- お役立ち記事
- 安全規格の遵守確認を怠る仕入先が輸出リスクを招く問題
安全規格の遵守確認を怠る仕入先が輸出リスクを招く問題

目次
はじめに
製造業において、グローバルな事業展開はもはや避けて通れない時代です。
海外市場への輸出には大きなビジネスチャンスが広がる一方、避けては通れないリスクも存在します。
その中でも「安全規格の遵守確認を怠る仕入先がもたらす輸出リスク」は、特に見落とされがちな現場課題です。
本記事では、調達バイヤー・サプライヤー双方の立場から、現場実務に根ざした実践的な視点を交えつつ、今必要な「安全規格遵守」の重要性とリスク対策について掘り下げていきます。
安全規格遵守の本質とは何か
なぜ“最低限のルール”では済まないのか
安全規格とは、各国や地域で法律、工業標準化機関、業界団体などが制定する製品安全性・品質を定めた基準です。
CEマーク(欧州)、UL認証(米国)、PSE(日本)、CCC(中国)など枚挙にいとまがありません。
しばしば日本国内の基準だけを満たし、「機能的に問題なければ大丈夫」と考えがちな現場も見られます。
しかし、グローバル市場は各国独自の規格ルールがあり、違反が発覚すれば輸出停止、製品リコール、損害賠償等の深刻な事態を招くのです。
表面的なチェックが“落とし穴”になる
一見、仕入先のカタログや証明書で「○○認証取得済」とうたっていても油断は禁物です。
なぜなら、中には申請書類上の形式だけを満たし、実際の製品が基準を下回っている事例もあるからです。
特にアナログな現場や旧態依然の仕入先では、製造現場と書類提出担当が分断され、「申請だけ通せばOK」という風潮が未だ色濃く残っています。
この“昭和な空気”が、新興国市場など新たな販路開拓時に致命的なリスクとなり、企業ブランド全体を脅かします。
グローバル調達で高まる“輸出リスク”の実態
現場で多発する現実的な課題
私がこれまで手掛けた現場の事例でも、仕入先が認証切れの部材を納入、または一部原材料を“無断調達”した結果、欧州輸出品が現地港で足止め、莫大なコスト損失に発展した経験があります。
また、コスト低減優先で“書類上の認証”にしか目を向けない現場バイヤーも散見され、現物検査や第三者審査を疎かにしがちです。
その結果、出荷後に規格違反が発覚し「サプライチェーン全体の信頼失墜」という広範な問題へと波及します。
なぜ今リスクは高まっているのか
世界的なサプライチェーン再編が進み、中国・東南アジアを中心とした新興国サプライヤーとのビジネスが加速しています。
一方、これらの地域では日本ほど品質や安全意識が徹底されておらず、規格遵守のノウハウが十分に共有されていない現実があります。
加えて、近年EUでは「REACH規則」「RoHS指令」といった化学物質規制も強化され、書類の整合性だけでなく実体検査が常態化しています。
このような環境下で、旧態依然とした“証明書頼み”の調達管理スタイルでは、新しい輸出リスクに到底対応できません。
仕入先選定・維持管理で気をつけるべきポイント
「実態把握」のための現場主義が命
書類・カタログチェックで終わらせず、必ず現地工場監査・サンプル検査を実施することが、リスク最小化の第一歩です。
具体的には、製造工程の見学、担当者ヒアリング、原材料証明の突き合わせ、過去の違反歴やクレーム履歴のレビューなど、現場で汗をかく地道な作業を積み上げましょう。
内部監査や、必要に応じて第三者認証機関の利用も推奨されます。
新規仕入先だけでなく、長年付き合いのある業者でも、定期的な現地確認は“自社ブランド防衛”の保険となります。
サプライヤー教育・意識改革もバイヤーの仕事
サプライヤー側が安全規格に消極的であれば、ただ切り捨てるのではなく、自社で教育プログラムや説明会を設け、規格遵守の重要性と「なぜ必要なのか」を根気強く伝えましょう。
特に新興国系の仕入先に対しては、規格遵守が実は“自社の競争力強化”“信頼獲得”につながることを実例を交えて示せば、意識が大きく変わるはずです。
また、単なる“下請け”として扱うのではなく、パートナーとして育成する意識こそが、長い目で見て両社の発展につながります。
リスク事例から学ぶ:現場での失敗と成功
失敗事例――“書類信仰”の末路
私の経験では、欧州市場向け電子部品の大量リコール騒動が最も象徴的でした。
現地法規で求められる「CE適合宣言書」の内容は満たしていたものの、実際の部材に規格外の材料混入が判明。
最初はサプライヤー元で「そんなはずはない」と否認。
現地での抜き打ち検査、トレーサビリティ精査の末、仕入先現場での工程ミスが発覚しました。
結果、代替品手配と在庫回収に多大なコストと時間を要し、仕入先との取引も事実上打ち切りという最悪の結末に。
この経験は、バイヤーとして「書類信仰こそ最大のリスク源」と痛感した瞬間でした。
成功事例――現場監査と教育の力
一方、ある精密板金メーカーとのプロジェクトで、海外規格対応に不慣れなサプライヤーを一から教育。
現場監査に始まり、規格ガイドライン作成、工程改善アドバイスから担当者研修まで協働推進した結果、無事に認証を取得。
その後も安定した品質供給が実現し、双方のブランド価値向上にもつながりました。
この取り組みで実感したのは、ただ「リスク管理する側・される側」ではなく、「一緒に課題をクリアするパートナー」という発想の転換です。
現場に根ざした信頼とノウハウの共有こそが、最強のリスクヘッジとなるのです。
バイヤー・サプライヤー双方が身につけるべきマインドセット
“守り”から“攻め”の規格管理へ
安全規格遵守は「やらされ仕事」ではなく、グローバル市場で生き残るための“攻めの戦略”です。
バイヤーはコストや納期だけでなく、「どうすればサプライチェーン全体で付加価値を創出できるか」に主眼を移すべきです。
一方、サプライヤーも、規格適合力を競争優位性として磨き、より幅広い市場にアクセスできる“パスポート”として前向きに捉えましょう。
業界全体の底上げが未来への投資
特に昭和的なアナログ慣習が色濃く残る業界では、安全規格という「見えないバリア」の存在自体を正しく認知し、業界組織や教育機関も巻き込みながら、知識・ノウハウ・意識の底上げが求められます。
現場の技術者、管理職、購買担当、それぞれが「自分ごと」としてリスクを語りあえる風土づくりこそが、持続的な成長の礎となるはずです。
まとめ:安全規格遵守は“経営資源”である
今回述べたように、安全規格の遵守確認を怠ることによる輸出リスクは、単なる現場管理の問題にとどまりません。
万一の事故はサプライチェーン全体、つまり自社の信用・ブランド・収益までも一瞬で脅かします。
逆に言えば、規格遵守を標準化し、パートナーシップでリスク管理を徹底することが、これからの製造業の最強の武器となるのです。
古い慣習やコスト重視だけに囚われず、現場主義に基づいた“攻め”の調達マネジメントが、次世代グローバル競争を勝ち抜く切り札です。
バイヤー、サプライヤー問わず、今こそ「安全規格遵守」という文化的資本を自社の未来のために再認識・実践していきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)