投稿日:2025年9月8日

サステナブル志向のペット用品OEMとリサイクル素材活用法

サステナブル志向が不可避な製造業界の現状

近年、サステナビリティ(持続可能性)は社会全体の大きなテーマとなっています。

特に製造業界においては、カーボンニュートラルやSDGs(持続可能な開発目標)への対応が企業価値を左右しつつあります。

従来の「作って・売って・捨てる」一方向型のビジネスモデルは見直され、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の推進が求められています。

ペット用品業界も例外ではありません。

むしろ、ペットを家族として迎え入れる消費者増加に伴い、安心・安全だけでなく、環境負荷低減やリサイクル材の活用に関心が高まっています。

大手小売や新興ブランドのOEM案件でも、「サステナブル」を掲げた提案依頼が年々増えているのが実情です。

OEMバイヤーが求めるサステナブル要件とは

OEM供給とは、バイヤー(ブランドオーナー)が自社で設計した商品企画を、協力工場に製造委託する生産形態です。

サステナブル志向のOEM案件でバイヤーが最重要視するポイントは、大きく以下の3つに集約されます。

1. リサイクル材料・バイオマス原料の安定調達

例えば、ペットボトルから再生したPET樹脂、衣料品リサイクルのポリエステル再生糸、サトウキビ由来のバイオPE(ポリエチレン)など、環境配慮型素材への切り替えが主流です。

バイヤーはサプライヤーに対し、「どのような原材料を・どこのルートで・どれくらいの供給量で・どれだけのコストで調達できるか」をしっかりヒアリングしています。

大手ではグローバル基準の認証(GRSやRCS、FSCなど)の取得も重要視されるケースが多いです。

2. エネルギー効率(省エネ設備・再エネ活用)

リサイクル素材それ自体も重要ですが、リサイクル加工プロセスのCO2排出量の多寡も問われる段階になっています。

LED照明や高効率インバーター機器導入、太陽光発電などの再生可能エネルギー利用、生産設備のIoT化による省エネ管理が評価対象です。

「省エネ→コスト削減→環境対応」までつながるストーリーを現場管理者が示せることがOEM獲得の大きな鍵を握ります。

3. グリーン調達・トレーサビリティ対応

環境に配慮した調達活動(グリーン調達)は、サプライチェーンを構成する1次、2次サプライヤー全体に波及してきています。

また、どこから・だれが・どの工程で作ったのかを証拠として残す「トレーサビリティ」をOEM先に求めるバイヤーが増えています。

口頭説明や一部の証明書だけでなく、詳細な記録管理や第三者認証システム導入が求められているのが、昭和的商慣行からの大きな変化です。

リサイクル素材のペット用品・現場での具体的活用事例

実際にどのようなリサイクル素材を利用したペット用品OEM案件が増えているのか、現場目線で挙げてみます。

再生PET樹脂の活用:ペットボトル再生からペット用衣類やリードへ

ペットボトル由来のリサイクルPETチップを活用したペット用ウェアやリード、首輪などは、近年国内外問わず引き合いが強い分野です。

再生樹脂の安定供給ルートを押さえつつ、通常品同等のスペック(耐久性、色落ちしにくさ、風合い)を維持する技術的な知見がOEM現場で求められます。

また、「原料何本のペットボトルが◯個の製品に生まれ変わる」といったストーリー化、パッケージやwebでの明示も重要です。

バイオマス素材利用:植物由来樹脂でエコフード容器

サトウキビ、とうもろこし、植物油などから抽出したバイオポリエチレン(PE)やバイオポリプロピレン(PP)は、ペットフードトレイやスプーン、キャットサンド容器に使われています。

石油由来原料と比較して、焼却時のCO2排出量を大幅削減でき、加えて「非可食部(バガス等)」由来の材料指定により食糧問題への配慮も強調しやすいです。

バイオマスマークやエコマーク認証取得もOEMバイヤーには刺さります。

廃棄素材リユース:繊維くずでペットベッド中材

衣料やタオル工場から出る繊維くずを再生綿として利用したペット用ベッドやクッションの中材も増えています。

柔らかな感触と吸湿性があり、なおかつ本来廃棄されるはずの資源を生かす提案は、バイヤー視点でも差別化しやすく大きな魅力です。

こうした廃材リユースの現場では、異物混入対策や安定的なリサイクル量確保のノウハウが求められます。

サステナブル素材活用のための実践的な生産管理ノウハウ

高度化するバイヤー要望に対応するには、単にリサイクル原料を「使ってみました」では十分とは言えません。

現場の生産管理として優先すべきポイントを整理します。

1.安定したサプライチェーンの構築

リサイクル材やバイオ素材は、天候や社会情勢の影響を受けやすく、在庫や価格が乱高下しやすい傾向があります。

サプライヤー複数化、長期契約の活用、定量発注契約によるコスト安定化、サンプル試作段階から本生産までの見極めなど、従来品以上の管理が必要です。

QCD(品質・コスト・納期)管理に加え、可用性・環境性能も新たなチェックポイントになります。

2.現場製造技術のアップデート

リサイクル原料はバージン原料に比べて物性(強度や流動性、着色性など)にバラツキが出やすく、加工条件出しも難しい面があります。

射出成形の温度管理や配合比率の工夫、異物混入防止の現場指導、製品検査・トレーサビリティ対応の文書化などを徹底しましょう。

また、経験値の差がミスやロスに直結するため、現場作業者への教育・標準化もより重視するべきです。

3.エビデンスの見える化と透明性ある情報開示

OEMバイヤーは「どこまで環境配慮しているのか?」を製造現場に求めます。

工程ごとの記録管理、原材料証明、CO2排出量レポート、納品製品ごとのロット追跡表など、従来以上にエビデンスを整理しましょう。

第三者監査や外部認証(ISO14001、FSC、GRS、エコマークなど)も積極的に活用し、営業資料・ホームページに公開することでブランド価値向上につながります。

「昭和的」製造現場の意識改革とアナログ脱却

筆者が20年以上体験してきた製造現場では、「品質・コスト・納期」を第一義に据えた昭和型のモノづくりマインドが根強く残っています。

もちろんこれら基礎力は今後も大切ですが、新たにサステナビリティおよびコンプライアンス対応が加わり、現場のスタンダード自体が変化しています。

紙記録主義や現場勘頼みの運用では、バイヤーや最終消費者からの信頼を得ることは難しくなります。

IoT化・デジタル化・データ連携による生産情報のリアルタイム管理、現場リーダー層のアップデート、外部との情報交換ネットワークの強化が今後の必須課題です。

これからのOEMに求められる「共創」としての価値提案

これまでOEMというと、「指示されたモノを、いかに安く・正確につくるか」が主な役割でした。

しかし、サステナブル素材や新しいプロセスが主流となる現在では、ブランド側バイヤーと現場サプライヤーが、時に一緒に開発し、問題解決を進めていく「共創(コ・クリエーション)」型のOEMが重視されています。

サプライヤーは単なる「つくる」役割から逸脱し、調達・開発・品質・サステナビリティ・ユーザー体験まで、広範囲な付加価値を提案できるパートナーとして期待されています。

サステナブル志向のOEM案件獲得には、担当営業・設計・生産管理・品質管理部門それぞれが、組織全体として「バイヤー課題の本質理解」と「能動的な提案・改善」ができる体制づくりがとにかく重要です。

最後に:製造業の未来を切拓くのは「現場力」と「共創力」

ペット用品OEMに限らず、サステナブル素材・リサイクル材料の活用は製造現場にとって大きな挑戦の連続です。

激変する業界動向の中で、現場視点で継続的な改善・実践を繰り返すことで、従来の昭和スタイルから脱却し、新しい地平線を切り開いていくことが必要だと私は考えます。

バイヤーを目指す方、あるいは既にOEMサプライヤーの立場で「何がバイヤーにとって価値なのか」を模索している方、自社の「現場力」と「共創力」をいま一度見直してみませんか。

あなたの現場の一歩が、業界全体の未来を切り拓くきっかけになるはずです。

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