投稿日:2025年11月30日

パーカーOEMで活躍する素材トレンド2025――サステナブル×高機能

はじめに ――製造業が直面する新たな市場動向と”モノ作り”の変革

近年、ファッション業界はもちろん、関連する製造業においてもサステナビリティと高機能性への関心が急速に高まっています。
特にパーカーのOEM市場では、これまで常識だった「大量生産・低価格・通常素材」からの脱却が進み、新たな競争軸へとシフトしています。
昭和から平成、令和へと時代が移り変わる中で、新技術の採用や素材選び、調達購買戦略も大きく変貌を遂げつつあります。

本記事では、現場で多数のOEM案件を手掛けてきた経験をもとに、2025年以降に注目されるパーカーOEMの素材トレンド、そしてバイヤーやサプライヤー双方の視点から、“サステナブル×高機能”という新時代のものづくりについて掘り下げます。
業界に長く根付くアナログ的思考とデジタル・グローバル化の波、その間で求められる実践的アプローチにも触れ、明日から使える知見をお伝えします。

パーカーOEM市場の現在地――変化を促す2つの原動力

サステナビリティの潮流――もはや”オプション”ではない理由

パーカーはカジュアルウェアの象徴であり、あらゆる年齢層・用途で愛用される定番品です。
長年”綿100%”やポリエステル=リーズナブルという既成概念で動いてきたこの分野にも、ESG投資の加速やグローバルブランド基準の高まりによって、急速な質的転換が生まれています。

EUでは2024年から繊維廃棄規制が強化され、日本の大手アパレルやスポーツブランドでも「再生素材比率」や「トレーサビリティ管理」を発注時の必須条件とするケースが増加。
つまり、OEM受注側は素材調達や品質保証の段階から“サステナブルリスク”を自社で抱える時代となっています。

高機能素材の技術革新――消費者体験を変えるものづくり

一方で、ユーザー側も「ただ着るだけ」のウェアから、軽量性、速乾性、UVカット、抗菌など暮らしを支える”+α”の機能を強く求めるようになっています。
とくに2020年以降、在宅ワークやアウトドアブームの影響もあり、パーカーへの機能追加は単なる差別化を超え、購入動機のコア要素となりました。

大手素材メーカーは高機能ポリエステルやバイオ由来繊維の開発を急ぎ、OEM事業者もこれら最新技術をいち早く実装する“技術調達力”を競っています。
ただし、コスト上昇リスクや実際の生産現場での運用負荷も増しており、川上から川下まで業界全体の構造的イノベーションが問われています。

パーカーOEMを強くする2025年の素材トレンド

1.RE:サイクルコットン&エコポリエステルの標準化

2025年、もっとも市場拡大が期待されるのがリサイクルコットン(再生綿)やGRS認証ポリエステルです。
これらは、廃材や生地くずを再活用するだけでなく、サプライチェーン全体のCO2排出削減にも直結します。

たとえば、某大手スポーツブランドの調達基準では「2025年までに全製品の70%を再生素材に切替」と明記されており、実際にOEM現場では原材料のトレーサビリティ、繊維認証資料の提出が“当たり前”に。
対応できないサプライヤーは商談対象から外れる現実が始まりつつあります。

工場運営の視点では、リサイクル素材は一律で扱えるわけではなく、混綿率や糸の均一性による生産ロットぶれに注意が必要です。
生産管理・品質管理の技術力がますます重要になるでしょう。

2.セルロース系新素材――テンセル、キュプラ、バイオ繊維の台頭

植物由来のテンセル(リヨセル)、キュプラ、さらにはバクテリアから生成される未来型バイオ繊維まで、OEM発注でも「本当に環境にやさしい」新素材への切り替えが拡がっています。

テンセルやキュプラは風合い・吸湿性にも優れ、肌触りや着心地重視のパーカーで高評価を得ています。
ただし、染色・縫製工程のミスが出やすく、工場側の技術習熟やライン管理の見直しが必要になるため、バイヤー主導の現場改善が重要です。

生産国拠点との情報共有や、先進国・新興国での歩留まりデータ比較など、“昭和流”の属人的なノウハウ共有を脱し、サプライチェーン全体のデータ連携が大きな差別化ポイントとなっています。

3.持続性×快適性を両立する高機能素材

2025年のパーカーOEMトレンドは「サステナブルなだけでなく、快適・多機能であること」です。
各種リサイクル素材やバイオ繊維の採用とともに、「吸汗速乾」「防臭」「抗ピリング」「UVカット」などの付加機能をOEM段階から組み込む事例が目立ちます。

具体的な定番素材には、
・セルロースナノファイバー配合生地
・再生ポリエステル使用の撥水/ストレッチ生地
・廃漁網やペットボトルなど海洋ごみ由来繊維
などがあげられ、単一機能ではなく“複合機能”型の新素材への需要が拡大中です。

管理職現場の経験からいえば、この種の高機能素材は量産時の安定品質が難しく、特に縫製工場では異素材ミックスの対応がネックになることも多いです。
ライン分け、生産管理システムの最適化、自工程保証の強化など、”昭和流”手作業主体からの脱却が求められる局面です。

サプライヤーとバイヤー、両方の視点を生かしたOEM戦略

OEMバイヤーの本音――なぜサステナブル素材にこだわるのか

バイヤー側の調達基準が変化している背景には、単なる“見た目”やブランドイメージの問題だけでなく、
・ESGレポート義務化
・消費者への説明責任
・グローバル基準を満たす必要性
などの強力な外圧が存在しています。

実際、国内大手でもリサイクルコンテンツ率やCO2排出量を「数値目標」としてKPI化しており、これをクリアできないサプライヤーは2025年度以降、商流から外される可能性が高まっています。
つまり、「高機能×サステナブル」は悩ましい“希望条件”ではなく、サバイブの必須条件になってきたということです。

サプライヤーから見た課題と打開策

サプライヤー側が最初にぶつかるのは、原材料コスト増と生産ラインの非効率化です。
再生素材や新素材はまだ安定的な入手が難しく、建値も通常品の1.2~1.5倍になることが少なくありません。

ただし、“プレイヤーの発想転換”が活路を生む時代でもあります。
たとえば、地場再生素材メーカーとの直接提携、製造現場での先行テスト投入、調達部門と連動した原材料共同買い付けなど、従来の単独主義から“水平型・共創型”の戦略へとシフトすることで、早期にトレンド対応力を身につけられます。

工場自動化や生産管理システムのアップデートも不可欠です。
新素材ごとに作業条件が異なるため、IoTやMES(製造実行システム)によるデータ駆動型の現場改善、現場ベテランの知見をデジタル化するナレッジ共有など、昭和由来の属人的運用を見直す好機となっています。

OEM現場で“強いモノづくり”を実現するためのポイント

・バイヤー要求の先読み力(2026~2027年の素材/機能動向も積極提案する)
・サプライチェーン全体のエコ認証取得力(GRS、OEKO-TEX、ECO PASSPORT等)
・LCA(ライフサイクルアセスメント)やカーボンフットプリント管理への対応
・素材/工程ごとの設備投資と生産管理力強化

といった項目を早期にPDCAサイクルに組み込むことが、OEMサプライヤーとしての“選ばれる力”を左右します。

まとめ ――パーカーOEMはサステナブル×高機能で次代に挑む

2025年以降のパーカーOEM市場は、間違いなく「サステナブル×高機能」素材が主戦場となります。
サプライヤー、バイヤー、製造現場、すべてのプレイヤーが新たな知見と技術、共創の姿勢で結びつき、相互に“バリューアップ”しなければ、市場要求に応え続けることは困難です。

アナログ業界に根強い“手作り至上主義”も、AIやIoT、データ駆動型ものづくりとのダイナミックな融合で次代へと進化できます。
昭和世代が培った現場力と、これからのデジタル戦略――その両者が真に結びついた時、日本の製造業の“現場力”は世界で再び大きな注目を集めるはずです。

これからパーカーOEM事業に携わる方・新規で参入を検討しているバイヤー志望者・サプライヤーの立場からバイヤー思考を学びたい方、ぜひ現場目線かつ未来志向のアプローチで2025年の潮流に挑戦してください。

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