- お役立ち記事
- 研究要素が強すぎて事業化の筋道が見えないテーマの苦悩
研究要素が強すぎて事業化の筋道が見えないテーマの苦悩

目次
はじめに ~研究と事業化、その隔たり~
製造業の現場では、研究開発が持つ可能性に賭けることが度々あります。
しかし、「研究要素が強すぎて事業化の筋道が見えないテーマ」に直面したとき、多くの担当者は重い悩みを抱えます。
リアルな現場は、利益や納期といった現実と直結しています。
研究開発と経営のギャップ、そして昭和から続く業界独自の慣習が、その悩みをさらに深くします。
この記事では、現場の実態や苦労、業界トレンドを交えながら、事業化の新たな道筋を深掘りします。
研究要素が強すぎるテーマとは何か
どこまでが「研究」、どこからが「事業」なのか
まず前提として、研究とは未知への挑戦であり、事業は成果を社会やマーケットへ還元するための活動です。
新素材の開発や次世代製造技術、AI制御などは、初期段階では「研究要素が強い」テーマになりがちです。
バイヤーやサプライヤーも、先端技術の提案が来ればワクワクする半面、「それで本当に商品や利益になるのか?」という冷静な目で見ます。
この境が明確でない分野こそ、製造業界で多く語られる悩みの根源となります。
事業化までの距離感と現場の困りごと
製品開発のサイクルが長い業界ほど、「とりあえず研究」は通用しづらくなっています。
たとえば、製造現場で「次世代IoTセンサーを導入する」と決めても、それが工場のラインに載るまでには法律、品質、安全、コストと無数のハードルがあります。
「研究要素が強すぎる」とは、これらの実課題に答えを持たない状況といえます。
現場では、「優れた理論だけで動かない」「顧客のリアルな困りごとにフィットしない」という声が頻発します。
なぜ、この苦悩が生まれるのか
研究者の熱意と現場のリアリズムのすれ違い
研究部門は往々にして、科学的な興味や世界的潮流に触発されて動きます。
しかし、現場、特に調達・購買、生産管理、品質管理の担当者にとっては、数字と納期、具体的な仕様にこだわった日常があります。
「こんなに良い研究なのに、なぜ現場は評価してくれないんだ?」という研究サイドのフラストレーションと、「ウチの現場で動くの?保証ある?」という現場サイドの警戒心は、相互理解の壁です。
アナログ業界特有の「昭和の常識」との戦い
製造業、とくに伝統ある工場は”カイゼン”や”現物主義”など、昭和から続く現場力を極度に重要視します。
「昔から使っていて問題ない」「熟練者が認めない」といった空気は、新しい研究テーマの導入を殊更に難しくします。
逆に言えば、現場で成果を出せていない研究は「だから言っただろう」と跳ね返されがちです。
これが、研究と事業化の溝を深くしている要因です。
製造業のバイヤー・サプライヤーに起こっていること
グローバルサプライチェーンの中での評価の変化
昨今、サプライヤー評価基準は厳格化し、「実行可能性」「安定供給性」「トレーサビリティ」といった指標が重要視されています。
研究テーマがどんなに画期的でも、調達購買目線では「標準化できるか」「量産に耐えうるか」「顧客クレームに対応できるか」など、事業化の筋道を問われるのです。
バイヤーや調達担当者は、「夢を追う」だけでなく「コストダウン」「リスク低減」という現実の指標で判断します。
サプライヤーがバイヤー視点を学ぶ意味
新しい研究成果を提案するサプライヤーも、バイヤーが現場で重視するリアルさ―「いまの現場でどこまで置き換え可能か」「品質不良時の責任分岐はどうなるのか」といった視点を持つかどうかで、採用可否が決まります。
従来の「良いものを作れば売れる」時代は確実に終焉を迎えつつあります。
サプライヤーは、研究成果そのものだけでなく、「それをどう使ってもらうか」まで計画した時、商談が前進します。
現場目線で乗り越える道筋
「三方良し」の視点でテーマを再定義する
まず、研究・製造・顧客すべての視点でテーマを洗い出しましょう。
「面白さ」で突き進みがちな研究テーマを、「コスト削減に効く」「作業者の安全性がアップする」「納期短縮につながる」と業界課題ごとに再定義します。
チームで疑似バイヤー・サプライヤー・現場担当になりきり、「それで明日、何が変わるのか?」と問い続けることが肝心です。
Pilot-Proof(パイロット・プルーフ)の考え方を持つ
小規模な現場、とくに既存の一部分のみでPoC(概念実証)を行い、現場で「動かす」実感を得ることが、昭和型企業には最も効きます。
机上の研究だけでなく、「現場の作業者が自分で操作できるモデル」をまず作りあげ、そこから改善ポイントを洗い出す。
パイロットの現場成果をもとに説明資料を作成し、経営層の「やってみる価値があるか」感覚を刺激します。
「市場から逆算する」企画力の強化
製造業の研究所や開発部門は、「市場調査は営業の仕事」「MKT(マーケティング)は会社のミッション外」となりやすいですが、事業化の壁を越えるには「市場の声」や「バイヤーの懸念」から逆算する癖をつけることが肝心です。
自社内にバイヤーまたは顧客志向が強い人間を巻き込み、初期段階から協力を仰いでみてください。
事業化につなげる「発想の転換」事例
① 端材廃棄をゼロにした小型装置の発明
ある現場では、「端材問題に挑む新装置研究」がアイデア倒れになりかけていました。
研究のテーマのままでは現場導入に至りませんでしたが、「端材コストを年間〇〇千万円削減。その根拠とは?」まで落とし込むことで、購買担当との連携が進みました。
最終的にパイロット現場で成果を海千山千の現場にも見せ、「これはすごい」と導入が進みました。
② 生産ライン自動化の発想転換
従来の研究テーマ「高度なロボットによる完全自働化」は現場の反発を受け、止まっていました。
しかし、「人とロボットを組み合わせたハイブリッド工程(準自動+熟練支援)」という新たな土俵で再検討。
コアとなる工程のみをカイゼンし、現場の納得感を引き出して成果を実証しました。
こういった「落としどころ作り」が、研究テーマの事業化には不可欠です。
今後の業界トレンドと期待される姿勢
VUCA時代の「挑戦する現場風土」の重要性
前例踏襲が当たり前だった製造業界も、世界的なカーボンニュートラル、サプライチェーン変革の波の中で「柔軟なチャレンジ」が問われています。
「研究要素が強すぎる」ことは悪ではありません。
むしろ、そのチャレンジ精神を「現場の困りごと解決」や「新たな顧客価値の創出」にどう結びつけるか、それを考え抜く現場風土が肝です。
「昭和」×「令和」融合の発想へ
今後は、アナログの良さとデジタル、研究成果と現場価値を高度に融合させる発想が求められます。
使いこなせなければ意味がない。
本当に現場を動かしたいなら、「現場の一員として」「バイヤーやサプライヤーの立場で」何度も現物・現場を体感しなおすこと。
そして、現場・バイヤー目線で語れる言葉を蓄えていくことが、令和時代の製造業リーダーの条件です。
まとめ ~研究と現場をつなぐ「問い直し」のすすめ~
「研究要素が強すぎて事業化の筋道が見えないテーマ」に向き合う苦悩は、どのメーカーでも共通する問題です。
しかし、本記事で触れたとおり、発想の転換や現場主導のパイロット型検証、バイヤー目線の徹底など、突破口は確実に存在します。
昭和時代から続く製造業の知恵と、研究のチャレンジ精神。
双方を繋ぐ架け橋になるために、今日から本気の「問い直し」と「現場起点の再編集」を始めてみませんか。
それが、製造業の未来を切り拓く第一歩となります。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)