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い草製品の海外展開に向けた企画・開発における成功戦略

目次
はじめに:い草製品の可能性と課題
い草製品と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
畳をはじめ、和風のインテリア、さらには織物や健康グッズまで。
い草には高い吸湿性や消臭効果、抗菌性といった自然素材ならではの機能があり、日本独自の住文化と深く結びついてきました。
しかし昭和から続くアナログ志向、担い手の高齢化、新規市場の開拓停滞など、い草業界は課題も山積しています。
国内需要の伸び悩みや和室の減少も逆風となる中、近年「海外展開」が新たな活路として注目されています。
では、具体的にい草製品をグローバルに展開するためには、どのような企画・開発戦略が求められるのでしょうか。
本記事では、製造現場目線・バイヤー目線・サプライヤーの立場からそれぞれ実践的なノウハウを示し、昭和的閉塞感から一歩踏み出すヒントを探ります。
海外展開を阻む3つの壁と向き合う
文化的ギャップ:和から世界へ発想を転換する
日本国内で磨かれてきた「い草=畳」のイメージは、海外ユーザーにはそもそも存在しません。
和室文化・床座りの生活スタイルがない国に、どのようにい草の魅力や用途を伝えられるか。
これは視点を変える好機でもあります。
例えば、「サステナブルなナチュラルマテリアル」「涼感や消臭が期待できるオーガニックカーペット」「安眠を誘う香り」といったコンセプトへの切り口が考えられます。
既存の和風製品の枠組みを飛び出し、ラグ、マットレスカバー、ヨガマット、インテリアパネル、さらにはスニーカーやバッグ等の異業種コラボも視野に入ります。
品質規格・認証:グローバル水準で信頼を確立する
日本国内では当たり前でも、海外市場では各国で求められる安全基準やエコ規格が異なります。
欧州ならREACH規制やCEマーク、アメリカならCPSIA、オセアニア・東南アジアにも独自の基準があります。
い草製品ならではのアレルギーや農薬残留、色落ちや摩擦耐性など、国毎の留意点を踏まえた品質管理と書類対応が必須です。
現地バイヤーの信頼を勝ち取るには、グローバル標準の第三者機関による試験・認証の取得が有効です。
また、現場の生産管理・品質保証部門と連携して、トレーサビリティを明示できる仕組みの構築も重要です。
ローカル流通~販路開拓:頼れるパートナーこそ成否を分ける
たとえ良い商品を持っていても、現地の消費者・バイヤー、そして流通網にリーチできなければ普及しません。
現地文化に精通したエージェントや販売代理店、輸入商社との関係構築・パートナーシップ戦略が成否を分けます。
代理店選定の際には、単なる卸売先ではなく、現地での売り場展開・販促ノウハウを持ち、い草のブランド価値を高めて発信できる企業やチームを選ぶことが肝心です。
製品単体ではなく、販売支援ツール、サンプルセット、現地語でのプロモーション素材提供など、トータルでサポートするための企画を用意しましょう。
い草製品の企画・開発に必要な3つの視点
1. 消費者インサイトの深堀り
グローバル市場に向けたい草製品企画で最も重要なのは「消費者の声」を徹底的に吸い上げる取組みです。
国や地域ごとの生活習慣・気候・インテリア志向・価格感度を調査し、既存の「い草体験」と真に融合できる切り口を探ります。
例えば欧州ではエコやサスティナブル志向が強く、畳としてより高級なラグ・インテリア感覚で購入されるケースが増えています。
東南アジアでは湿度管理やダニ対策として実用面が重視されることも多いです。
中国や台湾では”和のブランドイメージ”が支持を受けやすくギフト需要も期待できます。
オンライン・オフライン問わずアンケート、試験販売、現地店舗でのヒアリングを重ね、「買いたくなる理由・使ってみたくなる仕掛け」をデータベース化しましょう。
2. 製品バリエーションとカスタマイズ対応
海外市場では標準化だけでなく、現地バイヤー向けのカスタマイズ(サイズ、カラー、厚み、パッケージ、ネーム入れなど)が商談成立の決め手になる場合がしばしばあります。
また、日本では考えにくいアプリケーション(アウトドア用、ベビー&キッズ用、ペット用など)がヒットにつながることも。
企画部門と現場が密に連携して「試作プロセスの小回りが効く体制」を構築することが成功への近道です。
サンプル出荷や小ロット製造でも柔軟に対応できる生産管理・調達体制を現場レベルで整備し、変化に強い開発力を武器にしましょう。
3. PR・ブランディングと情報発信戦略
海外市場での勝敗を分けるのは「情報の伝え方」にもあります。
なぜい草が優れているのか。
どんな生活を変革するのか。
日本の伝統、美しいストーリー、サステナビリティ、職人技術──これらをデザインに落とし込むこと、現地語SNS・動画などで発信することがブランド価値を高めます。
また、現地展示会やオンラインバイヤーイベント、インフルエンサーとのコラボも積極活用しましょう。
OEM/ODMであっても「日本のい草工房でつくりました」というストーリーを、エンドユーザー向けにも発信できる仕組み作りが重要です。
バイヤー・サプライヤー双方が知るべき商談の勘どころ
バイヤー視点:「契約リスク」「需給安定」「付加価値」に敏感
海外バイヤーは製品の品質や価格だけでなく、納期通りの供給能力(リードタイム短縮、突発対応)、サポート体制、契約書面含めた信頼確立を重視する傾向が強いです。
生産現場から調達、検品、出荷、アフター補修パーツ供給まで全体のプロセスマネジメントができているか――。
この総合力を示すことが取引継続の必須条件となります。
また、数あるナチュラルマテリアルの中から“なぜ日本のい草にこだわるのか”を明確に語れるかどうか。
プレミアム性やオンリーワンの付加価値を、数字やデータを交えて“見える化”して提示しましょう。
サプライヤー視点:「現場改善」「教育」「サステナビリティ」が鍵
サプライヤーとして重要なのは、常に現場レベルでのPDCA(Plan-Do-Check-Action)を強化し、海外顧客のクレームを未然に防ぐ品質管理です。
また、人材育成にも積極的に取り組み、現場スタッフや営業担当がグローバル商談に対応できるノウハウ・語学力・データ管理能力を養成することも不可欠です。
サステナビリティ対応(SDGs、カーボンフットプリント、リサイクル対応など)は欧米市場でマスト要件となりつつあります。
サプライチェーン全体で取り組む姿勢を外部へ発信し、開示レベルや社内基準も日々アップデートしていく必要があります。
最新事例に学ぶい草製品 海外成功の条件
実際の成功事例では、“見えない付加価値”を丁寧に翻訳し売り込む取り組みが高評価を獲得しています。
例えばイタリア向けには「和の癒し空間を演出するオーガニックラグ」として、高価格帯インテリアブランドと協業した例。
アメリカ向けには「呼吸する天然マットレス」として健康・ウェルネス系雑貨業態での展開。
また、台湾・香港では「ギフトボックス入り和風インテリア」として贈答需要を開拓できています。
共通するのは「現地目線から日本のい草の原点に立ち返る」視点、多様なパートナーとの現地共創体制、そして柔軟かつスピーディな試作・対応力です。
これからのチャレンジ ― ラテラルシンキングで新たな市場を拓く
日本の伝統技術と現場力は、世界に誇るべき資産です。
市場縮小・アナログ体質など昭和的な閉塞感を打破し、本質的な価値を世界中の暮らしやビジネスへ届けるためには、従来の枠にこだわらない“ラテラルシンキング”が求められます。
・技術思想はそのままに、まったく異業種の商品と組み合わせる
・オンラインのみ、もしくは現地スペシャリストとだけ共創するブランドを立ち上げる
・IoTやAIなど最新の製造業DXを駆使しロット小分け・短納期を実現するサプライチェーンを構築する
こうした大胆な発想が、新たな価値創造と雇用、新規ビジネスの芽に必ずつながります。
まとめ:い草製品海外展開―現場×企画×発信の三位一体戦略がカギ
い草業界の海外進出は、単なる販路拡大ではありません。
JAPANブランドが秘める独自の技術力・現場対応力を「世界のローカルスタンダード」へと進化させていく創造的挑戦です。
現場発の地道な改善と、消費者起点での製品開発、そして徹底したブランディング・情報発信で、い草の新たな地平線を切り拓けるはずです。
昭和的なアナログ業界だからこそ、現場知と企画力、そしてグローバルな目線の三方向から一歩踏み出してみませんか。
い草製品が世界生活文化の一部となる未来は、私たちバイヤー・サプライヤー双方の手にかかっています。
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