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日本の木工技術を使った組み立て式家具ブランドを立ち上げるための構造設計

目次
はじめに:日本の木工技術と組み立て式家具の融合
日本のものづくりには、世界に誇れる伝統技術があります。
その中でも、釘や金具を使わないで木を組み合わせる「木組み」の技法は、千年以上前から受け継がれてきた日本独自の技術です。
近年では、その木工技術を活かした組み立て式家具への注目が高まっています。
この記事では、日本の木工技術を使った組み立て式家具ブランドを立ち上げるために必要となる構造設計の考え方や、現場目線での成功のポイントを解説します。
組み立て式家具市場と日本独自の差別化ポイント
組み立て式家具といえば、IKEAに代表されるような海外ブランドの印象が強いかもしれません。
しかし、日本市場には「丈夫で長持ち」「職人技が光る」など独自の強みを発揮できる余地が多く残っています。
日本の木工技術には、ホゾ組(ほぞぐみ)、アリ組、蟻継ぎ(ありつぎ)など高度な継手技術があり、これを現代風にデザインへ落とし込むことで、他社には真似できない唯一無二の家具が生み出せます。
消費者が組み立てやすく、かつ構造強度も備えた設計が実現できれば、日本独自のブランド価値を高めることができます。
現状の組み立て式家具への不満点
組み立て式家具の課題には、下記のような点があります。
・組み立て時に手間がかかる
・強度や耐久性に不安がある
・繰返しの分解組立で破損する
・デザインが画一的で部屋になじみにくい
これらを克服していくために、日本古来の木工技術による伝統的な美しさと機能性を融合させることが重要です。
現場目線で考える「木工×組み立て式家具」構造設計のポイント
製造の現場、特に生産管理や品質管理の立場から見て、設計段階で押さえるべき点には明確な優先順位があります。
1. ハンドリング性と組み立てやすさ
まず最も重要なのは、製品を購入した消費者が「楽しく」「安心して」組み立てられる構造かどうかです。
木工の技法を家具に応用する際は、工具不要のジョイント構造(例:差し込み式のホゾ、スライド式のアリ組)を取り入れることがポイントになります。
製品ごとに詳細な組み立てマニュアルや、映像によるサポートも重要です。
昭和からのアナログな職人スキルを、現代のユーザーにどうわかりやすく伝えるかは、ブランド立ち上げにおいて非常に大きな課題の一つです。
2. 精度と互換性への配慮
精度の高い切削加工と品質管理によって、部品同士がぴたりと合う設計が必要です。
木材は個体差が大きいため、CNCルーターやレーザーカッターなどデジタルファブリケーションの導入を積極的に検討しましょう。
また、複数回の分解・再組立が可能なように、負荷のかかる接合部には補強を加える。
木ダボやスリット嵌合を活用し、構造と美しさを両立させます。
別売り拡張パーツなどを展開する場合には、シリーズ共通のジョイント規格を設けることで部品互換性が向上し、ブランドとしての世界観が強まります。
3. 強度設計と長期使用への配慮
見落としがちなのが、木材の経年変化です。
木は呼吸し、湿気や乾燥で寸法変化します。
最悪の場合はジョイントの緩みや割れに繋がります。
そこで、例えば
・ホゾ組み合わせ部にわずかな「遊び」を持たせつつ強度を保つ形状にする
・負荷の大きい場所には異なる木種や複合材を適用する
・接触部にシリコンリングなど現代素材をワンポイントで加える
などの工夫が必要です。
品質管理面では、構造部材ごとにマスターサンプルを設定し、公差管理を徹底しましょう。
4. 梱包効率と物流コスト最適化
組み立て式家具の最大の利点の一つが「省スペース梱包」にあります。
しかし、伝統工法ベースの特殊な形状部材は、梱包効率が下がる場合があります。
そこで、各パーツがフラットになるような板材ベースの設計を心がけつつ、高級感・重厚感が求められる場合は部分的に厚みのある部材構成に挑戦するなど、ニーズごとに最適解を模索します。
また、無駄な包装材を削減し、開封時に部材がすぐ取り出しやすい工夫を指示します。
現場での物流改善活動(カイゼン活動)を家具ブランドにも反映させることで、コスト削減と顧客体験の向上が両立します。
具体的な木組み技術の家具構造への応用例
日本の木組み技術には多彩なバリエーションがあります。
それぞれを組み立て式家具にどう落とし込めるのか、幾つか例を紹介します。
ホゾ組
日本建築の基本ともいえる技術です。
突起(ホゾ)を凹部(ホゾ穴)に差し込んで組む方法で、分解組立が容易なうえ、力のかかる方向での強度も確保できます。
面取りとバリ取りを徹底すれば、素手でも安全に組立て可能です。
蟻継(ありつぎ)
部材同士を斜めに嵌合させ、上下・左右いずれの方向にも抜けにくいのが特徴です。
これにより、工具や接着剤なしでも強固に固定でき、繰返しの分解にも耐えます。
高級感を演出するとともに、最小限の材料で済むためエコ資源設計にも寄与します。
伝統と現代の融合:新しいジョイント手法の開発
現代的な家具に求められるデザイン性や、耐久性の高さを叶えるため、伝統技法をベースにしつつ3Dプリンターや金属インサートなど異素材をポイントで使う新しい工法も推進すべきです。
たとえば木×アルミ、木×樹脂のハイブリッドジョイントなど、「和の技」と「最新テクノロジー」を融合することで、世界に発信できる新たなブランド価値を創出できます。
調達・購買観点での材料選定とパートナー戦略
品質と一貫性を確保しつつ、サステナビリティも重視される現代、資材調達はブランドの存続を左右します。
地産地消によるサプライチェーン設計
国産材の利用や、地元の林業・木工工房と連携することで、原材料から最終製品まで一貫した「ストーリー」を持った商品設計が可能です。
このネットワークづくりには地場のサプライヤー発掘が要となります。
定期的なサンプル評価と、協力工場への技術教育にも注力が必要です。
サステナビリティ認証材の活用
FSC認証など環境配慮型素材の導入を推進することで、ブランドイメージ向上とエンドユーザーの安心感につながります。
また梱包材や補助部材にも再生素材を使い、トータルのエコ・クレームレスを目指しましょう。
昭和アナログ現場からの脱却:自動化/DX推進の潮流
日本の木工業界は「職人の勘と熟練」に頼りがちですが、今後はIoTやAIを使った全工程の品質トレーサビリティが必須となります。
デジタル設計データの活用
設計データを3Dモデルで管理し、そのままNC加工、CNC切削機械へ転送できる体制を敷きましょう。
これにより、組立精度のバラつきや、現場ごと違う仕様など「昭和式・属人化」のリスクが大幅に減ります。
工場自動化と品質安定化
主要部材の切断、穴あけ、組立予備加工までは自動化した工程でも十分対応可能です。
ラボ試作〜量産移行までをスムーズに切り替えることで、短納期化や在庫レス化も実現が進みます。
まとめ:世界に通用する日本の組み立て式家具ブランドへ
伝統木工と最先端技術、構造設計と現場改善、ユーザー目線とサステナビリティ、人材育成とDX。
これらをバランスよく掛け合わせることこそ、日本の組み立て式家具ブランドが今後世界市場で勝つための条件です。
ものづくり現場で長年培った知識や経験は、時代が変わっても必ず活かせます。
今こそ「昭和」を越えた新しい工場モデル・ブランドを発信しましょう。
現場で実力を高めたい方、バイヤーを目指す方、自社のポジションを再考したい方それぞれの参考となるよう、実践に根ざした構造設計づくりをおすすめいたします。
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