OEMパーカーのサステナブル素材――リサイクルコットンと再生ポリエステル

はじめに――OEMパーカーとサステナブル素材の時代

製造業に長年携わってきた私ですが、近年の市場動向でもっとも注目すべきキーワードのひとつが「サステナビリティ」です。

中でもOEMパーカーの需要は爆発的に高まっています。

なぜ今、OEMパーカーがここまで支持されるのでしょうか。

その理由の一つには、ファッション性と実用性の高さが挙げられますが、本質的には「企業やブランドの価値観を表現できるアイテム」であることが大きいです。

加えて、消費者や取引先がますます重視するのが“地球と人にやさしい素材”の追求です。

本記事では、OEMパーカーで注目されるサステナブル素材である「リサイクルコットン」と「再生ポリエステル」について、製造現場目線、そしてバイヤー視点から詳しく解説します。

工場現場の生の声や、昭和的なアナログ業界の現状も織り混ぜ、新しい地平線を切り拓くヒントを共有していきます。

OEMパーカーとは何か――量産からブランド価値の創造へ

OEM（Original Equipment Manufacturer）パーカーとは、他社ブランドの製品を受託生産することが基本です。

ファッション業界はもちろん、企業のノベルティやスポーツチーム、アーティストグッズとして幅広い需要があります。

一見すると「ただのパーカー」に感じられるかもしれませんが、“素材選び”や“縫製技術”、“ブランドメッセージの伝達”といった要素に、各社のこだわりと哲学が現れます。

従来のOEMパーカーは、コスト重視で大量生産されるケースが大多数でした。

しかし、現在は「自社ブランドのサステナビリティ方針」と「エンドユーザーの社会意識」に真摯に応えることが重要視されています。

それは、サプライヤーや工場も意識変革を迫られる大きな転換期です。

サステナブル素材の代表格――リサイクルコットンと再生ポリエステル

リサイクルコットンの特徴と価値

リサイクルコットンとは、紡績工場の落ちわたや未使用生地、あるいは古着などの廃棄コットンを再加工した素材です。

コットンの栽培は大量の水と農薬を必要とし、地球環境への負荷が大きいことはよく知られています。

そのため、リサイクルコットンの採用は“循環型経済”への第一歩と言えるでしょう。

現場の感覚では、通常のバージンコットンに比べると、若干の風合いの違いや色ムラが生じやすいですが、それがかえって“ヴィンテージ感”や“味わい”として評価されることも増えています。

BtoB（対企業）取引の場合、バイヤーたちは「どの段階でどんなリサイクル工程を採用しているか」まで細かく確認します。

サプライヤーとしても、トレーサビリティやサステナビリティ証明書を確実に用意できるかが勝負の分かれ目です。

再生ポリエステルの役割と市場動向

再生ポリエステルは、主にペットボトルなどの廃棄プラスチックを回収し、化学的または物理的手法で繊維化したものです。

グローバル化の進展とともに、その活用例はパーカーのみならず、ユニフォームやアウトドアウェア、防水バッグなどにも広がっています。

私の経験上、再生ポリエステルは従来品と遜色ない強度と発色性を持つため、染色やプリント加工の自由度が極めて高いのがメリットです。

さらに、「SDGs（持続可能な開発目標）」に取り組む企業ほど、再生ポリエステル比率を基準にサプライヤー選択を行う傾向が強まっています。

工場スタッフや品質管理担当にとっては、リサイクル原料独特の“臭気”や“原料ロット変動”という課題をどうコントロールするかも重要になります。

アナログ業界が抱える課題とチャンス

私が製造現場で強く実感しているのが、アパレル業界をはじめとする製造業の“昭和的アナログ体質”です。

例えば、以下のような課題が根深いまま残っています。

・見積書や発注書はいまだにFAX、電話
・素材証明の管理が紙ベースで手間とミスが多い
・「これまで通り」に固執する現場の慣習

ですが、ここにこそサステナブル素材採用の大きなチャンスがあります。

なぜなら、「サステナブル調達」はきわめてデジタルな情報管理が求められるため、せざるを得ない「DX（デジタルトランスフォーメーション）」の入り口になるからです。

バイヤー側も「どのサプライヤーが、どれだけサステナブルを実行しているのか」をデータベースで管理・評価するよう変化しています。

サプライヤーとしては、素材メーカー・工場・卸の全工程でデータ連携し、「このパーカーのこの素材は、どのリサイクル資源から来たのか」を証明できる体制づくりが必須です。

昭和マインドと令和サステナビリティの融合

今後勝ち残るためには、「昭和的な現場力」――具体的なものづくり技術や、トラブル時の臨機応変さ――を最大限に尊重しつつ、デジタルやサステナブルといった新要素を柔軟に吸収することが求められます。

例えば、ベテラン職人による「リサイクルコットン独自の糸むらへの丁寧な対応」と、「IoTを活用した製造ロット追跡」をミックスすることで他社にはできない付加価値が生まれます。

バイヤーの視点では、「何を」「どのように」作るか以上に、「なぜそれを選ぶのか」「どこまで情報開示できるのか」という姿勢が重視される時代です。

サステナブルOEMパーカー導入のポイント――バイヤー視点で考える

サプライヤーや現場担当者に強くお伝えしたいのは、バイヤーが求めているのは「単なるエコ商材」ではない、ということです。

今の購買ポリシーの根底にあるのは次の3点です。

製品ストーリーと透明性の言語化

「このパーカーの素材はどのように生まれ、どんな社会的意味を持つのか」を明確に伝えられることが求められます。

たとえば、工場見学レポートやリサイクル資源回収現場の写真・動画などを組み合わせてエンドユーザーまで可視化する取り組みが好評価されます。

安定供給と品質担保

リサイクル素材は、原料供給やロット安定性に不安を持たれることが少なくありません。

「どこから、どのように仕入れ、品質チェックをどの段階で行っているか」を“数値”や“図解”で簡潔に示すことが大切です。

QC（品質管理）や生産管理ノウハウを生かして、「予想外のトラブル発生時の対応力」をアピールするのも有効といえます。

環境負荷の具体的削減データ

「従来パーカー比で水消費量○○%削減」「CO2排出量△△%削減」など、客観的なデータをきちんと提供するサプライヤーがバイヤーから選ばれます。

これは先進的なグローバルバイヤーほど重視しているポイントで、国内老舗メーカーでも対応を急がなければなりません。

製造業バイヤー・現場への実践的アドバイス

バイヤーを目指す方へ

単なる価格交渉力だけでなく「素材の裏側」「工場技術」「サプライチェーン全体」を深く学んでほしいと思います。

実際の現場を見て、職人や現場作業者の声を知ることで、他バイヤーと差別化できる提案力が磨かれます。

サステナブル素材やプロセスに関する最新情報を常時アップデートし、エンドユーザーに響くストーリーを伝える力も欠かせません。

サプライヤー・工場担当者が知るべきバイヤーの目線

バイヤーの多くは、「調達コスト」だけでなく「会社イメージ」「顧客満足」「CSR（社会的責任）」をバランス良く見ています。

価格競争だけに走るのではなく、「うちの強みはなにか」「他社にない証明書類や現場ノウハウはどう提供できるか」を徹底的に考えて提案することが重要です。

工場の工程や現場スタッフが持つベテランの“職人技”、そしてIT化による管理のスマート化など、新旧融合の強みを発信することから始めましょう。

まとめ――昭和と令和を橋渡しするサステナブル改革

OEMパーカーを筆頭に、「リサイクルコットン」と「再生ポリエステル」の導入は、サステナビリティ実現への核心的な一歩となります。

昭和から続くアナログ現場力を尊重しつつ、令和的なDXやサステナブル志向を前向きに取り込むことで、日本の製造業はもう一度「選ばれる産業」へと変革できるでしょう。

この記事が、現場で戦うバイヤーやサプライヤー、そして新しい世代のものづくり人材のヒントとなれば嬉しいです。

自社・自分の強みを最大限に生かし、サステナブルな未来へ踏み出しましょう。