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OEMビジネスから自社ブランドを育てるための段階的マーケティング戦略

目次
はじめに:OEMビジネスから脱却する理由
日本の製造業は長らく「縁の下の力持ち」として、OEM(Original Equipment Manufacturer)ビジネスを主軸に成長してきました。
確かな技術力と誠実なモノづくり精神により、多くの世界的商品を陰で支え、「作る力」を武器にしてきたことは明白です。
しかし、現在はグローバル競争の激化や、製造拠点の海外シフト、そして顧客要求の多様化が進みつつあります。
このような中で「ただ作るだけ」に終始しているビジネスモデルでは、技術力や品質だけでは競争に勝てない場面が増えてきました。
今、求められるのは「自社発信力」と「ブランド力」です。
自分たちの作った製品に自信を持ち、市場や消費者に向けて新たな価値提案を行うこと、すなわち自社ブランド展開が、製造業の新しい成長戦略として注目されています。
本記事では、OEMメーカーが自社ブランドを育てていくために必要な段階的マーケティング戦略を、現場目線とリアルな産業構造の中で掘り下げていきます。
OEMビジネスの強みと限界
OEMの圧倒的な技術力・製造力
OEM事業の最大の強みは「高い加工・生産技術」と「品質担保力」です。
受注生産という形で確実な注文管理、そして生産量とコストダウンへのノウハウが蓄積されています。
実際、長年にわたり世界的ブランドや日本国内大手メーカーのパートナーとして信頼されてきたOEM企業は、製造現場の制約下で工程改善や品質向上を追求してきました。
卓越したQCD(品質・コスト・納期)管理や、培った現場知見は大きな資産です。
受動的な成長の壁と価格競争
一方、OEMビジネスに徹し続けることで発生する問題もあります。
それは「価格競争に巻き込まれるリスク」と「バリューチェーンでの主導権の低下」です。
主なお客様(委託元)の購買方針一つで、価格引き下げや取引継続の可否を左右されがちな立場となりがちです。
近年は中国・ASEANなど海外の安価な新興企業も進出し、日本のものづくり企業が価格のみで勝負することはますます困難となっています。
また、世間に名前も知られず、顧客との直接的なつながりや市場データの蓄積ができないため、今後の新規事業やブランド化の種まきの余地も限られるのです。
自社ブランド化の6つのステップ
OEMから自社ブランドへ転換するには、優れた製品開発力だけではありません。
「市場を読む力」「ブランドとしての世界観」「顧客エンゲージメント」の3つが揃ってはじめて、ブランドの成長が動き出します。
ここでは段階的に自社ブランドを育てる6つのマーケティング戦略を紹介します。
1. 社内ビジョンとブランドDNAの明確化
まず最初に必要なのは、「我々はなぜこの製品・サービスを市場に届けたいのか?」という目的意識です。
単なるOEM受託の延長ではなく、自分たちが追求したい価値観や社会課題、ユーザー像を明確化することが大切です。
社員一人ひとりにもブランドビジョンを共有することで、製品開発や営業、現場改善まで一貫したチーム力を高められます。
2. 市場・ターゲット選定とニーズリサーチ
自社製品を「誰に届けるか」を明確に定める必要があります。
既存取引先だけに頼るのではなく、どんな悩みや不便を抱える顧客がいるのか、現場目線・生活者目線の両軸からニーズを掘り下げていきます。
展示会や商談会、業界紙アンケート、場合によってはOEM先が持つ市場データをうまく活用し、「成長性・独自性・収益性」の3点で市場候補をテストします。
3. 独自技術/強みの見える化とブランド価値の再設計
OEMの現場で培った工法やノウハウを「わかりやすい言葉」「市場価値」に再翻訳することが必要です。
それは「精密さ」や「頑丈さ」だけでなく、「業界初の〇〇」「この課題を3割削減」「数十年トラブルなし」といったストーリーや実績を前面に出すことです。
昭和的な「見て覚えろ」精神から、「わかりやすく伝え、選ばれる」時代へのパラダイムシフトです。
設計者同士の暗黙知を、言語化して社外へ打ち出すこと。
これがブランド成功への第一歩です。
4. 試作・小ロット展開とユーザーフィードバック取得
いきなり大規模生産に踏み切るのはリスクがあります。
まずは自社内向けや関係会社向けから試作品を展開し、現場の声や実際の利用体験をもとに改善サイクルを回します。
必要に応じてクラウドファンディングやオンライン展示会も活用し、見込み顧客と直接コミュニケーションをとることで、「なぜ選ばれたか」「うまく伝わらなかった点」など、貴重なフィードバックを得ることができます。
5. 課題解決とブランドストーリーの共感化
自社製品が「どんな社会問題を解決できるか」「誰のどんな現場課題に寄り添えるか」を具体的な事例やストーリーで伝えることが重要です。
OEMメーカーの場合、どうしても製品スペックの羅列や過去実績だけをアピールしがちです。
ところが、市場やユーザーが本当に知りたいのは「その製品を使うことで、どんな未来が実現するのか」という希望や納得感です。
現場の苦労や試行錯誤のストーリーを交え、ブランドの「共感力」を強化しましょう。
6. 販売チャネルとデジタル活用で拡張
最後に、商品の販売チャネル拡大とデジタル施策が重要となります。
従来ながらの商社・代理店チャネルに加え、自社ECサイトの立ち上げや、SNS・BtoBプラットフォームへの出店も検討しましょう。
特にここ数年は、法人バイヤーがGoogle検索やSNSから新規取引先を調査・選定するケースも増えています。
SEO(検索エンジン最適化)対策や、有用な技術解説記事、事例紹介コンテンツを充実させ、ネット時代の新規開拓も並行して進めることが肝要です。
昭和から抜け出せない業界動向と変化の兆し
「現場の常識」と「外部の非常識」
多くの製造業界では、長年根付いてきた昭和的手法や、現場の習慣・常識が依然として強く残っています。
発注者と受注側の明確な上下関係、FAXや電話による受発注、合言葉のような「阿吽の呼吸」。
これらは一見非効率に見えても、現場の安定稼働を支える「最後の砦」でもあります。
しかし、デジタル化や若手バイヤー・新規メーカーの台頭で、こうした慣習が足かせとなる時代がきています。
情報開示やスピード重視、現場の「思い込み」から一歩離れた柔軟な発想で、新たな市場を切り開く必要があるのです。
バイヤー・サプライヤーの立ち位置の変化
かつてはバイヤーが持つ「選択権」の力が圧倒的でしたが、新しい製造業の波の中では「共創型」や「コラボ型」関係が求められています。
バイヤーサイドも「発注依存」「コスト主導」だけでなく、サプライヤーの新しい提案や独自ブランドを積極的に評価する傾向が強まってきました。
サプライヤー側も「受け身」から「提案型」へ発想を転換し、いかに自社の価値を可視化し、顧客に伝えるかが従来以上に重要となっています。
アナログとデジタル、両輪の現場最適化
現場の「職人技」や「丁寧な段取り」も、今後はデジタルツールと組み合わせながら、より高品質な価値提供に活かしていくフェーズに入っています。
紙に手書きしてきた品質記録も、写真や動画を活用したオンライン説明に。
展示会だけでなく、バーチャル工場見学や技術者ブログなど新しいPR手法も選択肢となります。
大切なのは「今ある現場力を、どうブランド資産として見せていくか」。
この視点で現場の磨き上げと情報発信の両立を追求しましょう。
自社ブランド化で得られる新たな成長機会
自社ブランド化という新たなチャレンジにはリスクも伴いますが、得られる成長機会は計り知れません。
市場との直接対話を通じて、新しい製品価値や隠れた顧客ニーズを獲得できるようになります。
自社の技術と思想に誇りを持ち、従業員のモチベーション向上や企業イメージの向上にもつながります。
また、長い目で見れば、OEMで培った現場力が自社ブランドで花開き、予想もしなかった分野への事業拡張や、国内外ユーザーとの共創という新たな未来を切り拓くことができるのです。
まとめ:モノづくりの未来を「自社発信型」へ進化させよう
OEMビジネスで培った現場力と技術は、決して「縁の下の力持ち」で終わるべきではありません。
自社ブランド化は、モノづくり企業が「自ら価値を創造し、発信する」成長戦略といえます。
ラテラルシンキングで自社の強みを見直し、「作る力」を「売る力」「伝える力」へと転換していくこと。
旧来のアナログ的な業界習慣も尊重しつつ、現場と市場を結ぶ新たなマーケティング力、デジタル活用力を磨いていきましょう。
OEMメーカーから自社ブランドメーカーへ進化することは、日本の製造業にとって、そして現場で汗を流す技術者やバイヤーにとって、大きな夢と新しい可能性を手に入れる道となるはずです。
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