犬猫用おやつ向け新製品開発のための技術導入と設計戦略

犬猫用おやつ新製品開発における現状と業界動向

犬猫用おやつ市場は、近年急激な成長を続けています。
ペットの家族化傾向や飼い主の健康志向の高まりにより、従来の「ご褒美」用途にとどまらず、高付加価値で安全・安心な製品が強く求められるようになりました。

一方で、製造業の現場ではまだまだ昭和のアナログ体質が根強く、製品企画〜設計〜量産に至るまで効率化や自動化が進んでいない企業も少なくありません。
バイヤーやサプライヤーとして製造現場の内実を知ることで、よりよい提案や協業につなげていく必要があります。

今後の成長市場で勝ち残るためには、技術導入や設計戦略の見直し・刷新が不可欠です。
本記事では、犬猫用おやつの新製品開発における具体的な技術導入のポイントと、設計段階から見直すべき実践的な戦略を、現場視点・バイヤー視点で深掘りします。

現場が直面する課題と変革の必要性

1. 伝統的製造現場の課題

多くの現場では、今も以下のような“昭和型”の課題が残りがちです。

– 熟練作業者の“勘・経験”に依存した工程設計や運用
– 紙ベースの帳票・伝票管理、情報伝達の遅延
– 設備更新や自動化投資が後手に回る
– 部門間サイロ・横断的なデータ連携の未成熟
– 新製品開発〜上市までのリードタイムの長期化

このような状況では、消費者のニーズ変化や新素材・新技術の登場に迅速に対応した新製品の開発が追いつきません。

2. 市場の変化に押し出される製造改革

昨今の犬猫用おやつ市場では、飼い主が「自身が愛犬・愛猫に食べさせたい」と納得できる品質と差別化ポイントが不可欠です。
たとえば、「ヒューマングレード」「グレインフリー」「機能性成分配合」「サステナブルな原料活用」「小ロット多品種」などへの対応が求められます。

こうした市場背景を踏まえ、私たち製造現場やバイヤーも、以下の点で変革が必要です。

– 設計プロセスの見直しとQCD（品質・コスト・納期）の最適化
– デジタル技術や自動化・品質管理システムの積極導入
– バイヤー・サプライヤー間の情報共有と協働体制の強化

技術導入による製造現場の変革ポイント

1. 製造プロセスのデジタル化とIoT活用

新製品開発を成功させるには、設計〜量産までのあらゆる工程でデジタル化を推進し、リアルタイムなデータ収集と活用が重要になります。

たとえば、以下のようなIoT技術が大きな効果をもたらします。

– 温度・湿度・混合状態などをセンサーで常時モニタリングし、不良品率を低減
– 工程別の歩留まりやエネルギー使用量を見える化、コストダウンや環境対応を実現
– バッチ毎の配合・原料ロットを一元管理し、トレーサビリティを強化

こうしたデジタル基盤上で、従来経験則に頼ってきた調整作業が合理化されるため、多品種少量や短納期にも柔軟に対応しやすくなります。

2. 自動化・省人化技術の導入

人手不足が深刻化するなか、製造現場の自動化は必須です。
犬猫用おやつのように原料特性や多品種への対応力が問われる製品では、次のような自動化が有効です。

– 配合・混練・成型・焼成・包装までの一貫自動ライン構築
– AIカメラや画像認識技術による外観品質検査
– AGV（自動搬送車）による原料・半製品の工場内搬送

これにより生産性向上だけでなく、「人が必ずやるべき業務（創意工夫・問題解決など）」へのシフトも可能になります。

3. 品質管理体制の強化と可視化

おやつ製品の安心・安全は何よりも重視されます。
HACCPやISO22000などの国際基準への適合とともに、最新のクリーンルーム設計や細菌検査の自動化も有効です。

また、製造データのクラウド管理によって、バイヤーからの緊急問い合わせ・消費者クレーム対応も迅速・的確に行えます。

設計戦略の革新と開発プロセスの再定義

1. マーケティング主導の製品設計

従来、現場主導で開発が進みがちだった犬猫用おやつですが、市場ニーズを徹底的に調査・分析し、商品企画部門と研究・製造現場がワンチーム体制で進めることが成功のカギです。

– トレンドウォッチ（ヒューマングレード、スーパー原料、持続可能性）
– 消費者・獣医師インタビューを踏まえた機能性設計
– 小ロット・試作販売による市場反応の素早いフィードバック

このためには「設計者と営業・マーケチームのシームレスな情報共有」が必須です。

2. バイヤーが望む資材・原材料調達の最適化

新製品の訴求力を左右するのが資材調達です。
バイヤーという立場では、以下を重視してサプライヤーと交渉・選定します。

– 産地証明が明確な高品質原料の安定供給
– サステナブル認証やヒューマングレード対応可否
– サプライヤーの技術開発力・品質管理力
– データ提供（配合、ロット管理、CO2排出情報など）

サプライヤー側から見ると、バイヤーのこうした要望を把握し、「自社がどこまで対応可能か・何を強みにできるか」を明確化しておくことで評価が高まります。

3. 開発リードタイム短縮とプロトタイピングの高速化

多品種小ロット・短納期トレンドへの対応には、開発リードタイムの短縮が欠かせません。
その実現には、以下が有効です。

– 3Dプリンターを活用した金型レスの試作
– DX（デジタルトランスフォーメーション）による設計・生産管理システムの統合
– 原材料、配合、包装資材の定型化（モジュール設計）

設計・製造部門が壁を越えてワンストップで開発を進めるためには、BOM（部品表）やレシピ情報の一元管理、試作結果の迅速なデータフィードバックが不可欠です。

バイヤーとサプライヤーの連携が市場競争力を左右する

1. 情報非対称性の解消と信頼関係強化

昭和的な“持ちつ持たれつ”の関係性だけでは、激変する市場で生き残れません。
これからは「サプライチェーン全体の透明性と信頼構築」が現場でも必須です。

– 価格・納期・品質指標のみならず、ESG（環境・社会・ガバナンス）観点での情報共有
– 原材料のトレーサビリティや加工プロセスの見える化
– 定期的な意見交換会・現場見学会の開催

これにより両者の信頼感が高まり、トラブルや緊急対応時のスピードも格段に向上します。

2. 共同開発（コ・クリエーション）の重要性

市場の「変化速度」が増す現代では、一企業単独の開発力だけでは限界があります。
バイヤーとサプライヤーが共同で原料開発や技術検証を行い、知見を持ち寄る「コ・クリエーション」型開発が差別化の源泉となります。

たとえば、以下のような成功事例があります。

– サプライヤーと共同で新規機能性成分や高歩留まり原料を開発
– 包装材サプライヤーと持続可能なエコパッケージを共同設計
– 製品設計初期段階から関わることで、双方のロジスティクス・工程最適化

こうした連携は国内だけでなく、グローバルサプライヤーとも活発になっています。

まとめ：技術と知恵で開拓する犬猫おやつの新たな地平線

犬猫用おやつの新製品開発には、旧態依然の製造現場・設計体制ではもはや限界があります。
デジタル技術、自動化、品質情報の徹底管理といった「技術導入」に、設計の上流段階からの「マーケティング志向」「バイヤー・サプライヤー連携」を組み合わせて初めて、今後の市場競争に打ち勝つ新製品がカタチになります。

現場で働く皆さまには、ぜひ社内外の壁を越えて情報共有しながら、“ラテラルシンキング”（水平思考）で知見を掛け合わせていただきたいと思います。
「こうあるべき」「うちのやり方が正しい」といった思い込みを捨て、製造業、調達、そしてバイヤーの新たな地平線を共に開拓していきましょう。

この変革の実践こそが、愛犬・愛猫を思う消費者の心を掴み、企業としても永続的な成長を実現する確かな道筋なのです。