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共同標準化プロジェクトでねじ・端子・塗料を統一する

目次
共同標準化プロジェクトとは何か
共同標準化プロジェクトとは、複数の部署や関連会社、あるいは複数企業間で特定の部品や材料、工程、ルールなどを共通化し、全体最適とコストダウンを図るために行う取り組みです。
特に、ねじ・端子・塗料といった消耗材料や汎用部品は、流用・本数・種類が多く、また各現場で“なあなあ”で選定されているケースも少なくありません。
各現場の好みや過去の経緯による仕様のバラつきが、結果として「部品点数増」「在庫管理の複雑化」「調達ロットのバラバラ化」「コストアップ」「品質維持の難しさ」など、さまざまな非効率を生み出しています。
一方で、昭和の時代から続く製造現場の“俺流”文化や、“うちはこれしか使わない”という現場主義も根強く、標準化プロジェクトそのものがうまく進まない、または途中で挫折するという例も多々見てきました。
しかし、モノづくりをグローバルで最適化し、世界の変化にしなやかに対応していくためには、「個別最適(各現場ごとのこだわり)から全体最適(会社全体・グループ全体での共通仕様化)」への発想転換が必須になっています。
なぜ“ねじ・端子・塗料”の共同標準化が重要なのか
サプライチェーン全体の合理化と強靭化
ねじ・端子・塗料といった部品・材料は機器や製品の種類を問わず、あらゆる場所で多用される共通パーツです。
部品点数が多くなればなるほど、発注先・保管場所・管理項目が増え、ミスや遅延リスクも高まります。
また、購買ロットが細分化されれば発注コスト・物流コスト・保管コストも跳ね上がります。
共同標準化を図ることで、サプライチェーンはシンプルになり、購買交渉力や生産計画の柔軟性も格段に向上します。
災害やパンデミック、地政学的リスクが高まる昨今、冗長性の確保や調達リスクの分散・平準化にも寄与します。
調達購買の視点で得られるメリット
調達購買部門の目線で言えば、標準化されたパーツはまとめて大量発注できるため、スケールメリットを生かしたコスト交渉力が高まります。
また、在庫管理が効率化でき、余剰在庫や欠品を減らせます。
万が一トラブル発生時も、「同じものを使っている現場同士」で迅速な補充・融通が可能となります。
外注先にしてみても個別仕様ごとに納期対応を分ける手間や、生産計画の煩雑さを削減できます。
ひいては信頼できるサプライヤーとの長期安定取引や、品質向上・工程短縮へつながります。
生産現場の効率化と間接業務の省力化
生産管理・現場監督の立場に立つと、部品点数が減ること自体が現場負担の削減に直結します。
部品棚の整理、ピッキング間違いの削減、作業手順書の共通化、作業員への教育・指導コストの低減など、良いことだらけです。
また、共通部材として消費量が増えれば部品特性や作業ノウハウが“全社知”として蓄積し、不具合の初動対応もスピードアップします。
メンテナンス効率やリニューアル時の設計自由度も高まります。
間接部門、例えば設計、調達、品質管理、倉庫、現場と関連する全部門で、個々の「面倒くさいけれど仕方ないルーチン業務」をガサッと減らせるインパクトがあります。
ねじ・端子・塗料標準化のポイントと現場の抵抗
標準化推進時の主な障壁
ねじで言えば、「締め付けトルク」「耐食性」「材料(鉄orステンor黄銅等)」「頭の形状(+/−/六角等)」「長さや太さ」「表面処理」と、選定基準はいくらでもあります。
端子や圧着端子も「仕向地」「温度」「絶縁種別」などのバリエーションが多いです。
塗料の場合は「色」「耐薬品性」「乾燥時間」「艶」「塗装方法」など、製品特性ごとに現場が強い主張をしがちです。
現場に根付いた“暗黙知”“部品へのこだわり”“リスク回避主義”が最大の障壁です。
特に「もし標準部品にした結果、不具合が起きたら現場の責任か?」という心理的不安は根が深いものです。
現場の意識と経営の視点をつなぐ
プロジェクトを成功させるには
・“なぜ標準化が必要なのか”
・“標準化により現場自身がどんなメリットを得るのか”
・“万が一トラブル発生時は本部側がどうバックアップするか”
といった、現場に納得感を持たせる丁寧な説明と、標準化による具体的業務削減データの提示が重要です。
また、全部を急に変えようとせず、先に直近で無理なく統一できるパーツや工程から始めて成功体験を作り、徐々に広げていく段階的アプローチが有効です。
昭和的アナログ現場文化からの脱却とDXの活用
標準化とDX推進は車の両輪
デジタル化やDX推進においても、標準化は前提条件です。
“まず部品・工程共通化→全体の業務プロセスを可視化しやすくする→設備・IoT・AI連携でデータ活用を最大化”という流れを作らねば、デジタルの力は本領を発揮できません。
アナログ管理で品番バラバラ、棚の表示と実在庫が違う、現場ごとに同じような部品の違う名称で呼ぶ、こうした“ローカルルールの壁”を越えるには、まず“ものさし=標準部品”を揃えておく必要があります。
ベテラン現場力を標準化に生かすコツ
私が現場の反発を抑えつつ標準化を進めた時によく使ったのが、「ベテラン作業者を標準化委員のリーダーに据えること」です。
現場の“納得感”はベテランの一言で大きく左右されます。
また、数十年モノの現場ノウハウを標準化仕様の洗い出しに役立て、机上の空論でない“本当の現場目線の最適解”を探します。
「小さな部分から成功体験→ベテランの推薦で現場納得→DLCやRPAなどDX推進で間接業務も巻き込む」この順番で進めることをお勧めします。
サプライヤーの視点:バイヤーが標準化で重視していること
サプライヤー側からすると、「なぜ急に全社統一仕様に?」と疑問を持つかもしれませんが、ポイントは一点、“全体コスト低減”“安定調達”“品質均一化”にあります。
大量発注により、リードタイムや在庫保管コストも下がれば、サプライヤー自身の生産計画も平準化され、無理のない納期や品質管理が可能となります。
一見、品種統合は自社の売上減に繋がるのでは?という懸念もあるかもしれませんが、長期枠契約や“他社物件の横展開”コンサルなど、新しい共存ビジネスチャンスに変わる可能性も高いのです。
バイヤーがサプライヤーに求めるのは、「標準仕様への理解」「安定供給力」「イレギュラー時の柔軟なバックアップ体制」そして「標準化によるメリットを一緒に享受できるWin-Winの関係性」です。
ラテラルシンキングから生まれる次世代標準化のヒント
時代の変化は、部品共通化“だけ”ではなく、「3Dプリンターによる現場近接生産」「IoTセンサーでパーツ交換時期を自動通知」「AIによる残量予測発注」といった、標準化+イノベーションの新たな地平を拓く段階に入っています。
例えば、“ねじ”では将来「用途ごとに色分け(AI認識しやすく)」「RFIDチップ内蔵ボルト(締め付け記録を個別で管理)」といった付加価値化も始まっています。
“端子”“塗料”でも、標準化されたパーツを軸に、現場IoTデータと連動させることで、「どこで・どれだけ消費しているか」の見える化や、「メンテナンス時期のシグナル発信」など、次世代の生産管理が可能になります。
結論:標準化は現場も経営もバイヤーもサプライヤーもWin-Win-Win
ねじ・端子・塗料の共同標準化プロジェクトは、調達購買・生産管理・工場現場のみならず、関わるすべての立場に中長期的なメリットをもたらします。
現場の“こだわり”を活かしつつ、全体最適という大きなビジョンを持ち、昭和的部分最適の発想から一歩踏み出すこと。
これが日本の製造業がこれからも世界トップレベルで生き抜くために、決して避けては通れない道です。
ぜひ、皆さんの現場でも「まずは1つの部品から」標準化プロジェクトをスタートし、中期的な全体最適化への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
それが新しい時代の、強い“工場力”、強い“モノづくり”の源となるはずです。
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