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共同調達の提案を受け入れない仕入先がコスト効率を下げる問題

目次
はじめに:なぜ「共同調達」が製造業で注目されるのか
製造業において、ますます複雑化するグローバルな調達網の中で「コストダウン」は永遠の課題です。
材料や部品を安定かつ効率的に調達するため、多くの企業で共同調達(コーポレート・バイイング・グループ/ジョイント・バイイング)の導入が進められています。
共同調達は、複数の企業が共通する資材や副資材をまとめて調達することで、スケールメリットによるコスト低減やサプライヤーとの交渉力強化を実現します。
しかしながら、この合理的な取り組みを前にしても、すべての仕入先(サプライヤー)が共同調達に前向きとは限りません。
特に、伝統的な昭和型体質が根強く残るアナログな業界や中小の仕入先では、共同調達への反発や消極的な姿勢が目立ちます。
では、なぜ仕入先は共同調達を受け入れたがらないのでしょうか?
そして、その態度がサプライチェーン全体のコスト効率に与える影響とは?
本記事では、現場経験を踏まえつつ、共同調達を受け入れない仕入先がもたらすコスト面の問題と、製造業全体への波及効果を深掘りしていきます。
共同調達を嫌がる仕入先の本音と事情
1. 伝統的な商習慣が壁になる
多くの仕入先、とりわけ歴史ある町工場やローカルベンダーは、長年にわたり「御用聞き商売」や「顔の見える取引」を何より重視してきました。
親密な関係性こそ最大の武器だった時代から続く商習慣ゆえに、「誰がどの量をどのように買うのか細かく分からない」共同調達には不安や抵抗感が残ります。
さらに、窓口が統合されて価格交渉や納期調整の力関係が変化することを警戒し、現状をできるだけ維持したいという潜在的な意識も大きいのです。
2. 価格決定権の喪失と利益圧迫の恐れ
共同調達の本質は「まとめ買いによる価格交渉力の強化」にあります。
しかし、これを受け入れる側の仕入先にとっては、今まで個別に行えていた値決めやサービス差別化の余地が減ります。
大量発注で単価引き下げを迫られることは避けられず、特にスケールメリットの享受ができない小規模サプライヤーは利益率悪化を懸念します。
部材コストが原価の大半を占める業種では、この影響は特に大きくなります。
3. 工場の生産計画や対応力の限界
サプライヤーの生産現場もまた「新旧の流儀」のせめぎ合いの中にあります。
突然の大口受注や需要変動に耐える体制が整っていない場合、共同調達によって集中発注が来ると、生産スケジュールが崩れたり、納期対応が困難になったりします。
加えて、複数企業の仕様や品質要求、書類処理が一度に増えることで、現場負荷が増加し「できれば今のままがいい」という閉鎖的な意識も生まれやすいです。
共同調達不参加によるコスト効率の低下メカニズム
1. 全体最適の阻害によるムダな調達コスト
複数のメーカーや部署がばらばらに材料・部品を発注していると、どうしても発注ロットが小さくなり単価は高止まりします。
共同調達であれば交渉材料となる「数量インパクト」が生まれるにもかかわらず、個別発注のままだとスケールメリットを逃してしまいます。
サプライヤー側も複数注文の管理業務や配送、請求事務が分散し、トータルで見ると余計な人的リソースや物流コストを使っていることが多々あります。
2. サプライチェーン全体の「見える化・効率化」の妨げ
昨今、工場の自動化(スマートファクトリー)やIoT活用、SCM(サプライチェーンマネジメント)のデジタル変革が進んでいます。
共同調達は物流データや在庫情報の共有、需給予測の正確化にも大きく寄与します。
しかし、サプライヤーが情報連携や調達自体の集約を拒めば、製造現場や本部でSCMの最適化が進まず、非効率なマニュアル対応、在庫過少・過剰などの「隠れコスト」を抱え続けることになります。
3. 他社との競争力低下と取引機会損失
現代の製造業はグローバル規模での価格競争が激化しています。
共同調達を積極導入できている企業は、材料費を安定的に抑えられ、利益率・事業拡大余力の両面で優位に立てます。
一方、サプライヤーが共同調達を受け入れない状況が続くと、調達力のある大手企業からの受注が減り、最終的には販路を狭めるリスクにも直結します。
国内製造業全体としても、いつまでもアナログな商慣習に留まれば、国際競争で不利な立場に追いやられかねません。
現場目線で考える「あるべき共同調達の進め方」
1. サプライヤー視点に立ったフェアな交渉の重要性
バイヤー側が単に「安くしてほしい」と圧力をかけるだけでは、サプライヤーの反発や不信感を増やすだけです。
現場で重要なのは、両者が「なぜ共同調達が必要なのか」「どこまで譲れるのか」をしっかり議論し、WIN-WINとなる着地点を探る姿勢です。
たとえば、まとめ買いによる生産平準化のメリットや物流の無駄排除、梱包仕様統一による作業効率化など、具体的な改善点を数字で示しながら交渉することが有効です。
2. DX(デジタル化)によるムリ・ムダ・ムラの可視化
DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、無意味な調達プロセスや人的工数の削減に寄与します。
サプライヤーの受発注業務をシステム化し、どこでどれだけコストが余分にかかっているのかを「見える化」することで、納得感を持って共同調達を進めやすくなります。
また、受注予測や在庫最適化まで一緒に取り組むことで、サプライヤー側の生産負荷や納期ストレスも緩和しやすくなります。
3. 小規模サプライヤーへの支援と連携強化
特に中小サプライヤーの場合、共同調達による大口対応や急な仕様変更に不安を感じるのが当然です。
バイヤー側は、それぞれのサプライヤーの規模や得意分野をよく理解し、システム投資や物流面で支援を行うなど、単なるコストカットありきでない関係強化策を持つことが大切です。
たとえば、生産調整を段階的に行ったり、共同開発会議を設けるなど、共存共栄の視点が「次なる信頼獲得」につながります。
共同調達成功の鍵は「業界の壁を超えるコミュニケーション」
日本の製造業は、長年にわたり個別最適・分業構造を重視して発展してきました。
これは、誠実なモノづくりの精神とも言えますが、同時に変化への抵抗、情報・人材の属人化という負の側面も色濃く残しています。
現場感覚として痛感するのは、共同調達もまた「誰の、何のため」の最適化なのかが問われるプロジェクトだということです。
バイヤーもサプライヤーも、「自社だけ」ではなく「製造業全体の成長・発展」を意識して対話・協力し続けることで、長年の慣習や業界の壁を乗り越えることができるはずです。
まとめ:共同調達を拒むことで将来失うもの
仕入先が共同調達を受け入れないという守りの姿勢は、短期的にはメリットがあると感じられるかもしれません。
しかし、長期的にはサプライチェーンのコスト効率を下げ、国内製造業の国際競争力低下、ひいては自社の存続リスクに直結します。
バイヤーは、単なるコストダウンではなくサプライヤーの成長や安定も考慮した持続可能なパートナーシップを築くべきです。
サプライヤーもまた、新たな価値創造や競争優位性の確立という視点で、前向きに共同調達へ向き合うことが求められます。
製造業のここからの進化は、「全体最適」の志を持ち寄れるかどうかにかかっています。
現場の皆さまが、昭和の枠を越えた“攻めの調達改革”にチャレンジし、よりよい未来を切り拓いていく一助となれば幸いです。
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