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OEM商品の生産体制を強化するための工場との連携手法

目次
はじめに:OEM商品の生産体制強化が求められる時代背景
2024年現在、製造業界は大きな転換期を迎えています。
グローバルサプライチェーンの多様化、国内人口減少による人材確保難、デジタル技術の進化、さらにはサステナビリティ対応など、バイヤーや企業が直面する課題は複雑です。
特にOEM商品(相手先ブランドによる生産)を強化するためには、「工場との連携力」がこれまで以上に重要になります。
なぜなら、OEMは“信頼関係”と“現場対応力”で成り立っているからです。
例えば、昭和時代のようなトップダウン指示だけでは品質や納期、生産性向上の要求に応えきれません。
本記事では、現場目線でOEM商品の生産体制を強化するための工場連携手法を、最新の業界動向とともに解説します。
OEM商品の製造プロセスとよくある課題
OEM製造の基本プロセス
OEM商品は、バイヤー(発注側企業)の仕様やブランド要件に基づいて、サプライヤー(受託工場)が設計・製造・納品まで行うビジネスモデルです。
通常は次のような流れで進みます。
1. バイヤーからの仕様提示・打合せ
2. サプライヤーによる試作・評価
3. 本生産に向けた条件交渉・契約
4. 量産・納品・品質管理
5. アフターサポート
この一連のプロセスで、いくつもの壁に直面しがちです。
現場で多発する典型的な課題
1. 仕様伝達ミスや齟齬
2. 納期遅延や突発的な生産トラブル
3. 品質水準の未達・変動
4. コスト管理の不透明さ
5. 結局「現場まかせ」で進む部分が多い
こうした課題は、「部門や会社の壁」「情報伝達の遅れ」「感覚的な合意」など、昭和から続く“アナログ体質”が根強い現場ほど起こりやすいものです。
生産体制強化には、ここを突破するラテラルシンキング、つまり“横断的な発想・連携力”が不可欠です。
連携強化のポイント1:現場から始める双方向コミュニケーション
“仕様書丸投げ”に頼らない協働姿勢
失敗するOEM案件では、どうしても「仕様書丸投げ」「お互い連絡はメールだけ」といった受け身のやり取りが目立ちます。
しかし、現場を熟知している立場から見れば、仕様と生産性、品質、安全性、コスト、すべての調整は一筋縄ではいきません。
そこで有効なのは、打合せ段階から「現場担当者同士の直接対話」を組み込むことです。
例えば、サプライヤーの工場長や現場リーダーも含めて初期段階から定期的な打合せを設け、「実際の製造ラインで課題を共有」する機会を作り出します。
これが、コミュニケーションロスや仕様ミスの減少、ひいては生産立ち上げのスムーズ化に直結します。
暗黙知を形式知化し、“見える化”を進める
昭和型の現場には、「ベテランしか知らないノウハウ」や「なんとなくのお作法」が往々にして存在します。
これを放置せず、「チェックリスト」「作業マニュアル」「生産管理シート」などへドキュメント化し、バイヤーとサプライヤー双方がいつでも参照できるようにします。
最近では、クラウド型のサプライチェーンマネジメントツールや、TeamsやSlackを使った情報共有も有効です。
地道でも、こうした手段が蓄積することで「担当変更時もブレない生産体制」が築けるのです。
連携強化のポイント2:生産現場を“見に行く”・“見せる”
現場巡回と現物確認の重要性
OEMバイヤーとして第二~三者的に現場を「机上理解」で済ませてしまうのは大きなリスクです。
サプライヤーの工場へ“定期的に足を運ぶ”ことで、現場の人材構成、生産設備の稼働状況、在庫や安全管理の実情を把握できます。
私の経験では、この「現場に行って、現場の人と話すこと」が仕様不良や納期遅れの未然防止につながります。
一方、サプライヤー側も「自社の生産ラインを堂々と“見せられる体制”」を目指すべきです。
見学に合わせて5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)や3現主義(現場・現物・現実)の徹底を進めることで、“見せられる工場”が“選ばれる工場”になります。
“現場が語るリアル”を双方でレポート化
現場見学では「気付き」を双方でレポート化し、今後の改善やリスクアセスメントに生かします。
バイヤー側は「この作業はこういうリードタイムがかかるのか」「こういう安全ポイントがあるのか」といった視点でレポートを作成。
サプライヤー側も「今回の見学で分かった投入原材料の課題」「工程ボトルネック」が把握できれば、その後の会議やKPI設定もズレにくくなります。
連携強化のポイント3:IT化・自動化への共通理解を持つ
昭和型工程のデジタルシフト
製造現場、とりわけ中小のOEM工場などでは「伝票・手帳・ホワイトボード・FAX」はいまだ現役です。
一方、これでは現代の短納期要求や高度な品質要求、在庫最適化に対応しきれません。
このため、ITツールの利活用が急務です。
例えば
– 生産進捗の“見える化”システム(IoTセンサーやクラウド連携)
– 工程管理ができるMESやERP
– バイヤー-サプライヤー間のデータ共有システム
– 不適合品管理やトレーサビリティ管理のデジタル化
導入にあたっては、バイヤーとサプライヤーで共通言語を持ち、「双方が投資の妥当性・メリットを共有」することが不可欠です。
単に“コスト削減”だけを押し付けても現場は動きません。
自動化・省人化の工場連携ポイント
最近ではロボット導入や自動搬送などの省人化も進んでいますが、「人ありき」の現場ノウハウを継承しつつ、どこを自動化すべきかのディスカッションが肝心です。
人手が不足する工程には自動投入設備を、
検査工程には画像処理やAI自動判定を。
こうした共通理解が、労使/発注先-受託先双方の働き方改革にも直結します。
連携強化のポイント4:“Win-Win”のコスト管理・品質管理体制
“値切り”から“共創”のコスト管理へ
かつてのOEM取引は「バイヤー=強者」「サプライヤー=コスト圧力」という構図になりがちでした。
しかし今や、持続可能な供給網を維持するために“Win-Win”の関係づくりが必須です。
そのためには、原価やロットごとのコスト構造をバイヤーも一定レベルで把握・納得し、逆にサプライヤーも「なぜこのコストが発生するのか」を説明可能にしておく必要があります。
双方で“コスト低減ワーキンググループ”を立ち上げ、VE(Value Engineering)やIE(生産技術改善)のディスカッションを継続的に行うことが、“工場連携”を真に進化させる鍵です。
品質は“現場お任せ”から“相互責任”へ
品質管理も同様です。
バイヤーは「納品さえ良ければ良い」ではなく、材料から工程全般、出荷検査まで本質的な品質“保証”体制を共に構築する姿勢が重要です。
一方、サプライヤーも「検査すり抜け」や「不良率操作」など短期的な誤魔化しは通用しません。
双方でQC(品質管理)サークルやFMEA(故障モード影響解析)の取り組みも含めた“実践的PDCA”が求められます。
今後の業界動向:サステナビリティ・リスク分散時代の連携戦略
脱炭素・サステナビリティ対応でも工場連携が重要
最近の業界トレンドとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営やカーボンニュートラル目標への対応も求められています。
– 省エネ設備導入
– 廃棄物削減
– トレーサビリティ強化
こうしたテーマは、バイヤーとサプライヤーが“連携して取り組む”ことで初めて達成可能となります。
サステナビリティ対応を巡っても「現場からの現実的アイデア」を集め、工程ごとのCO2発生量可視化や、副産物/廃材の再資源化プロジェクトを協働推進するのが今後の主流です。
リスク分散とサプライヤー現場の多能工化
ウクライナ紛争やパンデミック、半導体不足など、いつ何時グローバルサプライチェーンが断絶するか分かりません。
このため、複数のサプライヤーや、1工場内の多能工化による生産リスク分散も重視されています。
現場主導のクロストレーニング、他部署・他品種対応の柔軟なオペレーション体制が、OEM商流の中核戦略となります。
まとめ:OEM生産体制強化に向けて、現場を主役に“共創する意識”を
OEM商品の生産体制を強化する最大のカギは、「現場主義」「双方向対話」「デジタル活用」「Win-Winのパートナーシップ」にあります。
昭和流の“こなれた現場”に頼るだけでは、これからの激動する業界環境では対応できません。
これからバイヤーを目指す方、すでに現場で活躍されている皆様、サプライヤーとしてバイヤーの考えを知りたい方々には、現場目線のラテラルな発想で「共創連携」に一歩踏み出すことを強くおすすめします。
生産現場は、今もこれからも「ものづくりの価値共創の出発点」です。
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