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ヨーグルトの滑らかさを作る撹拌回転数と粘度プロファイル

目次
ヨーグルトの滑らかさがなぜ重要か
ヨーグルトは、日本の家庭でも健康志向の高まりと共に、毎日のように食卓にのぼる定番商品となりました。
その中で「滑らかさ」は美味しさや食感を決める最重要品質要素の一つとなっています。
消費者がヨーグルトに求める“なめらかさ”は、味や見た目以上にリピート率に直結するポイントでもあります。
スプーンですくった時の「つや」と「口当たりの良さ」は、単なる乳製品を“商品”に昇華させる大切な差別化要素です。
そのため、多くのメーカーが滑らかな食感を作り出すため、乳酸菌の種類・培養条件・原材料の選定・生産プロセス設計など、ありとあらゆる工夫を凝らしています。
しかし、現場ではしばしば「なめらかにならない」「日によって食感が違う」などの課題で頭を抱えることもしばしばあります。
この現象を引き起こす大きな要因の一つが、製造工程における「撹拌(かくはん)回転数」と「粘度プロファイル」に他なりません。
ヨーグルト製造における撹拌回転数の役割
撹拌工程とは、発酵乳やヨーグルトの製造において不可欠なプロセスです。
乳酸菌の分布や、乳成分同士の均一化、固形成分への影響など多くの部分で品位を左右します。
製造現場では、「ホモジナイザー」「撹拌機」「ミキサー」といった装置により、牛乳や原材料、培養液を混ぜ合わせます。
このとき重要になるのが「撹拌回転数」です。
撹拌回転数とは、簡単にいえばミキサーの羽根などが1分間で何回転するかという指標です。
この数値が高すぎたり、低すぎたり、または途中で変動したりすると、ヨーグルトのなめらかさが顕著に変化してしまうのです。
高すぎる撹拌速度のデメリット
もし撹拌回転数を上げすぎた場合どうなるのでしょうか。
まず、強力な力によりヨーグルトのたんぱく質構造が壊れやすくなります。
その結果、ヨーグルトの網目構造(ゼラチンネットワーク)が断裂し、液状成分(ホエイと呼ばれる透明な水分)が分離しやすくなります。
ドロッとした厚みのあるヨーグルトを狙ったのに、緩く水っぽくなってしまう失敗がこれです。
また、過剰な撹拌により空気が過剰に混入すると、泡立ちや酸化による風味の劣化も招きます。
工場で起こりがちな「ブレンダーで空気を噛みすぎ、すっぱい・苦い・薬臭い」問題も撹拌回転数が原因となっていることが多いです。
撹拌不足のデメリット
一方で、撹拌回転数が低すぎると原材料が均一に混ざらず、ヨーグルトの仕上がりムラや部分的な硬さ、成分沈殿といった問題が起きやすくなります。
特に現代では、高たんぱく・低脂肪・低糖質といった健康志向ヨーグルトが注目を集めています。
しかし、これらは成分的に乳固形分が多かったり、安定剤やとろみ剤の使用有無の違いにより通常品に比べてダマや偏りが発生しやすい傾向があるため、よりシビアに撹拌回転数を管理する必要があるのです。
なぜ粘度プロファイルが重要なのか
粘度プロファイルとは、ヨーグルトの粘度(とろみの度合い)が温度や時間、せん断速度(撹拌の速さ)によってどう変化するかを示したものです。
このプロファイルは、「滑らかさ」の体感的な違いだけでなく、瓶充填やパッケージング時の流動性、さらには保管中の品質安定性まで影響を及ぼします。
ヨーグルトの粘度は、単純な数字では把握できません。
なぜならヨーグルトは「チキソトロピー性」を持つ流体、つまり「静かに置いていると硬く、混ぜると緩くなる」という性質(擬塑性流動)を持っているからです。
粘度プロファイルで守らなくてはいけないポイント
1つ目は、「商品ごとに最適な粘度範囲が決まっている」ということです。
昔ながらのドリンクヨーグルトはサラサラで問題ありませんが、スプーンですくって食べる“ギリシャ風濃厚ヨーグルト”やフルーツソースと混ぜるレイヤータイプでは、それぞれ口当たりや流動性の理想値が異なります。
2つ目は、「温度や保存状態でも粘度は大きく変わる」ということです。
たとえば冷蔵時はとても硬く、常温にすると緩くなる、反対に加温工程で粘度が上昇しブロック状になる、など温度変化の影響は無視できません。
三つ目は、「撹拌回転数との関連性」です。
せん断力が高まる(激しく混ぜる)と、分子間の結びつきが変わり、粘度が急低下したり逆に一部が硬化塊になったりします。
これらのプロファイルを十分に理解できていないまま、製造条件だけを「勘と経験」で選んでしまうと、滑らかさや口当たりに大きなバラツキが生じ、市場クレームや歩留まり低下の原因となります。
現場での撹拌回転数と粘度管理のベストプラクティス
昭和からの「アナログなやり方」が根強い日本の製造業ですが、ここ数年は量産現場でも様々なIoTや可視化装置が導入され始めています。
しかし、すべての工場が完全自動化されているわけではなく、熟練工やオペレーターの“目利き”が今も重視されています。
そこで、私の経験から「すぐに実践できる現場目線の撹拌・粘度管理ノウハウ」をいくつかご紹介します。
1. 撹拌工程でのRPM(回転数)の標準化
工程ごとに最適な回転数やタイムチャートを仕様書化することが不可欠です。
ただし、現場のミキサーやブレンダーは実負荷によって回転数が微妙にブレます。
従って、製造条件を設定する際は「理論値」だけではなく「実際に仕込む原材料の投入温度・量」「回転数の立ち上がり/立ち下がり傾向」も常にチェックします。
特に、「朝一バッチは固まりやすい」「深夜帯の回は撹拌ムラが多い」といった、時間帯やバッチ間の差にも注意が必要です。
こうしたアナログな“クセ”も見逃さず、担当班ごとのナレッジとして共有化していくことが現場力向上の鍵となります。
2. 粘度プロファイルの定点チェック
実際に粘度を測るには「ブルックフィールド粘度計」のようなサンプル粘度測定器の定点設置が有効です。
おおよそ標準撹拌済みヨーグルトなら、20℃~30℃で1500~3500mPa・s(ミリパスカル秒)くらいを基準に、規格外が出た場合すぐにフィードバックをかけます。
また、得られた粘度値は単なる数字としてしまわず、「撹拌回転数を5%落としたら粘度がどれほど変化したか」などの相関データを残し、トラブル発生時の原因究明や工程改善のベースデータとします。
3. 品質トラブルの現場的アプローチ
粘度異常や撹拌ムラが起きた場合、現場ではどうしても「機械不調」「原材料のバラツキ」等に原因を求めがちです。
しかし、ほとんどのケースで「撹拌回転数の一時的な変動」「作業員によるミキサー操作ミス」や「原材料の投入タイミングのズレ」など、多因子要素が複雑に絡んでいることが多いです。
こうしたときは、時間軸ごとに稼働データをさかのぼり「どこで変調が始まったか」を追跡します。
現場のオペレーター、技術者と連携し合い「一度だけ異常が起きたのか、日々じわじわ悪化しているか」まで突き止め、原因の切り分け・再発防止策を組織的に進めることが必要です。
今後に向けて~デジタル化と現場目線の融合~
AIやデジタル化で工程管理が高度化する今、「撹拌回転数」と「粘度プロファイル」の最適化は今後さらに重要性を増します。
クラウドデータの蓄積や、生産予測AIによるフィードフォワード制御も現実味を帯びていますが、最終的に商品を手に取るのは人間です。
したがって現場での五感によるフィードバック、現場作業者同士のナレッジ共有はこれからも製造業を根底から支える要素となるでしょう。
アナログとデジタル技術を組み合わせ、工程ごとのツボを押さえた「なめらかヨーグルト造り」を追求し続けることが、バイヤー・サプライヤー・開発・工場現場全体の付加価値向上につながっていきます。
まとめ
ヨーグルトの滑らかさは、単なる消費者ニーズではなく、撹拌回転数と粘度プロファイルという高度な工程管理技術の結晶です。
現場での地道な取り組みと、昭和からのアナログ知見、そして最新デジタル技術の融合によって初めて真の高品質・高付加価値ヨーグルトが生まれます。
「美味しいヨーグルト」の裏側には、見えない現場のプライドと、毎日の絶え間ない工程改善が隠れています。
工場の現場、バイヤー候補の方、サプライヤーの方――どこにいても“モノづくりの面白さ”と“チーム力”を感じられる職場づくり、製品づくりを、これからも追求していきたいと思います。
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