投稿日:2025年7月15日

リーダーとして職場で実践していかなければならないポイントを体系的にまとめ指導

はじめに:製造業現場の「リーダーシップ」に必要な視点

製造業の現場でリーダーとして求められる役割は多岐にわたります。

モノづくりの進化は止まらず、昭和から令和へと時代が変わる中で、現場が抱える課題や求められるリーダー像も大きく変貌しています。

一方で、長年にわたり根強く残るアナログな文化や価値観が、変革を阻むことも多々あります。

この記事では、私が20年以上現場で培った経験とノウハウをもとに、製造業の現場リーダーが実践すべき指導ポイントを体系的に整理し、具体的なアクションプランとともに解説します。

現場リーダーの役割とは ― 「管理者」でなく「改革者」に

1. 現場を動かす“人”のマネジメントの本質

リーダーに求められる第一の役割は、作業指示や管理ではなく「人を成長させる」ことにあります。

昭和の時代は“言われた通りにやる”マネジメントが主流でした。

しかし現在は、現場の知見やアイデアを引き出し、全員が自ら考える組織に変革することが不可欠です。

リーダー自身が「上から目線」ではなくメンバーと同じ目線に立ち、本音で語ること。

現場の声を吸い上げ、行動に移すサイクルを作りましょう。

2. 「調達」から考えるリーダーの視野拡大

原材料や部品の供給がしばしば不安定となる現代、調達部門との連携強化は欠かせません。

調達購買バイヤーの視点で現場を見ることで、コストダウンや安定供給への着眼点が養われます。

「サプライヤー」と「バイヤー」の双方の立ち位置を理解できるリーダーこそが、全体最適な判断を行い、企業価値の最大化に貢献できるのです。

3. DX・自動化時代の変化対応力

IoT・AI・自動化技術の導入は大きな流れですが、現場には“紙の記録”や“属人化”がいまだ根強く残っています。

「DXの推進」で失敗しないためには、現場のリアルな困りごとや慣習をきちんと分析し、段階的にデジタル化を浸透させる必要があります。

“なぜそれが必要なのか”を納得してもらうプロセスが、リーダーシップの要です。

昭和的メンタリティが残る現場で変革を進めるには

1. 「聴く力」と「納得のファシリテーション」

現場では、慣習や“いつものやり方”が暗黙のルールとなり、変化に対して抵抗が起きやすいものです。

リーダーは具体的な目的やメリットをきちんと言語化し、職場対話を通じて丁寧に説明すること。

一方的に“これをやれ”と命じるのではなく、“なぜやるのか”の合意形成(ファシリテーション)を地道に積み重ねることが重要です。

2. 指摘ではなく、「問い」を投げかける

“何でこれできないんだ?”“このミスは誰だ?”といった昭和的管理では現場は疲弊します。

リーダーは“どうしたらミスが減るかな?”“どんな方法なら仕事が楽になる?”という問いを投げることで、メンバー自ら考える仕掛けを作りましょう。

その答えを引き出せれば、改善意欲と達成感が双方に芽生えます。

3. 「現場起点」の業務標準化と改善推進

現場が自発的に参画しやすい業務手順やルール作りこそ、持続的な変革につながります。

トップダウンで押し付けるのではなく、小さな改善を現場と一緒にデータ化・可視化して、「ウチのやり方」に落とし込みましょう。

その中でデジタル活用やQCサークルなども柔軟に取り入れることで、全体最適の職場風土が生まれます。

バイヤーとサプライヤー双方の視点を持つリーダーに

1. 調達・購買の『交渉力』を生かす現場運営

バイヤーとして部品や材料を安定的に、かつ適正コストで調達するには、サプライヤーとの信頼構築が不可欠です。

これはそのまま、現場リーダーとしての「交渉力」「調整力」に通じています。

相手の意図や事情を汲み取り、自社の条件と擦り合わせる。

このバランスを取ることで、現場運営の課題も円満に解決できます。

2. サプライチェーンの目線を持った危機管理

調達部門と生産部門がバラバラでは、材料や部品の納期遅延などいざという時の対処が遅れます。

「今、世の中で何が起きているのか」「どの部品がクリティカルか」といったサプライチェーン起点での情報共有をリーダーが旗振り役となり、全員で危機意識・先読み思考を高める場を作ることが必要です。

生産・品質管理のプロとして指導すべきポイント

1. 数値・見える化による現場の自律化

リーダー自身が生産計画や実績データ、品質トラブル情報を常に“見える化”できているか。

その仕組みをつくり、現場メンバーも分かるレベルで共有していくことで、仕事の目的意識や自律性が高まります。

例えば「歩留まり」や「直行率」といった指標を現場で定期的に可視化し、改善目標をチームで設定する習慣を根付かせるのが理想です。

2. 不良や納期遅延への“未然防止”の徹底

現場で最も大切なのは、取り返しのつかない“不良流出”や“重大納期遅延”を未然に防ぐ力です。

単なる指摘で終わらず、「どの工程で、どんなリスクが潜んでいるか」を現場で“見える化”し、毎日のミーティングで即アクションを回すスピード感が求められます。

失敗を糧にPDCAサイクルを高速で回しましょう。

3. 多能工・業務多角化こそ現場強化のカギ

定型作業からの脱却、多能工化は現場の長年の課題です。

「作業標準化」と「OJT(On the Job Training)」を地道に繰り返し、誰もが複数工程をカバーできる仕組みを目指しましょう。

これは突発的なトラブルや人員の変動に強い柔軟な現場体制を生み出します。

ラテラルシンキング的アプローチで現場力を革新

1. 異業種ベンチマークと“気づき”の仕掛け

同業他社や業界の枠を超えたベンチマーク活動(※他のやり方に学ぶ)は、現場力向上の大きなヒントになります。

失敗例や他社の工夫も積極的に取り入れ、閉塞した発想から抜け出しましょう。

また、「朝礼で一つ小さな気づきを共有する」「ワークショップ型ミーティングを導入する」など、新しい刺激を現場に提供することも効果的です。

2. 若手・ベテランの逆転メンター制度

昭和的な上下関係ではなく、若手のITリテラシーや新視点、ベテランの経験値を活かすため、互いが教え合い学び合う“逆転メンター”の試みも注目されています。

相手の強みを尊重し引き出す人材育成の仕組みを、リーダー自身が牽引しましょう。

まとめ:これからの製造業リーダーへのメッセージ

リーダーに求められるのは、管理や命令だけではありません。

人を成長させ、現場をまとめ、常に現状を疑い、変革を主導していくことです。

昭和的価値観と、次世代のデジタル化やグローバル化の両方を理解し、バイヤー・サプライヤーそれぞれの思考も持ち、現場全体を俯瞰できる「広く・深く・しなやかな」リーダーを目指してほしいと願います。

一人ひとりの成長が現場を強くし、ひいては日本のものづくり全体の未来を創ります。

これを読まれている製造業従事者、バイヤー志望者、サプライヤーの皆さんにも、ぜひ自分の現場で小さな一歩から、実践に移していただければ幸いです。

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