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ノートの紙が書きやすい滑らかさを保つ表面加工と塗工技術

目次
ノートの「書きやすいなめらかさ」を生み出す表面加工と塗工技術とは
ノートを開いたときの、あの手にしっくりとなじむ滑らかな用紙。
誰しも一度は「このノート、書き心地が良いなぁ」と感じた経験があるのではないでしょうか。
その心地よい筆記体験を演出しているのは、実は表面加工や塗工(とこう)といった極めて精密な製紙技術に支えられています。
この記事では、製造業の現場目線を交えながら、ノートの紙がどうやって「滑らかさ」を手に入れ、それを量産品として維持しているのかを紐解いていきます。
バイヤーや製紙メーカーの調達担当、またサプライヤーの視点からもメリット・デメリットを踏まえて深く掘り下げてゆきます。
ノート用紙の「なめらかさ」とは何か?現場が捉える本質
なめらかさの定義―筆記具×紙の相性
実際の現場では「紙がなめらか」という曖昧な表現だけでは、厳密な品質を作り上げることはできません。
ノートのなめらかさは、筆記具のインク(ゲル、油性、水性など)や鉛筆・ボールペンの芯との摩擦や、擦れ(スキッド)をどれだけ低減できているか、で数値化されることが多いです。
例えば、JIS規格の「B値」(Bekk smoothness)や「表面粗さ」「摩擦係数」など、製紙会社の品質管理部署では様々な定量的測定が実施されています。
ユーザー目線に立つと「紙の繊維が引っかからず、ペンがスムーズにすべる」感覚ですが、現場ではこれらを数字で担保し、安定供給することが差別化につながります。
なぜなめらかさが重要なのか:実用性×高付加価値
製造業の現場では「なめらかさ」を単なる付加価値とせず、「用途」と密着させて捉えます。
文字を書く、スケッチをする、筆記速度が求められる試験会場等、使い手のシーンを徹底的に分析します。
特に近年では、タブレットやデジタルノートの普及で「紙がなめらかだから使いたい」という原点回帰的需要も増加しています。
なめらかな紙を作ることは、高級ノートやビジネス手帳などの高付加価値市場への参入・差別化の武器となっています。
表面加工・塗工技術とは何か:昭和の伝統から最先端へ
サイズプレスと「塗工」―紙表面の改質
紙の表面に「なめらかさ」を与える技術として、最も基本的なのが「サイズプレス」と「塗工(コーティング)」です。
サイズプレスは、紙が抄き終わった後にデンプンや合成樹脂の薄い「のり」を塗布して、表面の繊維の毛羽立ちを防ぎます。
これにより、インクのにじみや裏抜けも抑えつつ、紙がしっとりとなめらかになります。
さらに上を行く塗工紙(コートペーパー)は、顔料(クレー、炭酸カルシウムなど)とバインダー(合成樹脂)を混ぜた塗料を紙面に塗布し、より平滑な面を作り出します。
ノート用紙でよく使われるのは「微塗工紙」や「上質紙グレード」と呼ばれるゾーンです。
カルンダー処理(スーパーカルンダー)
抄紙機から出てきた紙は紙自体の繊維がランダムにつながり合い、表面は意外とデコボコしています。
ここに「カレンダー」という加圧・加熱ローラーを通すことにより、紙を平滑に仕上げます。
スーパーカルンダー処理は、ミクロン単位で凹凸を潰し、独特のツルっとした書き味を実現します。
この工程は現場でも熟練の技が必要な、紙の「最後の化粧」と言っても過言ではありません。
ニッチな加工技術の数々
近年は、油をはじく「耐油性コート」や、学童用ノートなどに使われる「消しゴム耐性向上コート」、環境対応型の「バイオマスバインダー」等、様々なニッチ加工が相次いで登場しています。
また、蛍光剤無添加・酸性紙の問題対応など、昭和の常識とは異なる新たなニーズへの対応も進行中です。
素材選定と購買の攻防—バイヤー・サプライヤー間の現実
バイヤー視点:なめらかさ≒コスト・・・でも妥協はNG
ノートメーカーの購買担当(バイヤー)は、品質とコストのはざまで常に葛藤します。
良質な滑らかさを持つ紙は、表面加工の手間や高価格の原材料コストも跳ね上がるため、利益確保が難しいのです。
しかし一流ブランドや学童向け市場では、「書きにくい紙」はお客さまの支持を大きく失うリスクも。
購買発注段階では、表面粗さの値や摩擦係数、印刷適性テストの数値を入念にテストします。
一方で「滑らかすぎてペン先が走りすぎる」「消しゴム耐性が低い」といったユーザーの意見も現場検証します。
近年では中国や東南アジア産の安価な紙が提案されることも多いですが、「平成以降の大量生産=質が落ちる」の先入観を捨て、「現物を手に取り、確認する」現場主義が今も色濃く残ります。
サプライヤーの提案力=生き残りの鍵
一方、サプライヤー側も「なめらかさ一辺倒」の提案では調達担当の心は動きません。
例えば、特殊サイズプレスを導入し「インク吸収・なめらかさ・消しゴム耐性」をバランスよく高めた開発ストーリーや、「エコ原材料」「バイオマス塗工剤」「VOC低減」等のトレンド要素を盛り込んだ提案がカギを握ります。
また「実際の現場評価に基づくPDCA」、クレーム時の「トラブルシュート対応力」は、長年取引を勝ち抜く条件といえるでしょう。
デジタル化が進む令和の今でも「紙の選定—それは人間の感性×現場の統計データ」で成り立っています。
アナログ業界に根付く伝統と進化—なめらかさの追求は終わらない
なぜ紙業界は「昭和」から抜け出せないのか
「なぜ令和の時代にもなって、紙の品質検査や見本帳の手触り評価なのか?」という疑問を抱かれる方もいるかもしれません。
しかし、筆記用紙分野は「手書きの触感」を直感的に評価できる唯一の領域であり、デジタル化が進んでも最後に勝負を分けるのは人間の「手」なのです。
一例を挙げますと、新聞の印刷適性や証券用紙のインク耐性なども、デジタル検査ではカバーしきれない繊細な差異が多数存在します。
昭和初期から続く製紙メーカーの「現場主義」、ユーザー目線での試し書きテストやクレーム分析が今もなお業界を支えているのです。
進化する表面加工—デジタル×アナログの融合
一方、最先端の現場ではAI検査による紙面品質の全数管理や、3Dマッピングセンサーによる紙表面粗さのデジタル測定、成分可視化による異物検知等、高度な自動化も始まっています。
さらには紙工場のDX化・IoT機器(インライン粘度センサー、カメラ付き検査装置)を使ったリアルタイム品質制御により、「現場の勘と統計」が融合した全く新しい調達・生産スタイルに変貌しつつあります。
それでも最終的な納品判断や付加価値化の評価は、「手でさわる・目でみる」というアナログ性が不可欠です。
このハイブリッドな感性と論理のせめぎ合いこそが、昭和から令和に至るまで筆記用紙が進化し続けてきた理由とも言えます。
まとめ:滑らかさをつくる知恵と、これからのモノづくり
ノート用紙の「滑らかさ」は、原材料、塗工・表面加工技術、現場品質管理、ユーザーの体感、デジタル技術の融合…と多層的な工夫の結晶です。
製造業現場の観点では、「滑らかさ=コスト」ではなく、「滑らかさ=使い手の満足度・ブランド価値」へと昇華させることが今後の成長戦略となります。
バイヤーやサプライヤーの立場では、「品質・コスト・現場の声」を丁寧にすり合わせながら、時代に合った新しいなめらかさを目指す必要があります。
昭和に育まれた伝統技術を守る一方、IoTやサステナビリティ重視の新しいトレンドに挑戦し続ける——
そんなラテラルシンキング・現場感覚を両立できるモノづくりこそ、製造業がさらなる飛躍を遂げる鍵なのです。
今、この瞬間にも「ノートの書きやすさ」を支える最前線で、多くの現場人が試行錯誤を重ねています。
ノートを開くその手触りに、何気ない一筆の滑らかさに、製造業の知恵と情熱が込められていることを、ぜひ思い出していただければ幸いです。
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