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投稿日:2026年1月11日

シリンダロッド部材の表面傷が漏油につながる理由

はじめに

現場でシリンダロッド部材の表面傷が発生することで、なぜ漏油につながるのか――。
製造業の現場では、しばしばこの問題に直面します。
「たかが小さな傷だろう」と安易に考えていると、後々致命的なトラブルに発展することも珍しくありません。
特に、アナログな現場文化が色濃く残る日本の製造業において、表面傷のリスク管理は進化の余地を多く残しています。
この記事では、バイヤーやサプライヤー両方の立場から見た、シリンダロッドの表面傷と漏油の因果関係、現場での実践的な管理ノウハウ、そして業界動向まで、より深く解説していきます。

シリンダロッドの役割と機構的なポイント

まず、シリンダロッドがどのような役割を担っているのかをおさらいします。
シリンダロッドは、油圧や空圧シリンダといったアクチュエータで重要な可動部材です。
内部圧力によってロッドが押し引きされ、その運動が機械装置を動かす原動力になります。
ハウジング(筒体)内部にはオイルや空気などの流体が高圧で充填され、ロッドとシールの摺動部を経由して運動が伝わります。

このとき、シール部での油漏れ(漏油)は装置停止や安全事故の引き金になります。
したがって、ロッド表面の状態は非常に重要な意味を持っています。

なぜ表面傷が漏油に直結するのか?

シールリップとロッド表面の関係

現場で最も多い漏油原因のひとつが、シールリップとロッド表面の「間隙」にあります。
シリンダ内の油圧を封じるためのシール(オイルシール、パッキンなど)は、ゴムや樹脂製のリップ形状をしており、ロッド外周と直接摺動します。

この摺動面は、極めてミクロン単位での平滑性が求められます。
傷があると、どんなに小さなものでも、油分子はその隙間からシールリップを越えて外部へ流出しやすくなります。
理想的には、ロッド表面とシールリップが「面」で密着していなければならず、「線」や「点」になると漏油リスクが跳ね上がります。

目に見えない微細な傷の恐怖

一見、目視では分からない程度の微細な傷でも、実はシールリップの材料に比べてはるかに硬いため、リップ側が削られたり、潤滑層が破壊されたりします。
これにより、未然に防げるはずの漏油が突発的に発生します。
特に昭和の時代から使われているような旧型設備では、「表面粗さ」や「硬度」を厳密に規格化していないまま生産が続いた結果、漏油トラブルが常態化している現場も多く見られます。

メカニズム:表面傷が増幅される現象

実際の現場では、ロッドの微細な傷がシールリップとの摩擦で拡大され、まるでミクロのやすりのような働きをする現象が観察されます。
ロッドが1往復するごとに、傷はシール素材を少しずつ削り取り、わずかな切粉や異物をシール面に残します。
この繰り返しの末、ついにはシールの密着性が失われて漏油が発生します。
まさに「小さな傷が大きな事故の種」となる瞬間です。

現場でよくある表面傷の発生原因

取り扱い時のミス

ロッド部材は搬送や組み付け時、クランプ・治具などの接触で簡単に傷つくことがあります。
特にアルミや低合金鋼など比較的軟らかい素材では「うっかり落下」や「作業中の引きずり」によるダメージが頻発します。

加工不良・メッキの問題

切削や研磨工程での刃具の摩耗、冷却不足、異物混入によりピンホールや縞傷が発生します。
さらに、表面処理(めっき、コーティング)の不連続や剥離も油漏れの温床です。

保管・輸送時の環境

表面に埃や水分が付着したまま放置すると、錆や腐食が進行します。
このような腐食層もシールリップとの密着性を著しく損ないます。

昭和的アナログ現場と現代のギャップ

「品質=目視検査」の限界

従来の日本の製造現場では、「職人の目」と「手触り」が品質保証の主役でした。
ですが、ミクロの世界の傷や表面粗さは肉眼や手触りでは検知不可能です。
それにも関わらず、判定基準や工程管理は未だにアナログな手法に頼っているケースが多々あります。

IoTや画像認識技術導入の必要性

デジタルツールによる表面粗さ測定や高解像度カメラを用いた自動外観検査が、業界全体に求められています。
特に海外サプライヤーとの技術力ギャップを埋めるため、標準化・自動化が急務です。

バイヤー・サプライヤーの視点から見た課題と対策

要求仕様の明確化と共有

バイヤーはロッド表面傷が製品性能にどう影響し、顧客や社内からどんなクレームや損失が発生しうるかをサプライヤーに伝える責任があります。
図面や仕様書において、表面粗さ(Ra値やRz値)、硬度、メッキ厚などを明文化することが不可欠です。

サプライヤーは、検査体制だけでなく、工程・搬送・保管までトータルでリスク管理する姿勢が求められます。
また、傷発生がゼロでなくても、事前に報告しエスカレーションすることが信頼関係構築につながります。

現場同士のリアルな情報交換が鍵

バイヤーは現場技術者と直接対話し、実際にどこでどんな問題が発生しているのかを自分の目で確かめることが大切です。
サプライヤーも、納入現場の生の声やフィードバックを迅速にフィードバックループ化することで、真の品質改善に近づきます。

令和の時代の新スタンダード「共創活動」

今後は、バイヤーとサプライヤーが単なる「発注・納入」の関係性ではなく、技術課題を一緒に解決していく「共創」的な関わり方が求められます。
現場間のワークショップや合同勉強会、AIによる予兆解析の共同導入など、オープンイノベーションが成功事例を生んでいます。

事例紹介:漏油トラブルから脱却した現場の取り組み

ある大手自動車部品メーカーでは、納入サプライヤー由来の微細傷による漏油トラブルが続出していました。
プロジェクト班を立ち上げ、発生個所の現物解析から工程監査、表面処理条件の見直し、表面検査方法の自動化を一括して推進。
最終的に漏油量が年間1/10以下に激減し、現場の意識も「漏油は防げないもの」から「徹底的にゼロ化するもの」へと大転換を成し遂げました。

おわりに—これからの現場力強化に求められるもの

シリンダロッド部材の表面傷は小さなミスの積み重ねから発生し、大きな漏油事故へとつながります。
「見えないからOK」「今まで大丈夫だったから」という昭和的発想では、グローバル競争の荒波には太刀打ちできません。
今こそ、現場のリアルな知恵と最先端技術を融合させ、安全・高品質な製品を生み出す現場力が問われています。

バイヤーもサプライヤーも、互いの事情を理解し、時代に即した管理・改善の道を一緒に切り拓く――そんな“共創”の力こそが、これからの日本のものづくりを支える最大の武器になるでしょう。

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