投稿日:2025年11月27日

OEMトレーナーのサステナブル素材――再生ポリエステルと有機コットンの活用

OEMトレーナーから考えるサステナブル素材の重要性

製造業において、環境配慮や持続的な発展が求められる時代へと移行しています。
その中でアパレル製品、特にOEM(相手先ブランド名製造)トレーナーの領域でも「サステナブル素材」が大きなテーマとなりつつあります。
本記事では、再生ポリエステルと有機コットンの特色や現場で実際に起きている課題、それを解決するための実践的なポイントについて詳しく解説します。

なぜOEMトレーナーにサステナブル素材が求められるのか

日用品やファッションアイテムの分野でOEM生産は従来から広く行われてきました。
ですが昨今は「SDGs」「ESG経営」などのグローバルな潮流が、購買担当や設計現場にも直接的なインパクトをもたらしています。
特にアパレルにおけるCO2排出量や廃棄物削減が注目される中、OEMトレーナーの生地選定は、大手バイヤーや商社でも最優先の課題となっています。

ここが重要なのは、受託側のサプライヤーも「なぜサステナブル素材が必要か」を深く理解し、取引先バイヤーが本当に求めるポイントを戦略的に押さえなければならない点です。
未だに昭和のやり方が通用すると思っていませんか?
現場が「お客様次第」と受け身でいるだけでは、グローバル市場での生き残りは難しくなっています。

OEMトレーナーの主なサステナブル素材

1. 再生ポリエステル(リサイクルポリエステル)

再生ポリエステルとは、主に使用済みペットボトルや廃プラスチックなどを再資源化し、ポリエステル繊維として生まれ変わらせた素材です。
その特徴は以下の通りです。

– 石油由来のバージンポリエステルに比べCO2排出量が大幅に削減できる
– 廃棄物削減、リサイクル推進を実現
– 洗濯や着用などの使用感は従来ポリエステルと大差なし

大手スポーツブランドやアパレルメーカーの中には、全採用ポリエステル製品を2030年までに100%リサイクルへ転換する目標を掲げている企業もあります。

2. 有機コットン(オーガニックコットン)

有機コットンとは、3年以上農薬や化学肥料を使わず、有機農法で栽培された綿花から作られる綿繊維です。
主なメリットは以下のとおりです。

– 土壌や河川の汚染防止
– 労働者や農業従事者の健康リスク低減
– 世界的な認証制度(GOTS、OCSなど)による信頼性

OEMトレーナーとしては、着心地や肌ざわりも重視されるので、「有機コットン100%」や「コットンと再生ポリエステルの混紡」など、用途やデザインによって複数の素材アプローチが考えられます。

グローバルバイヤーがサステナブル素材に着目する本質的理由

昭和的なコスト第一主義から脱却できないサプライヤーは、バイヤー目線が見えていないケースが多いです。
今、グローバルバイヤー、特に欧州系や北米系ブランドバイヤーが「なぜサステナブル素材に強くこだわるのか?」を以下に整理します。

– ESG経営・SDGsレポートにおける社会的責任の証明
– ユーザーへの社会価値訴求(安さやデザインだけでは選ばれない市場の現実)
– トレーサビリティ強化による長期的パートナーシップ構築

つまり、サステナブル素材への移行は単なるトレンドではなく、海外大手ブランドのCSR(企業の社会的責任)・リスクコントロールの一環となっています。
バイヤーがサプライヤー選定時に見ているのは、「価格」だけではないのです。

現場で起きているサステナブル素材活用のリアルな課題

筆者自身、昭和から令和へと現場の変化を見てきました。
サステナブル素材の導入は理想と現実のギャップがあり、現場には以下3つの課題が強く残っています。

1. 原材料コスト高騰とプライスプレッシャー

リサイクルポリエステルや有機コットンは、従来素材よりもコストが高めです。
OEMはコスト競争が激しく、サプライヤーとして「値上げ分の転嫁」が非常に難しいのが現実です。
工場現場では、一括購買によるスケールメリットを活かした交渉や、副資材も含むシンプル化、歩留まり向上など工夫が求められます。

2. サプライチェーンの透明性とトレーサビリティ要求

バイヤーが「本当にサステナブルか?」を証明するため、原材料の調達先や生産工程の管理状況を細かく開示するよう求められます。
トレーサビリティ台帳や証明書(GRS、GOTS等)取得のため生産管理担当は膨大なマニュアル対応が必要です。
この点をクリアできないと、大手の新規案件獲得は極めて困難となります。

3. 従来型の工場マネジメントや人材意識とのギャップ

今もなお現場には「昔から変わらないやり方」が強く根付いています。
特に地方工場では「サステナブル?何それ?うちは昔から○○でやってるよ」という職人肌のベテランも少なくありません。
「変化」への抵抗感をどう乗り越えるかが、管理職や工場長の手腕に大きく問われる時代になっています。

現場からの改善策――サステナブル素材活用を実現するには

それでは、実際の生産現場やサプライチェーンにおける「現実的な対応策」にはどのようなものがあるのでしょうか。

1. エビデンス重視の原材料調達体制

生地サプライヤーには、環境負荷だけでなく、調達証明書や国際認証書の提出がリクエストされることが増えています。
小規模取り引きでも、「後から証明できませんでした」では顧客を失う大きな要因になりますので、調達段階からのトレーサビリティ構築が重要です。

2. 積極的な情報発信と教育の徹底

自社工場だけでなく協力工場まで巻き込んだサステナビリティ研修や、最新事例の共有、新素材の展示会見学など啓蒙活動を習慣化することが求められます。
職場でよく使われるマンガやビジュアル資料を活用すれば、「サステナブルって難しそう」というアレルギー感を払拭できます。

3. ジョブローテーションによる若手人材の育成

変化を牽引するのは、往々にして若手・中堅のスタッフです。
調達担当や生産計画の若手に、原材料選定から納期管理まで横断的に経験を積ませ、変化に強い現場作りに取り組むべきです。
バイヤー目線での会話力や課題発掘力もセットで伸ばすことで、サステナビリティ経営の現場力強化につながります。

まとめ:OEMトレーナーの未来を切り開くラテラル思考

「OEMトレーナー×サステナブル素材」は、単なる素材選定の話にとどまりません。
再生ポリエステルや有機コットンといった新たな潮流は、製造マインドやサプライチェーン全体の進化を促しています。
変化に背を向けていては生き残れません。

むしろ、「これまでの常識」や「うちの工場のルール」だけにとらわれず、ラテラルシンキング(水平思考)で新しい価値を発見し、自社の強みと結びつける発想が必要です。

OEMトレーナーを例にとると、コスト面や品質面だけでバイヤーと相対する時代は終わりを迎えています。
サステナブル素材の導入で工場自体の魅力や存在意義を高め、バイヤーの真のパートナーを目指していきましょう。

これからの製造業を担う皆さん、およびバイヤー志向を持つ読者の方々には、ぜひ「次の一手」を逆算しながら現場イノベーションを起こしてほしいと思います。
OEMトレーナーのサステナブル素材への対応は、業界全体の未来を左右する大きな転換点です。
今こそ知恵と経験を掛け合わせて、新たな価値創造に挑戦していきましょう。

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