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補助金申請が目的化して本来の業務改善に繋がらなかったケース

目次
はじめに:補助金申請と業務改善の乖離が起こる理由
製造業界において、補助金は設備投資やデジタル化、人材育成、多様な事業改革の強力な推進剤となっています。
しかし近年、現場からは「補助金の獲得自体が目的化し、本来狙うべき業務改善に繋がっていない」という声も少なくありません。
この現象は、昭和から続くアナログ気質と、国策のデジタル推進・生産性向上トレンドが複雑に絡み合った結果ともいえます。
本記事では、補助金申請が目的化してしまった失敗やその背景、真に意味ある業務改善のポイントについて、現場目線で深く掘り下げていきます。
よくある補助金申請の失敗ケース
設備導入だけが目的となってしまう
多くの中堅・中小メーカーでは、補助金申請にあたって「スペックの高い新しい機械」や「IoTツール」を導入することが最重視される傾向にあります。
しかし、現場の課題が明確になっていないまま設備だけを導入し、肝心な“なぜ導入するのか”“何を改善するのか”が不明確なまま終わっていることが珍しくありません。
結果として、高額な設備が稼働率の低いまま、現場の片隅で埃をかぶってしまうケースもあります。
現場の実情や課題と乖離した申請内容
申請書類の作成を外部のコンサルタントや行政書士に丸投げすると、「補助金で評価されやすいキーワードや計画」を優先するあまり、現場実情と乖離した内容になることがあります。
例えば、工場では現状紙伝票の山に追われているのに「AI・IoTを活用したスマートファクトリー化」といった形式的な計画になり、最終的には現場に根付かず形骸化してしまいます。
現場メンバーの納得と巻き込みが不足する
「補助金で設備を入れたからよろしく」と現場へ丸投げになりがちです。
現場メンバーがなぜそれをやるのか分からず、オペレーションやルールの変更に抵抗感を持ち、活用が進まないまま放置されやすいのです。
特に昭和的な「根性論」や「経験重視」が主流の職場では、IT活用など新しい変革には懐疑的な空気が根強く残っています。
なぜ「目的化」してしまうのか――深掘り分析
補助金事業の設計と現場の温度差
国や自治体の補助金施策は、「生産性向上」「デジタル化」「人材強化」など時代の要請を反映したテーマが多く、将来の事業環境変化への対応手段として不可欠です。
一方で、現場は「日々の納期」「コストダウン指示」「人手不足」といった今この瞬間の課題対応が優先される現実世界です。
このギャップが、どうしても「申請用の体裁作り」と「現場のリアル」へと分断を生み、結果的に“補助金のための事業計画”が増殖していきます。
成果指標が“補助金採択”や“設備導入数”になる
「補助金を何件獲得したか」「○○の設備を何台導入したか」といった数字が経営層や担当者の評価軸になる場合、現場で本当に必要な改善活動を見落としやすい構造もあります。
誤ったKPI設定により、形だけの“業務改善”が進んでしまうのです。
リスク回避型マインドの弊害
失敗を恐れて「前例主義」や「横並び主義」が強く働く日本の製造業カルチャーも、補助金申請が目的化しやすい土壌です。
「業界で流行の設備を入れておけば大丈夫」「みんながAIだから…」という同調圧力に流されることが、現場目線では無駄な投資や“変化の空回り”を引き起こします。
現場目線から見た業務改善と補助金導入のあるべき姿
徹底的な現場ヒアリングこそ全ての出発点
業務改善の本質は、現場の「なぜここで止まるのか」「なぜミスが多発するのか」「どのタイミングで無駄が生じているか」の洗い出しから始まります。
単に“せっかくの補助金だから設備を”ではなく、現場の痛点・課題・人の不満・紙文化の非効率などの本音を徹底して掘り起こすことが重要です。
現場の小さな困りごとを積み上げ、そこに必要なテクノロジーや設備をどう当てはめるか――主役はあくまでも「業務改善」です。
目的(改善目標)→手段(設備・投資)の順に思考する
公的補助金は、あくまで「改善活動を後押しする資金」であり目的そのものではありません。
「人手のかかる工程を省力化したい」「納期遅延をゼロにしたい」といった現場ゴールを明確に設定し、そのためにどんな設備・仕組みが必要なのか逆算で考えます。
そしてその活動を補助金の制度目的と合致させて申請するのが理想的なプロセスです。
小さな実践と見える化の積み重ね
補助金を使って一気に大改革――というよりも、小さな改善案を現場メンバー自身が納得・体感できる形で進め、「ちょっと便利になった」「負担が減った」という実感を広げることが肝要です。
難しいIoTならまずは現場の記録をデジタル化する、小さな省人化ならピッキングワゴンを工夫するなど、身近な変化を積み重ねることが最終的な成功に繋がります。
昭和型アナログ業界における成功事例・失敗事例
失敗事例:紙文化のままでのIoTツール導入
ある部品メーカーでは「IoTで工程進捗がリアルタイムに見える」とうたい、工程管理システムを申請・導入しました。
しかし紙の作業指示書やアナログ記録伝票を完全に残したままのため、二重入力や記録忘れが多発し、逆に現場の負担増に。
デジタル化の“肝”である業務フロー再設計・現場教育を軽視したことが要因でした。
成功事例:既存作業に密着した自動化・省力化
一方、別の老舗板金工場では「曲げ作業の段取り替えに時間がかかる」という困りごとを、補助金を活用して自動段取り替え装置を導入。
現場リーダーが主体となり使い勝手や安全対策を徹底的に現場視点で議論、徐々に運用に馴染ませ、今では熟練者の経験値に依存しない生産体制が構築されました。
重要なのは“現場困りごと解決”の起点を持ち続けたことです。
サプライヤーの立場で考える「バイヤーの本音」と補助金活用
サプライヤーが知っておきたいバイヤーの判断軸
サプライヤーとしては、単に「うちの設備は補助金対象ですよ!」とアピールするのではなく、バイヤーが実際にどんな課題解決に悩み、どこに不安や本音があるのかを理解する必要があります。
設備やソリューションの導入が単なる流行ではなく「業務効率向上」「コスト圧縮」と結びつく具体的な提案がバイヤーの信頼獲得に直結します。
現場導入後までのフォロー・体制構築が肝心
導入後現場で本当に定着するまでの教育・サポート体制を示すことが、サプライヤー選定にも大きな影響を与えます。
補助金絡みの案件では「導入支援だけで終わる」「その後は丸投げ」というベンダーも多い中、真に現場改善を成功させるには継続的なフォローの姿勢が欠かせません。
“ハードを売る”のではなく、“現場の改善パートナー”になる視点が重要といえます。
脱・補助金依存の中長期視点で信頼構築を
補助金バブル終焉の波は確実にやってきます。
サプライヤーとしては、一時の補助金需要に頼るのではなく、現場課題→提案→改善定着を粘り強く支援し、中長期での信頼構築を心がけるべき時代です。
まとめ:補助金の“手段化”を徹底して、本質的な現場改善へ
補助金は、決してゴールではなく改善活動や生産性向上の「手段」にすぎません。
「補助金で○○する」が目的になってしまうと、現場が置き去りになり“空回りの投資”になりがちです。
肝心なのは現場の課題・痛点を徹底的に掘り下げ、改善目標→必要設備→補助金活用という順序を守ることです。
サプライヤーもバイヤーも、最終的には「現場ごとの小さな変革」の積み重ねが、大きな成長と競争力強化に繋がります。
製造業の現場が本当に変わるため、補助金の“真の使い道”を見極めて、一歩先の改善カルチャーを築いていきましょう。
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