・自動化が進展する現代、アナログな梱包業務にメスを入れることは、コスト競争力の維持・強化に欠かせません。

本記事では、一次包装から内装材の標準化によって梱包工数と材料費を大幅に削減(=一掃)するための具体的な手法と、実践的な考え方を解説します。

バイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤー視点を知りたい方、そして現場の悩みを解決したいみなさんに必ず役立つ情報となることを目指します。

一次包装・内装材の標準化が進まない理由

まず、なぜ多くの製造業現場で梱包仕様の“標準化”が思うように進まないのでしょうか。

実は、この裏側には“伝統”や“現場力”に頼り切った風土が根深く関わっています。

「今までこうしてきた」が制約する改善

多くの場合、梱包仕様は過去のクレームやトラブルから都度“個別対応”で増改築されています。
結果、製品ごとに異なる箱・緩衝材を増やし続け、現場の経験則や勘に頼る属人的な運用が常態化します。
梱包設計書や標準作業書の整備も後回しとなり、現場では「この製品にはこの箱、このテープ」といった口伝がメイン。
この積み重ねが標準化の阻害要因となります。

設計—生産—調達部門の連携不足

製品設計段階で“梱包性”が十分に考慮されていないことも一因です。
設計者は製品機能や性能、外観重視で、梱包仕様(経済的な寸法割りや、物流効率)は軽視しがちです。
さらに、梱包材料の調達・コスト管理が十分に全体最適化されず、仕様ごとに調達先や条件がバラバラ。
この部門間の分断が、非効率な個別化・多品種化を招いています。

一次包装・内装材標準化のメリット

それでは、あえて全社的に「梱包資材の標準化」に本気で取り組むことで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

梱包工数の大幅削減

箱の寸法や構造が統一されることで、作業者は悩まず効率的に梱包できます。
内装材(緩衝材、仕切り)の種類も限定されていれば、「どのように詰めるか」も標準作業書に落とし込みやすいです。
これにより、作業のばらつき・ミスが減り、教育コストや人材シフトも容易になります。

材料費の低減・在庫圧縮

標準化された規格の箱・内装材を大量発注できるため、単価が下がります。
また、在庫管理すべき種類が減り、調達・保管コストも低減、棚卸業務も省力化できます。

品質安定・トラブル激減

過剰包装・不足包装いずれのリスクも低減され、トラブル解析も迅速に。
輸送事故による返品・交換のコストも抑止できます。
標準品の繰り返し利用により、評価実績が蓄積し品質保証にもつながります。

現場目線の標準化アプローチ【STEP解説】

ここからは、筆者の現場経験をもとに、段階的に進めやすい標準化の進め方を解説します。

STEP1:現状把握と棚卸し

まず始めに、現状の梱包資材と使用パターンを徹底的に棚卸しします。
梱包箱・内装材・緩衝材・固定具などの種類、製品ごとの組み合わせ、出荷数量、調達単価、収納効率など、実際の現場でどのくらいの“品種”があるか可視化します。

STEP2:パターンのグルーピング

使用パターンを分析すると、A品とB品で収納寸法がほぼ同じだったり、外箱にゆとりが多かったりと、設計段階で統合できたケースがよくあります。
高度な例では、パレットサイズの最適分割やオリコン利用も検討可能です。

物理的な寸法・重量だけでなく、「扱い方」「輸送方法」も加味しながら、パターンをグルーピングします。

STEP3:標準資材の選定・試行

複数の製品グループで使い回せる「標準サイズ段ボール」「標準内装材(緩衝材・仕切り)」の設計を行い、現場での試作品によるテストを実施します。
この際、現場の作業者の声を必ず取り入れます。
現実的な作業性・取り回し・資材強度までワークショップ形式で意見を聞き、納得できる基準を作ります。

STEP4:標準化設計書・作業手順書の整備

標準化したパターンごとに、工程帳票や作業手順書を整えます。
梱包設計書には「○品から○品までは箱A+仕切りB+緩衝材Cを使用」「詰め方は2段重ね」といった具体的内容を明記します。
これによりベテランの属人技から誰でも均一作業への転換が可能となります。

STEP5:全社教育とPDCA

新しい仕組みを浸透させるため、梱包担当者のみならず関係部門へも教育を行います。
現場フィードバックを定期的に収集し、実際の輸送トラブルや作業効率の定量データを追い、必要に応じて基準の更新を繰り返すことで、より最適な姿を追求していきます。

包装資材メーカーやバイヤーとの“協働標準化”

こうした取り組みは、社内のみで完結させるのではなく、資材メーカー・サプライヤーと協働することも大きなトレンドです。

包装専門メーカーには、物流効率やコスト面から“業界標準”を組み込んだ汎用資材が多くあります。
またバイヤー・購買担当者は、調達全体のコストダウン視点から「サプライヤーにも標準資材導入を呼びかける」流れが強まっています。

今後は海外との物流(グローバル出荷)にも配慮した“共通化”が求められます。
サプライヤーの立場としては、主要取引先の標準化動向や、どのような基準で改善を進めているかを日ごろから調査・共有し、自社の設計や提案力強化を図ることが、受注競争力の大きなアドバンテージになります。

アナログ現場でも実践できる“地に足のついた改善”を

最新テクノロジーを活用した自動梱包ラインの導入や、IOT連携で箱詰め最適化・ラベリング自動化など、大手メーカーでは先端的な標準化も進みつつあります。

一方、中小〜中堅規模の製造現場では“昭和型”アナログ工程が長く続いてきており、「古いやり方を捨てたいが、手が出しにくい」という声も多いです。

けれど、実は「すぐに投資」が難しくとも、“現場を可視化し、品種・パターンを統合し、みんなで基準を決め直す”だけでも大きな改善効果を実感できます。

特別なITリテラシーや大規模設備投資がなくても、一歩ずつ標準化は進められます。

まとめ:全体最適化で未来を切り拓く

梱包の標準化は、単なるコスト削減・作業の効率化に留まりません。

現場で当たり前に“正しい作業”ができる基準づくり、標準に従った資材調達によるコスト競争力の強化、顧客満足度の向上——それら全てが「メーカーとしての信用力」につながっていきます。

今後はますます、サステナブルな包装材・脱プラ・リサイクル材への転換が求められ、“標準化”がSDGsやCSRにも直結します。

ぜひ、まずは自社商品の棚卸しから標準化への一歩を踏み出してみてください。

それは、自分たち現場の頑張りの“見える化”であり、新たな気づき、働きやすさ向上にも必ずつながっていきます。

「梱包は単なる“最後の作業”ではなく、製品づくりの大切な一部」であることを、これからの製造業の皆さんと共有し続けたいと思います。

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