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地域素材を使った製品の品質を安定させるためのサプライチェーン設計

目次
はじめに:地域素材を活かした製品づくりの時代背景
昨今、サステナビリティや地産地消の観点から、「地域素材を活用した製品開発」を推進する製造業が増えています。
また、消費者の価値観の変化により、「どこで」「どんな思いで」作られた製品なのかが購買理由となるケースも目立ってきました。
今まではコストや安定供給が唯一、究極の目的だったサプライチェーンですが、現代ではその視点に「地域性」や「トレーサビリティ」、「持続可能性」といった新たな要素も加わり、多軸的で複雑な設計が求められる時代です。
本記事では、製造現場目線で、地域素材を活かした製品の品質をいかに安定させるかを、サプライチェーンの設計を軸に深掘りしていきます。
これからバイヤーを目指す方や、サプライヤーとして「バイヤーが考えていること」を知りたい方にも、実務のヒントになる情報をまとめています。
地域素材を活用するサプライチェーンの特徴
なぜ地域素材なのか?
地域素材を活用する理由には、いくつかの大きなトレンドが関係しています。
まず、原材料価格の高騰や海外依存のリスク回避といった経済的要因。
次に、カーボンニュートラル社会の実現や社会貢献という観点からのSDGs推進。
さらに、強いローカリズムやブランディングによる販路拡大です。
ただし、その一方で「ロットごとの品質バラつき」「安定供給力の限界」「アナログで属人的な管理システム」「昭和的な付き合い文化の強さ」といった、独特の課題もあります。
サプライヤーの選定:従来型と何が違うのか
グローバル素材と比べて、地域素材のサプライヤーには規模が小さく、経営資源が限られている場合が多く見受けられます。
また長年の「縄張り」や「顔つなぎ」で商流が決まりやすいなど、合理的な取引だけでは動かせない現実もあります。
バイヤーとしては、この旧態依然の仕組みを「悪」と捉えるのではなく、「強み」にも着目した設計がポイントです。
小回りや融通、現場での双方向コミュニケーション力は、量産メーカーにはない強烈な武器になります。
品質安定化のための3つの柱
1. 原材料起点での「前工程」可視化
品質ばらつきの多くは、原材料から発生します。
したがって、単に「A社の○○」と表現せず、「どの産地の、どの栽培者・採掘者が、どんな条件で調達したのか」までのトレーサビリティを持たせることが重要です。
例えば、地元の木材を使う場合、同じ県内でも林齢や斜面方位で品質が変わります。
農産物なら収穫タイミングや天候履歴も品質要因です。
この情報を「帳票ベース」だけでなく「IoTセンサー」「画像AI分析」なども活用して可視化し、定量的な入力情報として設計フェーズから盛り込むことが、全体設計の礎となります。
2. 地域ならではの加工・流通プロセスの把握と標準化
地元業者の加工プロセスは、都市型サプライヤーと比べて「伝承的」「職人技依存」「マニュアルがない」というケースが多いものです。
バイヤーとしては、自動化が難しいからこそ、「工程の勘どころ」を因数分解し、工程FMEAや標準化(SOP)の策定を主導する責任があります。
また物流においては、都市型サプライヤーのように24時間体制で荷動きできるわけではありません。
逆に、地元同士のクイックな回覧ネットワークや、縦割り商流の仕組みを理解したサプライチェーン設計が必要です。
昭和から続く「翌朝の顔ぶれ会議」や「電話一本で納品」の文化をデジタル+現場脚力でどう補うかも、設計者としての腕の見せどころです。
3. 継続的なモニタリング設計と現場密着型のフィードバックループ
地域サプライチェーンでは、変動要素やイレギュラー対応が日常茶飯事です。
バイヤーが現場を訪問し、現物・現場・現人(サンゲン主義)で課題を拾い上げ、定期的な品質会議や仕組み改善会議を通じて「対策の当たり前化」を繰り返す必要があります。
また、デジタルツールも積極活用しましょう。
例えば、従来のFAXや電話+クラウド型の品質記録・トレーサビリティ管理システムをバンドルし、「いざトラブル」の際にも履歴を一元管理。
ペーパーレス化を推し進めることで、遠隔地のサプライヤーや現場ともきめ細かい連携が取れるようになります。
バイヤーが求める視点と、サプライヤーへの期待
バイヤーの本音「安定品質のための見える化」
バイヤーは常に「一定品質を、切れ目なく、安定供給できるか」を最重視しています。
そのため、下流工程(工場・顧客)から遡った時、「どんな因数分解で原材料や加工条件が製品品質に結びついているか」の見える化をサプライヤーに期待します。
データ件数が揃わずとも、「変動パターンのリストアップ」「異常値のグラフ化」といった一歩進んだ見せ方・報告書にも価値があります。
地元ならではの「良い濁流」はどの季節に起きやすいか、「今年は桜が早かったけれど収穫物の傾向は?」といった現場感覚を、数字や写真で共有してくれるサプライヤーは絶対的な信頼を得ます。
サプライヤーが取るべきアプローチ:属人化リスクからの脱却
「私は30年現場にいるから分かる」「勘でやってきたから大丈夫」という属人的な強みは、短期的には武器になれど、長期的には組織リスクです。
御用聞きや「お願い」「付き合い」を大事にしつつ、一歩踏み込んで自ら工程標準化やQMS(品質マネジメントシステム)の導入提案をすることで、バイヤーの信頼残高を高められます。
また、バイヤーの担当者も頻繁に異動があります。
人の世代交代に備え、グループ単位での課題共有会議を増やす、ナレッジを文書化・データ化しておく、などの「仕組み強化型サプライヤー」は選ばれやすい傾向にあります。
サプライチェーン設計の具体策:昭和の遺産を活かすには
アナログ文化を活かした「現場力」設計
多くの業界では効率化やデジタル化が急速に進んでいますが、製造業の現場は意外にも「昭和的アナログ文化」が根強く残っています。
例えば、定時に町工場の組合長に直接電話することで得られる「今日の工場の空気感」、現地の直売所で出荷量をヒアリングして得る「一時情報」など、自動化の波だけに頼れない重要なヒントが山ほどあります。
サプライチェーン設計者としては、こうしたアナログ情報収集をIoTデータ連携や簡易なLINEグループなどと組み合わせ、形式知化していくことが求められます。
「工場での朝礼レポートを写真で毎日送る」「SkypeやZoomで週次生産確認会議を行う」など、段階的なデジタル導入が推進のカギとなります。
地元同士のネットワークを「共創型サプライチェーン」に進化させる
個別最適だった地元ネットワークを、「共創型サプライチェーン」へと進化させる動きが重要になっています。
例えば、複数の地元素材メーカー同士が「原材料の余剰分け合いネットワーク」を結成し、需給の波を吸収する。
また行政や地元支援団体も巻き込み、定期的な連絡会で品種開発や輸送課題の情報交換を行うことで、単独では踏み込めなかった領域へも手を広げられます。
こうした複線化は、震災・気候変動リスクなど不測事態にも柔軟に対応できるレジリエントなサプライチェーンにもつながります。
まとめ:地域素材の強みを活かし、真の品質安定を目指す
地域素材を使った製品のサプライチェーン設計には、アナログ文化や小規模ネットワークの事情、変動要素の多さなど独特のハードルが存在します。
しかし逆説的に言えば、「現場への密着」「伝統的ネットワークの活用」「リアルな情報の見える化」といった、他にはない強みを最大化できるチャンスでもあります。
是非、属人化リスクの最小化や、工程の標準化、バイヤー・サプライヤーのオープンな連携を意識し、次世代のサプライチェーン設計に挑戦してください。
しなやかでレジリエント、地域に根ざした強いものづくりが、真の持続可能性を生み出すと信じています。
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