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テキストマイニング実践で業務改善を図る分析手順と事例

目次
はじめに:製造業におけるテキストマイニングの重要性
テキストマイニングは、ビッグデータ時代において製造業でも非常に注目される分析手法となっています。
特に調達・購買、生産管理、品質管理といった現場では、日々膨大な定性情報、例えば購買記録やクレーム報告書、作業日報、会話記録などが積み重なります。
これら非構造化データは、従来型の分析手法では把握しきれず、埋もれたまま意思決定や業績改善の機会が失われてきました。
しかしテキストマイニングの導入によって、「人の目では見つけにくい現場の生の声」や「トレンドの兆し」、「問題発見の種」を発掘することが可能となります。
本記事では、昭和気質も色濃く残るアナログな製造業界でも無理なく始められるテキストマイニングの分析手順を、実例を交えてわかりやすく解説します。
バイヤー志望の方、サプライヤーとしてバイヤーの思考を知りたい方にも役立つ内容となっています。
テキストマイニングとは何か
テキストマイニングは、文章や言葉など非数値(テキスト)データから有益な傾向や意味を抽出する技術です。
AIや自然言語処理(NLP)の進化により、以前は人手でまとめるしかなかった大量の文書記録や会話履歴が自動で分析できるようになっています。
製造現場における対象データとしては、以下のようなものが考えられます。
- 購買部門の日報・商談メモ
- 納入クレーム・品質異常の報告書
- 作業者のヒヤリ・ハットや改善提案
- 生産・工程会議の議事録
- 得意先やサプライヤーとのメール・チャット履歴
これらを一元的に集計・分類・解析し、見るべきキーワードや絞るべきトピック・課題を「見える化」することが、テキストマイニングの主な目的です。
業務改善につなげる分析手順
1. データの収集・整備:まずは情報を集めよ
最初に行うべきは、「どこにどんなテキストデータが眠っているか」を探し、集めることです。
昭和型現場では、紙の報告書やExcel・Wordファイルでの保存が多いため、データのデジタル化が大きなカベになる場合もあります。
ここで重要なのは、「無理に全データを集めきるのではなく、まず目立つ課題領域や業務フローから着手する」ことです。
たとえば…
– クレーム報告(紙→Excel入力)
– 作業日報・ヒヤリハットの週次まとめ
– 月次の納入評価会議議事録
このように、現場で「問題が起きやすい領域の記録」からデータ収集を始めると、早期に効果が見えやすく定着もしやすいです。
2. 前処理・クレンジング:ノイズを取り除く
テキストデータは誤字脱字や表記ゆれ(例:「機械A」「機械A」)が多発します。
さらに手書き文字のOCR化では読み取りエラーもつきものです。
分析前に、単語統一や不要な情報の削除(例:「以上」や「よろしくお願いします」等の定型文)は必須タスクです。
シンプルなExcel関数やフリーのテキスト処理ツールから始められます。
慣れてきたら辞書機能付きの専門ソフト(KH Coderやテキストマイナーなど)も検討しましょう。
3. 形態素解析&頻出語集計:まず「何がよく語られるか」を洗い出す
テキストマイニングの基本は、「単語に分解してカウントする」ことです。
日本語は助詞や活用が複雑なので「形態素解析エンジン(例:MeCab)」にかけ、一文を意味のある単語(名詞・動詞・形容詞)単位で切り出します。
その上で「出現頻度の高い単語TOP100」などを集計することで、現場でよく語られる事柄や課題\テーマのアタリをつけます。
4. 共起ネットワーク・クラスタ分析:単語のつながりから深掘り
頻出単語をさらに深掘りする際は、「どの単語がどう結びついて語られるか」を見ることがポイントです。
たとえば「遅延」という単語が「材料」「供給」「設備故障」とよく一緒に登場していれば、「調達遅延の主因は材料・設備の両方にある」という仮説が見えてきます。
共起ネットワーク図やクラスタ分析グラフにより、目で見て納得しやすい解析結果になります。
5. 時系列・傾向分析:変化を見る
同じ単語頻度でも、月ごと・週ごと・担当者ごとに傾向がどう変わるかを追うことも業務改善のヒントです。
「4月にクレーム報告で“切断ミス”が急増」などタイムラインで観察し、現場でどんな現象が起きたかを探ります。
ここまでくれば原因究明だけでなく、再発防止やプロセス改善設計の打ち手にも活かせます。
現場における実践的な事例
事例1:購買部門でのサプライヤー評価改善
ある大手組立メーカーの購買部門では、サプライヤーへの評価をExcelの日報やメール内容から実施していました。
「納期遅延」「品質不良」「現場対応」のキーワードがもみ消され、月ごとの集計も担当者頼みで埋もれていたのが実状です。
テキストマイニングを導入し、過去2年分のやり取りを解析したところ、「特定部品に関しては納期クレームが集中しやすい」「担当者が変わると問い合わせや曖昧な依頼が増える」などの傾向が明らかに。
これにより、「発注フォーマット標準化」「重要部品のサプライヤー見直し」など、具体的な改善策に結び付きました。
現場の生データを「みえる化」したことでメンバーの納得感も高まり、以降は定期的に自部署・関連部署でのテキスト分析会も実施されるようになりました。
事例2:品質管理でのヒヤリ・ハット事例分析
自動車部品工場の品質管理部では、ベテラン作業者の改善提案やヒヤリ・ハット報告を全量回収できていなかったため、せっかくの現場知見が十分に共有できない課題が長年続いていました。
そこでまず「紙の日報」をスマホ入力に切り替え、週次で一括集計→テキストマイニングツールで分析するフローを構築。
分析結果から、「夜勤明けに被リンクする不良」「設備保守作業時の誤操作」など具体的なリスク情景が浮かび上がり、対応策(標準作業書の見直し、マニュアル再教育)に短期でつなげることができました。
「ベテランの勘が“見える化”された」との若手の声も多く、現場改善の好循環が生まれた事例です。
事例3:生産管理における工程会議の議事録分析
原材料高騰・工程自動化の真っ只中にある金属加工工場では、「会議議事録をテキストマイニングで分析」する手法を導入しました。
数年分の議事録を一括で解析したところ、「段取り替え」「外注先の納期」「設備の一時停止」といったワードが頻出しています。
さらに「段取り替え」と「ベテラン作業者の休日」など、思わぬ共起関係も出現。
これにより、「技能伝承が弱い工程ほど段取り替え時に遅延が生じやすい」仮説を立て、教育計画を強化する施策に落とし込みました。
また今後はDXとの連携でリアルタイム分析にも挑戦しています。
製造業アナログ現場こそテキストデータ活用の宝庫
現代の製造業は、見える部分のKPI管理(数値データ)が相当に進化している一方、人のノウハウや現場のつぶやきは依然としてアナログな現場力に頼るケースが多いです。
しかし実は、その「見えないデータ=暗黙知」にこそ革新的な改善のヒントが眠っています。
昭和から続く日報文化や現場会話、紙にメモされた改善提案こそ、テキストマイニングで“資産”に変えられる貴重な情報源なのです。
もし「うちの現場じゃ無理」「昔ながらの報告書が山積みだ」という会社こそ、一番最初のショートカットとしてテキストマイニングに取り組む価値があります。
バイヤー・サプライヤー視点で活かすテキストマイニング
バイヤーの方は、サプライヤーとのコミュニケーション履歴や過去のクレーム・交渉履歴をまとめて解析することで、どの課題や期待値が社内外で語られているかチェックできます。
「どのサプライヤーにどんなトラブル報告が多いのか」データで客観視することで、選定基準や管理ポイントの明確化に役立ちます。
サプライヤー側は、自社から見た納入先ごとのやり取りやフィードバック内容を分析することで、「顧客ごとに何を重視されているのか」「どんな地雷ワード・要注意命令があるか」を“言葉の傾向”からつかめます。
これにより「本当に期待されている品質」「コミュニケーション上のリスク」の発見や、改善策の自発提案が可能となります。
まとめ:現場データの“言葉”をみえる化する意義
製造現場では「成果に近いデータ=仕上がり数値」に目が行きがちですが、現場を知り尽くした立場だからこそ「声なき声」を浮き彫りにするテキストマイニングが変革の一手になります。
デジタル時代だからこそ、アナログ現場の“言葉”を武器にできるのです。
まずは身近なデータから、ひとつずつ着実に。
ブラックボックスだった現場の本音をテキストマイニングで“可視化”し、製造業の真の現場力と知見向上に役立てていきましょう。
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