投稿日:2025年8月25日

テレワークではなくテレ承認から始めるバックオフィスDX

テレワークではなくテレ承認から始めるバックオフィスDX

はじめに:なぜ今、バックオフィスDXが必要なのか

製造業は長い間、“現場主義”が根付く業界です。

そのため、働き方改革やデジタル化が叫ばれる中でも、図面や稟議書の紙文化、押印文化が根強く残っています。

特に調達、経理、総務などバックオフィス部門は、「何かを変える必要性を感じているが、現場の反発や既存システムとの調整でなかなかDX(デジタルトランスフォーメーション)に踏み切れない」と悩む方も多いのではないでしょうか。

そんな中、多くの現場で真っ先に取り組みやすい、かつ高い効果が期待できるDXの一歩が「テレワーク」ではなく「テレ承認」です。

テレ承認とは何か?

テレ承認とは、“物理的に同じ空間にいなくても申請や承認ができるワークスタイル”のことです。

例えば、従来は稟議書の原本をデスクの引き出しに入れ、承認者が出社して朱肉でハンコを押す、といった手順が当たり前でした。

一方テレ承認は、電子ワークフローや電子押印サービスなどクラウドツールを活用して、承認作業自体をいつでもどこでもできるようにします。

これにより、緊急度の高い案件や連絡ミスによる“ボトルネック化”、責任の所在不明などの非効率を大幅に改善できます。

なぜテレ承認から始めるべきか?ラテラルな視点で考える本質的理由

多くの現場が「テレワーク導入」をDXの象徴と捉えがちですが、製造現場ではフルリモートが難しいケースが大半です。

理由は設備管理、現場点検、ラインオペレーションなど“手を動かす仕事”が根幹だからです。

一方、テレ承認には次のようなメリットがあります。

  • 現場の実務の流れを大きく崩さない
  • 既存の紙文化や承認フローを無理なくデジタルに転換できる
  • 立場の異なる関係者—現場、バイヤー、サプライヤーなど—全員が時間・場所の制約を受けづらい
  • “承認”という組織の命脈を、属人化ではなく可視化・透明化できる

つまり、テレ承認は「最小のコストで最大の効果」を創出できるDXプロジェクトとなりえるのです。

製造業に根付く昭和型アナログ業務の現実

製造業がDX化に慎重な理由は、大きく次の3つです。

  1. 品質管理やトレーサビリティのため、現物管理や紙・押印の運用が信頼されてきた歴史
  2. 過去のトラブルやクレーム対応に現物証拠が重要視される文化
  3. 多層的な管理体系で「承認プロセス」が複雑化しやすく、形式主義に陥りやすい風土

しかし、2020年以降のコロナ禍により、これまで否定されてきたリモート業務や電子承認が企業存続の生命線になりました。

経済産業省も「電子決済・電子契約の推進」「押印の電子化」などを後押ししています。

テレ承認が製造業の現場にもたらすインパクト

バックオフィス業務のうち、申請・承認フローは「案件の進捗速度」や「現場への指示伝達」、「サプライヤーとの調整」などあらゆる業務のハブです。

ここにボトルネックができると、以下のような悪影響が現場全体に及びます。

  • 緊急調達や異常処置の決断が遅れ、ラインストップリスクが増大する
  • 見積・発注から納品承認までサプライヤーとのやり取り全体が滞る
  • 社内業務の「属人化」が進み、担当者不在時の問い合わせがパンクする
  • 進捗管理がアナログ台帳やExcel頼りになり、情報検索、トレースが困難

テレ承認を導入すると、これらの課題が格段に改善します。

例えば「稟議から会計処理、購買承認、検収」までを一気通貫でワークフロー化することで、リードタイムは平均30~50%短縮できる事例も増えています。

サプライヤーやバイヤー視点のメリットとは

調達バイヤーや営業担当者は、常に「社内外の意志決定の遅れ」に頭を悩ませています。

特にサプライヤーの立場では、

  • 承認までのプロセスが見える化されず、フォローやリマインド対応に余計な労力がかかる
  • 急な価格・納期交渉が必要でも、バイヤーの決裁が遅く、ビジネスチャンスを逃す
  • 紙やPDFによるやりとりで、誤送信や転記ミス、情報の取りこぼしが発生しやすい

この点、テレ承認で業務プロセスが可視化され、申請・承認履歴もクラウド上に自動保存されるため、進捗が遅れている箇所や“誰がどこで止めているか”が一目瞭然です。

納期順守やクレームの早期解決、信頼関係の強化という“ビジネス品質”が自然と高まります。

テレ承認導入の実践ステップ

現場にテレ承認を根付かせるためには、次のような手順が有効です。

  1. 業務フローの全体像と課題を見える化する
    承認プロセスの「誰が、何を、どのタイミングで止めているか」「手戻りの多い部分はどこか」を棚卸します。
  2. 電子承認に対応したクラウドワークフローを選ぶ
    小規模チームなら無料プランから始め、社内ポータルやチャットツールとの連携可否も要チェックです。
  3. 既存の紙文化・物理押印との共存ルールをつくる
    重要書類や契約文書など“最後は押印”が必要なケースは残ります。現物保管か電子保存かも社内ルール化しましょう。
  4. 現場巻き込み型でトライアル運用する
    最初から全社一斉導入は失敗しがちです。製造・調達・経理など横断的な現場メンバーと小規模PoCを回し、現場要件を吸い上げます。
  5. 進捗と成果をモニタリングしながら逐次ブラッシュアップ
    導入後3ヶ月~半年でのリードタイム短縮やミス減少、属人化回避など「成果指標」を定量的にチェックし、都度改善していきます。

古い業界にこそ求められる“組織風土改革”の本質

実は、DXの本丸は「ツール導入」ではありません。

もっとも重要なのは「承認・決裁のあり方」を見直し、業務効率や現場の自律的判断を最大化できる組織風土を育てることにあります。

紙や押印文化にこだわる理由は、「現場で責任逃れが生じやすい」「事故発生時の責任の所在が曖昧になる」といったリスク回避にあります。

つまり、テレ承認は単なる業務効率化ではなく、“透明性と説明責任を強化し、ミスや属人化を防ぐ組織体制”を築くための起点なのです。

まとめ:バックオフィスDXの最小戦力、最大効果を狙うには

製造業の現場にこそ、DXの大波はもうすぐそこまで押し寄せています。

テレ承認の実現は、単なるテレワークの一要素ではなく、激動する市場環境や突発的な外部要因(災害、パンデミック)にも柔軟に立ち向かえる組織体質への進化にも直結します。

昭和からの伝統や現場の安心感を大切にしつつ、「今やるなら失敗しないDX」のファーストステップ。

それが、テレワークではなく“テレ承認”から始めるバックオフィスDXなのです。

製造業に携わる皆さま、バイヤー志望の方、そして現場を支えるサプライヤーの皆さま。

ぜひ日々の業務を見直しながら、テレ承認を起点としたDX化で新たな業務改革の第一歩を踏み出してください。

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