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高シェア新製品を生む戦略的開発テーマ探索と採否判断手法

目次
はじめに:製造業を取り巻く現代の課題と新製品開発の重要性
現代の製造業界は、グローバル競争や技術革新、そして消費者ニーズの多様化など、かつてない変化の波に直面しています。
特に昭和時代から続く“現場力”重視のアナログな組織文化は強みでもあり、同時に新たな市場を切り拓くうえでの障壁になりがちです。
こうした状況下で、いかに世界市場における高いシェアを誇る新製品を生み出し、企業の成長を牽引するのか。
これは調達購買・生産管理・品質管理・工場自動化など多岐にわたる現場部門が一丸となって取り組むべき最重要課題です。
本記事では、高シェア新製品を生むための戦略的開発テーマの探索から、その採否判断手法にいたるまで、私が20年以上の現場経験で培った実践的知見を、バイヤー/サプライヤー双方の目線を交えて解説します。
なぜ“高シェア新製品”が必要なのか:業界動向と時代要求
既存製品の収益構造は限界に達している
多くの日本の製造業は、成熟した基幹製品による安定収益を維持してきました。
しかし、海外メーカーの猛追や新興国市場へのシフト、値下げ圧力の高まりによって、既存製品のみでの成長は現実的ではありません。
ここで求められるのが、世界市場で高いシェア・高い利益率を確保できる“新しい柱”となる新製品です。
製造現場発の発想が世界を変える
日本の現場には、積み上げてきたノウハウ・改善スキルがあります。
これらを単なる業務改善にとどめず、顧客の“課題解決”に直結する製品づくりへと昇華することが、高シェア新製品を生む源泉になるのです。
高シェア新製品開発の出発点:有望な開発テーマの探索とは
顧客課題を“解決”するための課題発見力
高シェア新製品の開発で最も重要なのは、市場の顧客が本当に困っている“未解決課題”を抽出することです。
このためには、営業・調達・現場管理・設計・生産技術それぞれの現場が一緒になり、顧客との接点を最大限に活用して情報収集に努める必要があります。
たとえば自動車部品メーカーの場合であれば、完成車メーカーの開発者・設計者から「消費者がどんな不満を抱えているのか」「品質問題の裏に隠れた真因は何か」といった生の声を引き出し、現場目線で分析することが不可欠です。
アナログ思考×データ分析の“二刀流”
昭和型の強みである“現場のカンや経験則”に、近年のDX推進で得られる大量データ分析を組み合わせることで、他社が気づいていないテーマをいち早く見抜くことができます。
たとえば不良発生データや生産ボトルネックの傾向から、実は「製品そのもの」に見直すべき点があることが発見できる場合があります。
バイヤー視点の「調達困りごと」も開発ネタの宝庫
調達バイヤーは、日々のコスト削減や納期短縮、安定品質確保などの課題で頭を悩ませています。
仕入先(サプライヤー)として、自社製品やサービスがこれらバイヤー担当者の“困りごと”に刺さるなら、それは業界横断的なヒットとなる可能性が高いです。
そのためにはバイヤーと定期的に「どこに悩みがありますか?」と率直にヒアリングしたり、サプライヤーサミットのような意見交換会に積極参加したりすることも重要です。
戦略的な開発テーマ選定のための多角的評価手法
「事業性」と「独自性」は必ず確かめる
有望な開発テーマをリストアップした後は、その採否判断が肝心です。
このとき、以下の2つの観点で必ず評価します。
1. 事業性(市場規模・利益性・拡張性が見込めるか)
2. 独自性(競合他社では真似できない技術・スキームがあるか)
単なる“面白そう”や“技術的に実現可能”だけでは商品化しても短命に終わります。
市場規模のシミュレーション、既存製品とのカニバリ有無、知的財産権の保護可能性等の観点で徹底的に調べ上げましょう。
テーマ評価の“見える化”と意思決定プロセスの透明化
テーマ選定に現場や経営層が加わる場合、感情論や個人の主観が先行しやすいのが製造業の実情です。
そこで有効なのが、「開発テーマ評価シート」の作成と、評価指標(たとえば5段階のレーダーチャートによる事業性・独自性・開発難易度の点数付け)です。
こうすることで、公平で客観的なテーマ採否判断が誰の目にも分かりやすくなり、組織内でギクシャクせず前進できるようになります。
現場主導での開発テーマ深化とスピード推進のコツ
“やってみる”文化を組み込む
机上の検討だけで終わる開発プロジェクトは、結局どこにもヒットしません。
現場主導で小規模のPOC(概念実証)やプロトタイピングを早期に繰り返し、「失敗を許容する文化」を根付かせます。
「まずはラインの一部で新規材料を試してみる」「購買部門と協働して新サプライヤーとの組み合わせ生産実験を行う」など、現場での小回りを大切にしましょう。
バイヤー(のちの顧客)を巻き込む試作段階
製品開発段階から“将来買うバイヤー”を巻き込み、一緒に企画・試作・現場検証に参加してもらう体制を作りましょう。
これにより、実際の運用現場に即したニーズ・課題が反映され、発売後の失敗リスクを格段に下げることができます。
サプライヤーの立場であっても、バイヤーとの共創を掲げて「バイヤー側が本当に欲しい仕様」に磨き上げましょう。
高シェアにつながる“製造×ビジネスモデル”設計
単なる製品スペック差別化に止まらない発想
成熟業界では“ちょっとだけ高性能”な新製品はすぐ模倣され、価格競争の海に沈みがちです。
ここで有効なのが、「使い勝手」「調達容易性」「サービス一体型」「サブスクリプション型価格」など、顧客が本当に価値を見出す総合的なビジネスモデル設計です。
調達現場のバイヤー視点で「常に安定納入」「取扱説明や教育支援が手厚い」「IoTで消耗具合が自動で見える」など、“選ばれる理由”を意図的に織り込みます。
“作れないものは売れない”を徹底的に排除
新製品開発では、設計思想と現場生産現実のかい離が起こりがちです。
生産現場と開発現場が同じ目線で「実際に作り続けられるか・コストダウン可能か」を徹底議論したうえで、最後のGO/NO-GOを決めます。
ここで製造部門の早期巻き込みを怠るとロスコストが膨らみ、一気に“儲からないプロジェクト”になります。
定期的なテーマの“振り返り”と“葬り方”も重要
途中でストップしたテーマも「なぜ止まったか」を共有
全ての新製品開発テーマが成功するわけではありません。
途中で休止・中止したテーマから“なぜ採算割れしたか”“どんな市場変化があったか”を徹底分析し、社内の共通知見として残しましょう。
同じ失敗を繰り返さない体制が、未来の高シェア新製品開発の土台となります。
テーマごとの後追い検証と、チーム横断共有の仕組み
1年に1回など、定期的に「過去に検討した開発テーマリスト」を後追いし、実は市場が変化して今なら“再チャレンジ”の価値があるテーマがないかを全方位で見直しましょう。
こうした柔軟なスクリーニングが、次世代ヒットテーマの「お蔵入り」を防ぐ秘訣です。
まとめ:昭和型アナログ現場力×デジタル思考で新たな地平を拓く
高シェアを実現する新製品は、一握りの発明者のひらめきだけで生まれるものではありません。
顧客の真の困りごとを現場の五感とデータを駆使して見抜き、現場主導の素早い試作・検証、調達・生産・品質など全方位型連携、そして着実なビジネスモデル全体設計によって生み出されます。
バイヤーの方は、日々の課題を率直に発信することが、業界を変える新製品誕生への第一歩となります。
サプライヤーの方は、バイヤーの課題感を“自分事”として、ぜひ現場とともに唯一無二の新製品づくりへ進んでください。
この記事が、皆さまの実践・現場改革の一助となることを願っています。
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