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検査の属人化が“判定バラつき”を生む根源要因

目次
はじめに:製造業における「検査」の現場課題
製造業の品質管理において、製品の「検査」は最終ラインを守る重要な砦です。
しかし、その検査業務が個人(属人化)に依存している現場はまだ多く、判定基準のバラつきに悩む企業も少なくありません。
では、なぜ検査が属人化し、判定のバラつきが生まれるのか。
本記事では、現場目線でその根源要因を紐解き、課題解決のための新たな視点を提案します。
属人化とは何か?製造業現場における「人に頼る検査」
属人化の定義と現場の実態
属人化とは、特定の業務や判断が特定の個人に依存している状態を指します。
現場の検査で言えば、ある製品の検査合格・不合格の判定が「AさんならOK」「Bさんだとやや厳しい」といった事象が日常的に起きている状態です。
検査基準が明文化されていても、「長年の勘」や「経験値」で判定されることが多く、微妙な合否ラインの場合、最終的に個人の裁量に頼ってしまう現場は多いでしょう。
なぜ属人化が進むのか
製造業は、長い間現場のベテランが築き上げてきた経験や暗黙知によって支えられてきました。
高度経済成長期の昭和時代、現場作業員が自分の“手触り感覚”で品質を担保してきた歴史があります。
現場では「ベテランAさんの判断は間違いない」という信頼感が根付き、結果として検査が個人の技量や感覚に委ねられやすい土壌ができてしまったのです。
判定バラつきを生む根源要因:標準化の失敗とコミュニケーションの壁
曖昧な基準書、抜け落ちたナレッジ共有
多くの工場には検査基準書や作業マニュアルが存在しますが、それでもバラつきが生まれる理由は、「言語化しきれない」「解釈の余地が大きい」ポイントが多数残っているからです。
たとえば
・「微細な傷」「許容できる変色」など、曖昧な表現
・写真や図解が不十分で、文章だけの説明
・過去クレームや不良事例が都度反映されていない
さらに、属人化が進む現場では「ナレッジ(知見)の見える化」が進んでいないため、ベテランの判断基準が言語化されずに個人の内にとどまってしまいます。
それが新任検査員や他の担当者へ十分共有されないまま現場が回る結果、属人性とバラつきが温存されてしまうのです。
コミュニケーションの形骸化と思い込みによる伝達漏れ
多くの現場では新人教育やOJT(現場研修)は行われます。
しかし、「やって見せる」手法が中心で、感覚的なノウハウが口伝えにとどまりがちです。
また、「これくらい言わなくても伝わるだろう」という思い込みや、担当者ごとの価値観・美意識の違いが、検査結果の解釈に個人差を生み出すのです。
“判定バラつき”がもたらす組織的リスク
品質クレーム・手戻りコストの増加
検査になんとなくバラつきがあっても、すぐに大問題には見えないかもしれません。
しかし、その小さな許容がいずれ
・市場での品質クレーム
・出荷後の手戻りコスト
・企業ブランドの毀損
に直結するリスクを孕んでいます。
サプライヤーの立ち位置から見れば、バイヤーの品質要求を正しく理解し、自社検査員間の判定統一ができなければ継続案件の受注は難しくなります。
逆にバイヤー側は、属人化による判定ばらつきのリスクを正確に見抜いて、サプライヤーマネジメントに反映する意識が問われます。
「検査依存症」が生産現場全体の弱体化を招く
検査工数を増やせば不良流出は減りますが、現場本来の目的は「検査で守る」ではなく「不良を出さない工程づくり」です。
属人化した検査は、検査員への過剰な負担だけでなく、製造過程そのものの品質改善に目を向ける機会を奪いかねません。
過渡な検査依存は、かえって現場の本質力を弱める大きなリスクになるのです。
昭和的“勘・コツ型”から脱却するためのキードライバー
検査基準の「言語化」+「可視化」の徹底
判定ばらつきの最大要因は“解釈の余地”です。
属人化からの脱却には、経験談や勘の世界を「誰でも理解できる客観的基準」に落とし込む必要があります。
・合否例・NG例の写真データベース化
・メジャーや色見本など、物理的な許容値の明示
・過去事例のナレッジブック作成と活用
こうした「見える化」とセットで、定期的な基準見直しや検証会議の場を設けることも重要です。
バイヤー視点でいえば、サプライヤーがどこまで具体的な基準運用ができているか、現場監査の際にしっかり確認することを推奨します。
デジタル活用による属人性の解消
工場の自動化・見える化ソリューションは日進月歩です。
画像認識AIや異常検知センサーによる検査自動化が進めば、人の主観による誤差やバラつきを構造的に減らすことができます。
また、検査結果のリアルタイム共有や、データ蓄積と傾向分析により、工程起点での改善サイクルが回しやすくなります。
ただし、全自動化が難しい製品・工程も依然多い現実も忘れてはいけません。
重要なのは、「人とデジタル」の融合による最適な属人性排除です。
現場改善を促す“ラテラルシンキング”のすすめ
従来の固定観念から脱却する思考法
日本の製造業は、長年現場の「常識」「慣習」に支配されてきました。
しかし、世界がますます多様化・デジタル化する中、判定ばらつきなどの課題解決には、ラテラルシンキング(水平思考)が欠かせません。
例えば
・一度すべての検査基準を「ゼロベース」で見直すワークショップを開く
・異業種のプロを招き、視点を変えて現場を観察する
・「なぜこの検査が属人的になりやすいのか」を現場全員で徹底討論する
こうした水平発想の導入が、従来の枠を超えた新たな地平線を拓くきっかけとなります。
サプライヤー・バイヤー間の対話による底上げ
属人化問題はサプライヤーの課題、バイヤーの要求という二項対立では解決しません。
むしろ「どちらも自社の現場を棚卸し、課題を率直に共有し合う」ことが品質を底上げする最大の武器です。
例えば
・判定ばらつき事例を合同検証し、互いの落とし穴を素直に出し合う
・品質保証部門と調達部門の合同勉強会
・中長期で共通仕様・標準化プロジェクトを構築する
属人性に目を背けず、相互理解を持って連携し合うことこそ、製造業全体の底力アップにつながります。
まとめ:今こそ現場は属人化から「進化」せよ
検査の属人化による判定ばらつきは、昭和型製造業が長年温存してきた“勘と経験”の遺産です。
ですが、それが今、世界基準の品質やデジタル時代の競争力確保を妨げる壁となりつつあります。
まずは
・検査基準の徹底的な見える化・言語化
・AIや登録データのIT活用による属人化排除
・バイヤー・サプライヤー相互の透明なコミュニケーション
・ラテラルシンキングによる現場課題への新視点
これらの積極的な導入が、属人的検査からの脱却、判定バラつきの根絶、さらには製造業の真の競争力強化への鍵となります。
製造業現場で働くすべての方へ。
いま一度、“バラつきの根源”を問い直し、個人頼みからチーム力、そしてデジタル融合へ――。
ぜひ新たな一歩を踏み出してください。