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金属製フレームや家具脚をデザイン商品に昇華させるための構造解析と試験法

目次
はじめに:金属製フレーム・家具脚の新たな時代
近年、インテリアや家具の分野において「デザイン性」と「機能性」を両立させた金属製フレームや脚部が注目を集めています。
かつては単なるパーツとして脇役扱いされていたこれらの部材も、時代の流れとともに、主役級の商品価値を持つようになりました。
しかし、華やかなデザインに目を奪われてばかりはいられません。
美しいフォルムを持つ金属製部材には、必ず「構造機能」としての堅牢性・安全性の裏打ちが求められます。
見た目の美しさと、現場で培われてきた品質・安全基準との両立。
この二兎を追い、「デザイン商品」に昇華させるには、徹底した構造解析と、現実的な各種試験が不可欠です。
この記事では、昭和から続くアナログな現場でこそ生きる知見を交えつつ、金属製フレームや家具脚の“本質的な価値”を生み出すための設計手法や試験方法について、実務目線から深く解説します。
なぜ“構造解析”がデザイン商品の価値を決めるのか
現場でよくある「想定外の破損」から学ぶ
一見、十分に頑丈そうな金属フレームや家具脚でも、実際の使用環境や負荷状況で“想定外”のトラブルが起こることは多々あります。
私が工場長を務めていた時代、設計図面やカタログ値どおりなのに、現場で予期しない変形や折損、塗装割れなどが生じた経験は数知れません。
これは「安全率」を余裕をもって設計しても、設計側と実際の使われ方(バイヤーやエンドユーザーの現場)が一致しないことが理由です。
また、デザイン寄りの商品開発では、『強さ<美しさ』となってしまい、部分的な応力集中や溶接痕からのクラック発生など、リスクが増大しやすい傾向も見られます。
だからこそ、設計段階に構造解析(シミュレーション)を徹底し、企画意図や意匠性と、実務に即した“強度”や“耐久性”をバランスよく両立しなければなりません。
構造解析で何を見るのか?-FEMを活用した現場視点の解析
構造解析=CAE(Computer Aided Engineering)、なかでもFEM(有限要素法)は、現在の設計現場に不可欠なツールです。
家具脚やフレーム構造体においては、以下の視点でFEMを活用します。
– 静的荷重解析:人が腰掛ける・物を載せる時のたわみや応力分布
– 動的荷重解析:突発的な衝撃や振動への耐性
– 疲労解析:微細な繰り返し荷重によるクラック・永久変形の予測
– 構造最適化:美しさを損なわず、最小限の材料で最大の強度を確保
このとき重要なのは「現場での使われ方」情報の組み込みです。
バイヤーやユーザーの具体的な使い方—たとえば「不意に体重をかけて斜めに立ち上がる」動作や、工場や飲食店での過酷な環境—を適切な初期条件・境界条件として設定します。
製造現場で役立つ主な試験法
華やかな解析の世界から、泥臭い試験の現場へ。
アナログな現場こそ、「ものづくりの事実」が顕れます。
ここでは標準化された公的試験と、実際のバイヤー・現場で有効な「独自カスタマイズ試験」について説明します。
標準的な強度・耐久性試験
1. 静的荷重試験
JIS S 1021やEN 12520などの規格にもとづき、規定荷重を一定時間かけて変形・破壊・残留変形の有無を確認します。
金属脚やフレームでは、座部、脚部への集中荷重、横方向のねじれなどを検証します。
2. 疲労試験(反復荷重試験)
10,000回~100,000回単位で座ったり立ち上がったりする動作を再現し、溶接部や接合部、ねじ締結部の緩みや割れの発生を確認します。
3. 落下衝撃試験
日本市場では比較的軽視されがちですが、欧米基準では高さ一定から重りを落下させての脚部破損や、ガタつき増大の有無も重要視されます。
現場ニーズで重要視される独自試験
1. 擦り傷・塗装剝離耐性試験
飲食店・公共施設の実態では、アルミやステンレス、鋼製品の表面塗装・研磨の品質が重視されます。
例えば「氷をこぼしてすぐ拭き取れない」「台車がぶつかる」など、設計段階では考慮しきれない傷や腐食に、現場独自の摩耗・サビ試験を実施する必要があります。
2. 不規則な荷重の加え方試験
人は必ずしも正規の場所に座るわけではありません。
脚の端やフレームの際に偏った荷重がかかるシチュエーションを現場ヒアリングから抽出し、実際に「ずらし荷重」「片端落下」を繰り返す試験を行います。
アナログ現場×最新技術の融合=価値向上のカギ
職人技とデジタル解析のギャップを埋める
昭和から続く現場には、溶接の巧みさや曲げ加工一つひとつに「勘」と「こだわり」が宿っています。
一方で、設計サイドは解析技術や数値データに重きを置く傾向も強まっています。
しかし、この2つを分断しては絶対に良い商品は生まれません。
現場の職人が「この曲げ半径だと割れやすい」「この溶接だと熱歪でガタつく」と感じているものを、設計段階のFEMモデルにフィードバックし、解析と実際の加工ニュアンスをすり合わせていくことが、真の“デザイン商品”開発の極意です。
バイヤーの視点:機能性・価格の最適化は必須課題
サプライヤー側だけでなく、バイヤーの立場からも製品品質の担保、コスト競争力の確保は大きなテーマです。
現場で強度や意匠性に過剰なスペックを盛りすぎると、販売価格が高騰し、市場競争力が損なわれます。
バイヤーは、
「どこまで削減できるか」
「重要な品質だけは絶対確保する」
「市場で売れるデザインやサイズ感に仕上げる」
という観点で、サプライヤー側と密に情報共有しながら構造解析や強度試験データにも納得性を求めます。
だからこそ、
– コストダウン=材料選定、工程削減、歩留まり向上
– 必要十分な強度・耐久性=独自試験の継続的実施・公開
– 消費者視点での美しさ・安全性=フィールドテストの重視
これらを掛け合わせた努力が、バイヤーにもユーザーにも“価値ある製品”と認められるのです。
まとめ:製品価値の未来を切り開く現場の知恵
デザイン性に飛んだ金属フレームや家具脚を、顧客・市場に“真の価値”が伝わる商品に昇華させるには、「構造解析」と「現場試験」双方の知見が欠かせません。
最新のFEM技術を使いこなす一方で、製造現場のアナログな試行錯誤・改善の積み重ねこそが、不測のトラブルや市場クレームを最小限に抑える最後の防波堤となります。
サプライヤーの皆さんは、バイヤーやエンドユーザーの“本音”の使われ方や現場ニーズを丹念に吸い上げ、設計段階から現場目線を投入してください。
バイヤーや現場設計者は、サプライヤーの現場力を信頼しつつ、厳しくも実務的な要求で品質とコストの両面から「最適解」を共につくりあげていきましょう。
ものづくりの世界は、デジタル化とアナログ力の融合による新しい地平線を迎えています。
皆さんの“知恵と行動”が、次世代の「価値あるデザイン商品」を生み出す原動力になると、私は心から信じています。
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