投稿日:2025年11月28日

地方製造業を起点に構築するサプライチェーンリスクマネジメント体制

はじめに:なぜ今、サプライチェーンリスクマネジメントが重要なのか

近年、製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。

かつては、品質やコスト競争力を追求していれば安定した事業運営が可能でしたが、グローバル化や自然災害、地政学リスク、パンデミック、ITインフラの脆弱性など、多種多様なリスクがサプライチェーン全体を脅かす時代となりました。

特に地方製造業は、地元経済の基盤でありながら、サプライチェーン上の“弱い輪”となりがちです。

そのため、販売先や取引先から「止まらない」こと=安定供給力が強く求められています。

この現実を踏まえ、本記事では、長年の現場経験に基づき、地方製造業が起点となってサプライチェーンリスクマネジメント体制をどのように構築するべきか、実践目線で解説します。

サプライチェーンリスクとは何か?基礎を整理する

現場目線で捉え直すリスクの種類・範囲

サプライチェーンリスクとは、材料調達・生産・物流・販売までの各工程で発生しうる「供給途絶」「品質問題」「コスト上昇」「情報漏洩」「納期遅延」など、事業継続や利益に影響を与える全てのリスクを指します。

以下、現場目線でよく遭遇するリスクを整理します。

– 天災・災害(地震、台風、洪水、火災など)
– サプライヤー倒産、納品停止
– 地政学リスク(国際的な政治・経済摩擦、ロシア・ウクライナ情勢など)
– パンデミック(新型コロナウイルス等)
– 情報システム障害・サイバー攻撃
– 法規制の変更(輸出規制・環境規制など)
– 部材・材料の急激な価格高騰、供給不足
– 人手不足による生産力低下

昭和からの長い歴史と、現場の感覚で積み上げられた“経験則”に依存する体質の企業ほど、「昔はこうだったから…」とリスクに対する感度が鈍くなりがちです。

これが現場を脆弱化させる温床になります。

リスクは発生してからだと遅い―想定と事前対策がカギ

多くの現場では、「トラブルが起きてから対処」になりがちです。

しかし、取引先から求められているのは、事前の想定力と対応シナリオです。

何かあった時にすぐ動けるマニュアルや、具体的な代替調達ルートの確保が求められます。

昭和的な「なんとか手配します」より、データ・ロジックベースの管理・提案力が今後は評価されるでしょう。

地方製造業固有のサプライチェーンリスクへの向き合い方

地方ならではの特性

地方製造業は、以下のような特徴により、サプライチェーン上の弱点となる場合があります。

– 主要サプライヤーが集中しやすい(限定された業者との付き合いが深い)
– 地元経済・雇用との結び付きが強い(代替調達や外部委託が難しい)
– 物流インフラが都市部より脆弱
– 担い手不足・技術継承問題
– 情報化・デジタル化の遅れ

これらの点は「地元重視での企業運営」の利点もありますが、リスク分散という観点から捉えると改善が必要です。

地方発でできるリスクマネジメント実践案

(1)現場主導で“リスク棚卸”を行う
各工程の責任者や、取引先とのやり取りが多い現場リーダーの意見を集め、どこにどんなリスクが内在しているかをマッピングします。

(2)調達先・生産委託先の第二ラインを確保する
ローカルの提携先や異業種ネットワークも広げ、緊急時にはメーカー横断で助け合える仕組みづくりが有効です。

(3)物流ルートの多様化
中小ローカル物流会社との連携強化、地域商工会・自治体との災害時物資調達協定などが有効です。

(4)DX・IoTの部分導入
すべて最新化することが難しくても、工程監視や予兆検知にIoTを活用し、異常予知・トラブル検知を高めることが現実的です。

(5)従業員教育・訓練
地元志向が強い地方では、従業員のロイヤリティが高い反面、新しい管理や考え方は浸透しにくい傾向があります。

定期的なリスク対応訓練や勉強会、他社との事例共有を地道に重ねていくことが重要です。

バイヤーの視点:サプライヤーに何を期待しているのか

調達購買担当が本当に知りたいこと

バイヤーは、サプライヤーに対し「価格」「納期」「品質」だけでなく、「安定して供給できるか」「イレギュラーにどう対応するか」に強い関心を持っています。

特に大手メーカーのバイヤーが恐れるのは、「工場が止まること」「責任範囲不明によるお客様への納入遅延」です。

自社の調達先サプライヤーが、どのようなリスク管理体制を持ち、マルチソース確保、異常発生時の連絡体制、復旧までのシナリオを持っているか、定期的な棚卸と実地監査で確認しています。

サプライヤー側は「うちに限っては大丈夫」という“根拠なき自信”を捨てる必要があります。

バイヤーが評価する大きなポイント

1. リスクを数値化・可視化できているか(定量的管理)
2. 「何が起きたら何をする/どれくらいで復旧できる」明確なシナリオを持っているか
3. 取引先への迅速かつ正確な連絡体制
4. 代替品・代替生産ルートが現実的に確保できているか

昭和的な「経験と勘」から脱却し、バイヤーと同じ視線でリスク管理を語れることが、今後必須スキルとなります。

現場主導でサプライチェーンリスクマネジメント体制を作るステップ

1. 現状把握とギャップ分析

自社の工程・調達ネットワーク・情報管理体制を再度洗い出し、「想定可能なリスクリスト」を作成します。

どんな些細なトラブルも、まずは書き出すことが出発点です。

次に、「いまのままで本当に大丈夫か」「取引先から見て安心してもらえる根拠はどこか」を検討します。

2. 優先順位をつけてアクションプランを策定

全てのリスクを一度に潰すのは非現実的です。

頻度・影響度・代替難易度などでランク付けし、優先度の高いものから具体的な対策案をつくります。

たとえば主要材料の調達リスクなら、第二・第三サプライヤーの候補化や在庫積み増し基準の再検討、災害時の緊急物流契約などが考えられます。

3. 社内外の意識・ルール共有

せっかく体制を作っても、「担当者だけが知っている」「現場の阿吽の呼吸頼み」では効果が半減します。

チェックリストや現場ルールとして明文化し、タブレットや紙のマニュアルで誰もが見られるようにします。

講習会やワークショップで、繰り返し社員に落とし込むのも大事です。

4. 定期的な見直し・訓練・改善

一度対策を作れば終わりではなく、3か月あるいは半年ごとにケースレビューと訓練(BCP訓練・異常対応訓練)を行い、現実と合わなくなっていないかをチェックします。

取引先からフィードバックを積極的に受け取り、仕組みを柔軟に改善していく姿勢が、信頼の確立に繋がります。

サプライヤー側で育成したい“バイヤー的思考”

地元密着型の工場だからこそ、社員にも「バイヤー視点」を浸透させることが大切です。

– 「自社が納品しなければ誰が困るか」
– 「納品遅延時の影響範囲をどこまで想定できているか」
– 「サプライチェーン上のリスクが連鎖する仕組みを理解しているか」

この思考が深まるほど、サプライヤーとしての商談力・提案力は格段に高まります。

また、単なる「受け身の下請け」から「上流の課題を解決できるパートナー」へとポジションを変えるきっかけにもなります。

昭和からアップデートするためのファーストステップ

現場の“保守的な空気”を打ち破るためには、小さな失敗が許される風土と、PDCAを回し続ける習慣が必須です。

例えば、DX化もいきなり大規模投資をするのではなく、小さな工程からIoTセンサーでデータ化し、異常検知の精度を上げてみる。

3か月間だけBCP訓練をやってみて、成果を現場掲示板で「見える化」する。

現場が体感した“次につながる一歩”は、必ず企業の競争力に結びつきます。

まとめ:地方製造業こそ、サプライチェーンの“要”になれる時代

サプライチェーンリスクマネジメントは、単なる管理手法で終わらせてはいけません。

地方製造業こそ、自社のリスク管理力を武器に、バイヤーへ“安心”と“解決力”を提供する存在へアップデートできます。

昭和の「なんとかする」は、令和の「見える化」「即時対応」「協調」の時代へ―。

仲間とともに考え、小さな改善を積み重ねることで、地方発の強靭なサプライチェーンが構築されることを願っています。

そして、その熱意と実践が、製造業の未来を照らしていくと信じています。

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