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“技術の面白さ”と“事業の採算性”の間でもがく開発者の本心

目次
はじめに―現場で感じる「技術の面白さ」と「事業の採算性」のせめぎ合い
製造業に従事している皆さん、あるいは将来バイヤーやサプライヤーとしてものづくりに関わりたいと考えている皆さんへ。
現場で開発担当者やエンジニアたちと日々接する中で、「技術の面白さ」に心を奪われつつも、目の前には厳しくシビアな「事業の採算性」という壁が立ちはだかる現実に、誰しもが直面した経験があるのではないでしょうか。
今回は、私が20年以上の現場経験で何度も見てきた「理想と現実のあいだ」で揺れる開発者の本音や悩み、そして時代遅れと言われるアナログな慣習が依然として根強く残る昭和型製造業の現状について、等身大の視点で深掘りします。
技術者の「面白さ」に賭ける情熱
技術の進歩は“好奇心”と“創造力”から生まれる
現場の開発者は、新しい技術やアイデアを試したいという情熱を常に持っています。
「こんな技術が実現できたら、現場の効率が跳ね上がるはずだ」
「世界初の仕組みを社内で生み出したい」
こういったときめきが、最初の一歩となります。
現場で話を聞くと、彼らは単に指示通りに図面を引いたり試作品を作っているわけではありません。
現状の不便や無駄を見つけ、「どうすればこれはもっと良くなるか」「他業界の技術を応用できないか」など、未知のチャレンジを心から楽しんでいるのです。
「カイゼン」と「現状維持」の鬩ぎ合い
アナログ色が強い現場でも、「カイゼン(改善)」のキーワードは今なお燦然と輝いています。
いわゆるQCストーリーや5S活動は、その典型例です。
この「小さな”進化”」が積もり積もって、社内に成功体験を生み、その後の大きなチャレンジに繋がる土壌を作っています。
一方、「これまで通りが一番」「しくじりたくないから新しいことはやめておこう」という声も根強いです。
ここでカイゼンをやめてしまえば、思考停止やマンネリ化、さらには競争力低下へまっしぐらです。
現場に立ちはだかる「事業の採算性」
ものづくり現場に求められる“収益”のリアル
新しい技術が生まれても、それが必ずしも事業の収益に直結するとは限りません。
「それ、本当に儲かるの?」という問いは、経営層や事業責任者から幾度となく投げかけられます。
採算性をシビアに見極めることができなければ、趣味・道楽の領域に留まってしまいます。
製品原価、開発工数、人件費、外注コスト、さらには市場の受容性や量産のしやすさまで。
ある意味では、技術革新の夢を実現する上で「数字に基づく冷静な判断」が開発者にも求められるのです。
バイヤー・購買の立場で「技術」と「コスト」をどう見極めるか
バイヤーや購買担当は、開発現場の熱い思いと経営的視点の間に立つ調整役です。
新技術の導入によって生まれるメリットと、それに見合うコスト&リスク――。
これらを多角的に分析し、必要であれば「あえてNOと言う勇気」も求められます。
この姿勢が、現場の暴走(リソースの無駄遣いや納期遅延、利益圧縮)を食い止め、最終的に事業の柱となる技術や製品を生み出す「筋肉質な開発」を育てるのです。
なぜ日本の製造業は「昭和のやり方」にこだわるのか
現場主義の良さと限界
日本の製造業は、長年にわたり「現場主義」を貫いてきました。
全員で品質を守り、異常があれば即時止めて対応する“現場力”は、日本独自の文化とも言えます。
これは、総じて「安定した品質」と「信頼感」をお客様に保証する原動力となっています。
一方、デジタル変革(DX)やAI・IoT活用など、グローバル基準での進化が求められる今、古い手法に固執したままだとすぐさまレッドオーシャンに埋もれてしまいます。
「紙の伝票」「電話・FAXでの受発注」「Excel台帳に頼る進捗管理」などは、さまざまな非効率を生み、事業のスピード感や競争力低下の元凶です。
アナログ業界に息づく「職人芸」と「教育」の課題
熟練工が一人前になるまで20年、といった職人技に支えられているのも、昭和型製造業の特徴です。
しかし属人的な技術伝承や教育の負担、ベテランの退職による技術消失のリスクは、もはや深刻です。
「AIやDXでそこを埋められるのか?」というと、現場ごとに千差万別。
むしろ新人や若手にとっては、「何が事業に残る本質的な“技術”なのか」という判断眼を養う上で、職人の目線やこだわりの意味を知ることはとても重要です。
“開発者の本心”はどこにあるのか?
理想を手放さず、現実も受け入れる「折衷」の知恵
現場でよく聞くのが、「好きなようにやらせてほしい」というエンジニアの声と、「まず採算ラインを守ってほしい」というマネジメント層の圧力です。
その狭間でもがく中で見いだせるのは、“理想と現実をバランスさせる知恵”です。
例えば、少人数で素早く失敗し、課題を早期に顕在化させて修正していく“アジャイル型開発”や、“フロントローディング”による初期段階での徹底した要件詰めなどは、技術者の熱意と経営要求の両立を図るための挑戦の一つです。
現場リーダー・管理職の苦悩
かつて私が工場長を務めていたころ、現場から持ち込まれる革新的なアイデアに「やりたいことは分かるが、”事業”として成立させねば社のためにも本人のためにもならない」と悩む場面が幾度もありました。
口うるさくルールや手順を守らせるだけでは、若手が育ちません。
むしろ「意義」「裁量」を認めつつ、PDCAの中で“失敗のコスト”を組織全体でコントロールする知恵を授けることも、現場リーダーの大事な役割だと思っています。
これからの時代に求められる現場目線の開発力
現場と経営の“対話”が新たな地平を拓く
技術者、バイヤー、製造現場、経営陣、それぞれの立場が思いをぶつけ合うことでしか拓けない未来があります。
デジタル化やグローバル標準への適応も、現場が現実を見つめ、経営が現場目線に降り、「失敗コスト」を容認し合い、少しずつでも新たな成功体験を重ねていくことこそ、今後の“強いものづくり”へのカギになるのです。
アナログな業界こそ、DX・新技術のチャンス
DXや新しい技術は、コンサル企業やITベンチャーだけのものではありません。
むしろ、「紙とハンコ」「属人化」に悩む昭和型の現場こそ、ちょっとしたITツールやIoT、データの見える化だけで、圧倒的な業務効率化と明確なコストダウンを実感できます。
新しいことへの“最初の一歩”は勇気がいりますが、「まずはやってみる→学びを速く回す→事業化する」という現場目線のPDCAこそ、技術と事業を両立するカギです。
まとめ―「技術の夢」を「事業の現実」と結びつけるには
技術の面白さに心躍らせながら、事業の採算性という現実に立ち向かう――。
この「狭間」で悩み、もがくのは、日本の製造業すべての現場に共通した本音です。
大切なのは、理想への挑戦心を忘れず、一方で数字や現場の声にも真摯に向き合うこと。
そして部門の壁を超え、現場・開発・バイヤー・経営層が“対話”を積み重ねていくことです。
アナログな業界の良さも活かしつつ、新しい知恵や技術を柔軟に吸収し続ける姿勢こそが、これからの製造業には求められています。
今この瞬間も日本のどこかの現場で努力している開発者、バイヤー、サプライヤーの皆さんが、少しでも新たな気づきやヒントを得られれば幸いです。
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