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地元の素材を生かした製品づくりで失敗しないための価値再定義の手順

目次
はじめに:地元素材活用の可能性と落とし穴
ものづくりに携わる方々の間で、「地元の素材を生かした製品づくり」というテーマが近年ますます注目されています。
これは新たな付加価値創出や、地域の特性を活かした差別化戦略として有効な取り組みといえるでしょう。
一方で、単に素材を地元産に置き換えるだけでは競争力を生み出せない、むしろ余計なコスト増や失敗につながる事例も数多く見てきました。
本記事では、20年以上の製造現場経験と、実際に地元資源活用プロジェクトに携わった立場から、「地元素材を活かした製品づくりで失敗しないための価値再定義の手順」を、現場目線で解説します。
バイヤー志望の方、サプライヤーとしてバイヤー目線を知りたい方にも役立つ内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。
なぜ地元素材が注目されるのか?業界動向から見る背景
地元素材の活用は、古くは地場産業として日本各地で長い歴史を持っています。
しかし、グローバル化や大量生産・大量消費の流れの中で、徐々にその重要性が薄れる時期もありました。
ところが、現代では再び脚光を浴びています。
それにはいくつかの根拠があります。
エシカル・SDGs・地域共創の高まり
エシカル消費やSDGs(持続可能な開発目標)が社会的価値として強く求められる時代になりました。
「どこの素材を使っているか」「生産や流通で環境負荷はどうか」「地域や関係者に利益還元されているか」といった点が、BtoB・BtoC双方の購買意思決定の重要な要素になっています。
大手メーカー各社も、調達購買段階でサステナブルな素材や地元資源利用に積極的になっています。
マーケットニーズの細分化・ストーリー性の重視
高度成長期のモノ主体からコト消費へと消費者マインドがシフトし、「どんな製品か」よりも「どのような価値や背景があるか」が選択ポイントになりつつあります。
ここで地元の素材や独自技法が“差分”として強く訴求できるのです。
ただし、地元素材だから売れるわけではありません。
マーケットの飽和、差別化の難しさ、原材料価格やサプライチェーンの課題といった昭和的アナログ業界ならではの悩みも未だに根強く存在します。
地元素材活用でよくある失敗例
地元の素材を取り入れた製品開発は魅力的ですが、やり方を間違えると逆効果になりかねません。
ここでは代表的な失敗例を紹介します。
コスト構造の誤算
地元素材は時に「高くつく」「安定調達が難しい」といった課題があります。
大量調達前提のサプライチェーンを崩さないまま一部を地元素材に切り替えると、全体コストや納期への悪影響、品質安定性への懸念などが顕著になります。
バイヤー視点では、サプライヤー管理やサプライチェーンの再設計が必要不可欠です。
価値提案が曖昧
「地元の素材を使っています」で終わってしまい、最終製品としての訴求力が弱いパターンです。
営業や展示会で「地元産です」と謳っても、バイヤーやユーザーの琴線には触れません。
素材の持つ物性や機能、ストーリーに基づいた具体的な差異化ポイント、導入効果を明確に再定義することが欠かせません。
現場の納得感や工程設計との齟齬
製造現場では、従来材料で慣れ切った工法や品質管理基準を、容易には変えられません。
営業主導で地元素材導入が決定したものの、生産現場で歩留まりや品質バラつきが増加し、逆にコスト増やクレームにつながった事例もあります。
現場の声を無視すると、昭和的な「なんとなく変えなかった理由」が顔を出し、想定外のトラブルに発展しかねません。
地元素材を価値再定義するための5ステップ
では、どうすれば地元の素材を本当に“生かせる”製品づくりが実現できるのでしょうか。
現場で数々のプロジェクトに携わる中で私が体系化した、「価値再定義」の手順を解説します。
ステップ1:素材の本質を見極める
まずは地元素材のスペックや調達状況を、定量的・定性的に洗い出しましょう。
– 物理特性(強度・耐熱・加工性・見た目等)
– 調達ロット・サプライヤー体制
– 季節変動や品質バラつきの要因
– 地元ならではのストーリー要素や認証
単に「地元だから使う」ではなく、その素材特有の良さ・悪さを現場レベルで把握することが極めて重要です。
ステップ2:自社(または顧客)の課題と照合する
次に、その素材が自社製品やバイヤー課題解決にどう結びつくかを整理します。
例
– より軽く、強い材料が求められている
– 脱炭素材料への転換が必須
– プレミアムな仕上がりが製品差別化になる
– 地域発ベンチャーにストーリーを武器にしたい
現場目線でいうと「今ある課題リスト」と「素材の長所・短所」を貼り合わせてみる作業。
これで、素材ありきの商品開発から脱却し、「なぜ使うのか」の本質を見失いません。
ステップ3:工程・品質・コストの現実シミュレーション
製造現場として最重要なのが、地元素材を使った場合の現場オペレーションや管理コストです。
– 従来材料と入れ替えた工程で工程短縮できるか
– 品質管理で手間が増えないか
– トレーサビリティやロット管理に現状システムを流用できるか
– サプライヤーの品質管理体制は整っているか
よくあるのが、現場や検査部門が導入後に苦しむケースです。
事前にシミュレーションし、ネックになりそうなところをリストアップしましょう。
バイヤーや顧客へは、こうした「現場目線の改善イメージ」も提案できれば説得力が格段に上がります。
ステップ4:価値を訴求する“再定義ワード”をつくる
人は抽象的な「地元素材」や「エシカル」にピンと来ません。
現場の手間や改善をうまく織り交ぜた“言葉”を新たにつくることが重要です。
例
– 「純地元産○○素材で、従来比20%の耐熱向上」
– 「サプライチェーンCO2&コスト10%削減達成」
– 「トレーサビリティ対応“地元○○認証”取得」
バイヤーはこの“再定義ワード”に反応します。
だからこそ、工程改善の数値データや認証取得、独自のブランドストーリーを必ず紐付けましょう。
ステップ5:現場・取引先を巻き込んだ実証を繰り返す
最も重要なのが、「実際に回してみる」ことです。
試作・プロト・ラボで終わらせず、日々の生産現場や検査、顧客への納品で実証してみましょう。
– どこでロスが生まれるか
– バイヤーや購買担当のフィードバックは
– 現場作業員のモチベーションへの影響は
現場を巻き込むことで真の課題や改善ポイントが見えます。
失敗例や苦労話も社内・社外問わずオープンに共有することで、説得力と顧客信頼が段違いに高まります。
アナログ業界でも“抜け出せる”ラテラル思考:打破のカギは?
昭和からのアナログな業界構造では、“前例がない” “なんとなく続けてきた”が無意識のブレーキになります。
しかし、地元素材を「現場起点」で再定義するためには、ラテラルシンキング(横断的・多面的な発想)が不可欠です。
複数の素材・分野を横断する発想
木材メーカーが地元の米や発酵技術と組み合わせて新たな複合資材をつくる。
繊維メーカーが農家や水産業者とコラボして未利用資源の加工技術を生み出す。
地元の異業種を巻き込んだバリューチェーンを創造すれば、“思い込み”を打破できます。
DXツールのちょい足し活用
すべてをハイテク自動化する必要はありません。
在庫管理に地元素材のIoTタグだけ導入、品質検査だけAI画像判定に切り替える、といった“ちょい足し”活用でも、昭和型の属人化や曖昧な工程管理を打破できます。
アナログベースの業界でもDXを部分的に挿入するだけで、価値再定義のスピードは飛躍的に上がります。
まとめ:地元素材を“ビジネス資産”に昇華するために
地元の素材を生かした製品開発は、単なる地域貢献や話題作りに終わらせず、本気で自社や顧客の課題解決につなげてこそ真価を発揮します。
昭和的なアナログ業界構造を打破し、現場起点で再定義を実現するためには
– 素材の本質の正しい把握
– 自社または顧客課題への正確な照合
– 工程・品質・コストの現実的なシミュレーション
– 価値訴求ワードの創出
– 現場・取引先巻き込みによる実証
という5ステップが基本となります。
ラテラルシンキングで業界の枠・自社の常識を突き抜け、ぜひ地元素材を「利益も生産性も上がるビジネス資産」として昇華させてください。
本記事がバイヤーを志す方、サプライヤーの立場でバイヤーの思考を知りたい方、現場で汗を流す皆様にとって、新たな一歩となることを願っています。