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部材長さの規格化で切断歩留まりと発注単価を同時改善

目次
はじめに:製造業における「部材長さ」の規格化が秘める力
ものづくりの現場で「部材の長さ」は多くの人が見過ごしがちなパラメータですが、実は調達購買担当、生産管理、現場のオペレーター、そしてサプライヤーまで、すべての現場に密接に関わる重要な要素です。
とくに日本の製造業の多くは、昭和から続く伝統的なやり方として目の前の設計値や現場要望そのままで部材手配を進めてしまう傾向があります。
その結果、材料の端材ロス(切断時の歩留まり低下)や不必要な多品種発注、無駄な在庫の増大、調達コストの高止まりを招いているケースを目の当たりにしてきました。
この記事では、調達購買と生産の両面から「部材長さの規格化」に焦点を当て、昭和的アナログ手法から一歩進んだ業界実践事例を交えつつ、コスト・品質・納期—すべてをバランスよく底上げするための考え方と手法を、実体験を元に解説します。
部材長さの非標準化がもたらす隠れたコスト
切断歩留まりの悪化と隠れたコスト
部材、特に鋼材やアルミなどの定尺品や長尺品では、必要な製品サイズに合わせただけの発注が多く見受けられます。
たとえば「必要な長さ800mmが10本だから、800mm x 10本で加工会社に依頼」となりがちです。
ですが、母材は通常4000mmや6000mmなど、一定の規格長さで市販されています。
この場合、4000mmの母材だと800mmは5本取れて残りは0。
しかし、例えば「820mm x 10本」だったら、どうでしょう。
4000mmで4本しか取れず、余剰が大幅に増え無駄が増します。
現場毎の指示がバラバラだと、この“歩留まり(材料利用率)”が著しく悪化します。
そしてこの端材分のコストが、知らぬ間に単価へ上乗せされています。
発注単位の分散がもたらすデメリット
設計部門や現場からの多様な要望をそのまま細かく反映してしまうと、部品長さ・形状のバリエーションが爆発的に増えます。
その結果、発注ロットが極端に分散し、
・1種類あたりの発注数量が減る
・工程切り替えや段取り替えが増加し手間とコストが増える
・在庫管理や追跡の負荷も増大する
といった問題が常態化します。
つまり、部材長さの非標準化は「見えにくいコスト」という形で、現場の効率と利益率を下げているのです。
規格化によるメリットと業界最先端のトレンド
切断歩留まり最大化でムダを根本的に排除
定尺長さを意識し、複数案件/複数部品で「共通化できる長さ」を事前に設計段階から検討します。
設計段階で「この部材、設計要件ギリギリまで伸ばしてXXmmにしませんか?」
「他の機種と共通化できませんか?」
と現場をまたいだ横断的な議論を持ち込むことで、歩留まりの最大化=ムダの削減が可能となります。
仮に同じ設計仕様だった部品長さを3-4種類から2種類に絞れれば、1ロット発注数が倍増し、切断や加工コストも下がります。端材ロスも減ります。
これは一回の受注では数パーセントの改善かもしれませんが、年間・全社・全工場規模で推し進めれば、数百万円、数千万円のコスト削減効果へとつながります。
サプライヤーとの新しい関係:共同改善の場づくりへ
製造業では発注者とサプライヤーが「価格交渉」だけで関係が終わりがちですが、部材長さの規格化はこれを「協業的価値創造」へ引き上げる契機になります。
サプライヤーは経験値が高く、「この品種・長さならコストがもっと安くなる」「この発注単位なら納期短縮も可能」といったナレッジを多く持っています。
購買担当としては「業界でこの手法が主流」「他社はこういうパターンで発注している」「この長さなら定尺から無駄なく取れる」といった情報を積極的に引き出し、設計・生産現場と“三位一体”で共有していきましょう。
これにより、現場・バイヤー・サプライヤー全てにメリットのある「サステナブルな共存共栄モデル」を目指すことができます。
現場で実践する部材長さの規格化・その進め方
まずは社内状況の「可視化」から
どこから着手すべきか——。
まずは以下の観点で現状を「見える化」し分析することが効果的です。
・どの種の部材が、どんな長さで調達されているか(品種×長さ×発注数の分布分析)
・切断歩留まり・端材発生率の現状把握
・実際の部材在庫の余剰在庫・死蔵在庫の可視化
これは購買だけではなく、現場管理、生産管理、品質管理など各部門を横断して属人的でサイロ化したデータを一度集約・整理する作業をお勧めします。
「設計段階の標準化」推進のための情熱と仕掛け作り
日本の製造現場の多くは、設計部門が現場要件を直接引き出して部材手配を決定しています。
そのため部材長さの最適化・規格化活動は「現場・設計・調達の横断的な巻き込み」が必須です。
「標準化アイデア出し検討会」や「設計フェーズに購買・生産管理も同席するワークショップ」といった、フラットな議論の場を設けることがカギになります。
ここで重要なのは「標準化自体が目的化しないこと」。
最終的に納期・品質・コストの全体最適を実現することを意識し、現場の実情に即した「使える標準化」を目指しましょう。
デジタル化と昭和型アナログ現場のミックスが成功のカギ
近年は部材情報・発注履歴・切断歩留まりなどを「データベース化」し、AIや最適化アルゴリズムで「歩留まり最大配分」を自動計算する動きも進んでいます。
一方、昭和的アナログ現場には「昔からの勘」や、「手触り感・現場事情を知っている担当者」の経験知が生きています。
どちらか一方だけではなく、デジタルの力とアナログの知恵をブレンドし、「伝統と革新のハイブリッド」にすることが大きな推進力となります。
バイヤー/サプライヤーの立場で考えるメリットと心構え
バイヤー(購買担当)が得られる価値
・調達コストの合理化&低減
・サプライヤーからの見積精度アップ(歩留まり悪化時のコスト内訳も明確化)
・全社横断で“共通化”を推進し、社内の購買価値を高めるチャンス
また採用した標準長さは取引量増(サプライヤーとの取引推進)や、大口購入による価格交渉力の強化、在庫リスク低減にも直結します。
サプライヤー(供給側)から見える未来像
・ロスの少ない発注=加工工程や納期も安定し利益確保がしやすい
・定番商品化=生産計画が立てやすく業界横展開も可能
・顧客と「協業パートナー」として並走できるメリット
昔の「言われた仕様を納めるだけ」の受動的な取引ではなく、「提案型」の付加価値勝負で他社との差別化=ウィンウィンな関係が目指せます。
実践事例:現場が変わる。会社が変わる
私が過去に携わったエピソードをご紹介します。
ある設備部材製造企業では、部品毎に異なる長さでバラ発注が常態化し、端材ロス率は10%を超えていました。
そこで長さ全体を精査し、「200mm単位」に規格化しました。
メイン部品3品種でこの共通化を進めた1年目、
・歩留まり改善率=35%
・サプライヤー見積単価6%ダウン
・発注業務の効率化(伝票・在庫管理コスト30%ダウン)
という大きな効果が得られました。
この成功事例を社内報・全社朝礼/サプライヤー会議等で積極的にオープン化し、さらに全社横展開へとつなげていくことができました。
まとめ:標準化は“足元革命”から。“考え方”の改革で未来を拓く
部材長さの規格化は、小さな工夫、地味な取り組みに見えるかもしれません。
しかし、ロス・ムダ・在庫リスク・バラ発注対応のストレス……。
あらゆる無駄の根源を断ち切る現場改革の起点になります。
必要なのは「設計・現場・調達・サプライヤーが、全員で最適解を考え合う」という“考え方の革新”です。
昭和的な思考や、「うちの業界は特殊だから…」という先入観に縛られず、ラテラルシンキングで新しい当たり前=“業界の未来の常識”を、ぜひ今日から実践してみてください。
この記事が、現場と未来を変える考動(考えて、行動する)のきっかけになれば幸いです。
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