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設備更新の予算が降りず老朽機をだましだまし使う苦しい本音

目次
はじめに:設備の老朽化問題はなぜ生まれるのか
製造業の現場には、「この機械、そろそろ限界だけど設備予算が下りない」「買い替えたいが稟議が通らない」という悩みが渦巻いています。
昭和から受け継がれる熟練工の勘や、昨今叫ばれるデジタル化・自動化の波とは裏腹に、予算や経営判断、工場の風土に阻まれ、老朽設備と“うまく付き合う”ことが現場の日常となっているのが現実です。
本記事では、20年以上製造業の現場に身を置き、調達購買や生産、品質管理、工場長などの役職を経験した筆者が、「老朽機とだましだまし付き合う苦しみ」「そこから見える業界の実態」「現場目線で見た最善の対応策」まで深掘りしていきます。
設備投資に踏み切れない理由:その裏側
減価償却を終えた設備が“無償”という幻想
多くの古い設備は、会計上すでに減価償却を終えています。帳簿上ではコスト0円で生産しているように見えます。
ところが実際には、メンテナンスの手間や調達できなくなった部品、突発トラブルによる生産停止など、目に見えない“隠れコスト”がかかっています。
経理や経営層はこの幻想にとらわれやすく、「壊れて動かなくなるまで使え」「まだ使える設備を捨てるのはもったいない」と判断しがちです。
設備投資予算は真っ先に後回しになる現実
設備導入に積極的な企業も少数派です。
中小企業はもちろん、規模の大きいメーカーでも、業績不振や人件費高騰、原材料費の高騰など「目の前の課題」が優先され、設備投資はどうしても先送りされがちです。
「毎年ちょっとずつ修理費を積み増しているだけで、気づけば設備更新が10年以上進まない」現場は全国津々浦々に存在します。
現場と経営層の意識ギャップ
現場は「効率化や品質向上は新しい設備がなければ…」と考える一方、経営層は「既存の設備を使い尽くすことが経済合理性に適う」と考えます。
このギャップが、設備更新の遅れ、老朽設備のだましだまし運用を常態化させる最大要因です。
だましだまし運用の実態、現場の本音
補修部品がない、修理業者もいない
平成一桁〜二桁時代に導入した設備の多くは、部品供給が既に終了しています。
メーカー純正の補修部品がなく、町工場の知恵と技術力でヤミ改造や代替品流用が当たり前。
「町のおっちゃんが廃業したら、もう修理できなくて困る」「同じ部品を中古市場で探してはストックしている」など、現場は“サバイバル”状態です。
ダウンタイムのリスク管理、現場のストレス
老朽機器は予測不能な故障が多発します。
復旧までのダウンタイムが計画生産全体に波及し、納期遅延や不良率増加、コストUPを招きます。
設備トラブルが起きるたびに、現場担当者は「いつ壊れるかわからない」という緊張感を強いられます。
「ベテランが急場をしのげているうちは良いが、若手に引き継げない」という技術継承の問題も深刻です。
「最新設備導入で一発逆転」は幻想か?
新設備=すべての問題解決、とは限りません。
導入すれば操作方法の習得や、生産プロセスや品質基準の再設定など、新たな混乱も招きます。
しかし、一歩踏み出さずには現場は省力化も競争力強化もできない——このジレンマが現場の本音です。
アナログ文化が根強く残る理由
“職人の勘”に頼る工程の多さ
特に中小メーカーや歴史のある現場では、“職人の勘”が品質を支えてきました。
マニュアルや標準化が進んでいない現場では、老朽機でも「使い慣れたこれじゃないと品質が安定しない」という心理も働きます。
実績重視の風土が、最新機器やデジタル化への抵抗感を生み、結果としてアナログな運用に依存し続けています。
“見かけコスト削減”の落とし穴
現場の努力によって目先のコストは削減できても、結局はトラブル増、慢性的な非効率、ヒューマンエラー増大リスクなどが蓄積します。
真のコスト削減や現場の疲弊回避のためには、経営層や調達部門からの正しい問題認識が不可欠です。
調達購買・バイヤー視点での“設備更新の壁”
投資対効果算出の難しさ
数値でメリット・デメリットを示しても、想定外のトラブル発生や、既存工程との“非互換”、十分な教育移行期間など、「見積もれないリスク」がつきまとうのが現実です。
また、現場の非公式な工夫や“無形資産(ノウハウ)”が多い場合、机上のROI(投資利益率)が説得力を持ちません。
サプライヤーから見ると「理解不能な現場事情」
サプライヤー側から見ると「なぜあんなに古い機器を使い続けているのか」「なぜ提案を受け入れてくれないのか」と戸惑うことも多いです。
本当の課題は、現場で発生している「トラブル・困りごと・心理的な障壁」であり、そこを経営層やバイヤーがリアルに掴んでいない限り、サプライヤー提案も現場にフィットしません。
突破口となる実践的なアプローチ
“小さな改善”の積み重ねを価値として評価する
大掛かりな設備投資だけが正解ではありません。
「100万円の現場改良で年間500万円のロス削減」という実例は多々あります。
現場の創意工夫をサプライヤー・バイヤーが一緒に共有し、部分的改善案を繰り返すことが、最終的には設備更新の大義名分となるケースもあります。
サプライヤーと現場、バイヤーの三位一体
本当に現場目線でのベストソリューションは、現場→バイヤー→サプライヤーという“一方通行”では生まれません。
三者が課題意識・目的の共有をはかり、実地テストやトライ&エラーを繰り返すことで、最小コスト・最大効果の更新案を導き出すことが可能です。
また、現場の「こうしたい」というアイディアをサプライヤーへ積極的にフィードバックすることも、持続的な成長に不可欠です。
「できることから始める」を恐れずに
完璧な設備更新プランだけに固執するのではなく、例えばIoTセンサーによる予防保全、PLCの小規模改修など、「できることから着実に」始めることが、現場の心理的負荷低減や、経営層への説得力ある実績となります。
まとめ:現場の苦しみを、業界全体の進化へ
設備更新の予算が下りず、老朽機をだましだまし使い続ける——それは製造業の現場にとって、決して珍しいことではありません。
しかし、現場の知恵と工夫、現実的なアプローチで“今できること”を積み重ねることで、小さな変革が大きな成果につながるのは間違いありません。
サプライヤー・バイヤーそれぞれが「現場の声となぜ設備更新が進まないのか」という苦しみを深く理解し合うこと。
古い設備でしぶとく闘ってきた現場の“本音”も、ぜひ業界の進化と革新の糧にしていきましょう。
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