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投稿日:2026年2月7日

製造業のIT人材不足を採用数だけで測る危うさ

はじめに―「IT人材が足りない」は本当の問題か?

製造業は、デジタル化やIoT、AI活用など、ものづくりの現場に新たな価値と生産性向上をもたらす「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の真っただ中にいます。
多くの企業が、「IT人材の不足」を声高に叫び、システムエンジニアやデータサイエンティスト、ITコンサルタントの採用強化を進めています。
しかし、「IT人材の数」を増やせば本当に解決するのでしょうか。
これは、SIerやITベンダーの論理に過ぎない危険な発想だと感じています。

本当の意味での「IT人材不足」とは何か。
単純な人員数では測りきれない、現場の実態に根差した課題とその打ち手について考察します。

製造業の現場とIT人材のギャップ

「数」より「質」そして「連携」こそが鍵

製造現場でよく聞かれるのは「デジタル化したいが、ITのプロがいない」「IoTデータを集めても、現場でどう使うか分からない」という声です。
この声を受けて、多くの企業が「とにかくIT人材を増やそう」とする傾向にあります。
確かに、外部からITエンジニアを新たに採用したり、既存社員にITリスキリングの教育を施す動きは、今や業界標準とすら言えるかもしれません。

しかし、現場とIT部門の間に横たわる「深い溝」は、単に人員数を増やすだけでは絶対に埋まりません。
求められているのは、現場業務を深く理解した上で、IT技術を現場目線で使いこなす力、現場×IT の「かけ算的人材」です。
これこそが「数」中心の採用至上主義で見落とされがちな本質です。

なぜギャップが生じるのか?

要因として顕著なのは、昭和から続くアナログ文化です。
現場ファーストの強い現業部門と、デジタル専門職集団であるIT部門。
たとえば、生産ライン、調達、購買、品質管理などで独自に培われた「勘と経験」中心の仕事の進め方に、IT部門が持ち込む「論理性・標準化・自動化」は相容れないことも少なくありません。

さらに、現場が使いやすいシステムを作らず、IT供給者の理論でツールやシステムのみを導入し、結局、現場利用が進まない「ITの墓場」を各地で量産しています。
この光景が、IT人材採用の「数」だけでは解消できない、真の問題を象徴しているのです。

なぜ単純な「IT人材増」は危ういのか?

1. 「IT専門家」の孤立化リスク

IT専門人材を採用しても、彼・彼女らが訳知り顔で現場業務に参加し、現場の空気に馴染めない、異物感を抱いたまま孤立してしまう。
このパターンは非常に多く見受けられます。
例えば、現場では「とりあえずExcel」「経験則とアナログな手書き業務が安全」などの文化が根強く残り、開発したシステムが使われないまま放置されることも珍しくありません。

結果、「IT人材を採ったのに成果が出ない」という悪循環を生みます。

2. 「現場発のIT」が本質的課題を解決する

現場で本当にITが根付くためには、「IT部門が用意したから使え」という下流工程的な発想ではなく、現場自身が課題を認識し、「その課題をITでどう解決するか?」の主体的思考と連携が求められます。

この流れをつくるためには、IT技術「だけ」に強い人材ではなく、調達購買、生産管理、品質管理、工場の自動化など、現場の業務プロセスを深く理解していることが不可欠です。
例えば、調達購買の現場で「誰が、いつ、どの資材を、どんな根拠で発注すべきか?」という意思決定フローを熟知した上で、そのプロセスをデジタル化・自動化できる人材が理想です。

3. なぜ「育成」や「現場内製化」が注目されるのか

最近では、製造業大手でも「IT 専門部署」頼りから「現場のリーダー層」がITスキルを相乗的に身に付ける「現場内製化」の動きが増えています。
なぜなら、「外から持ってきたIT人材=万能」ではなく、「現場で認められる人材」がITと現場のハブとなり、両者の橋渡し役として重要だと気付き始めたのです。

また、現場の「昭和型文化」を無理なくアップデートするには、小さな成功体験、例えばRPAやBIツール、ノーコード・ローコード開発などから段階的に始める成功体験も有効です。
これらを担うのは、職人気質の現場ベテラン×ITリテラシーの高い若手という「ハイブリッド型人材」です。

IT人材不足、本当に必要なのは「バイリンガル型人材」

バイヤーもサプライヤーも知るべき「現場視点」

例えば、バイヤーを目指す方、サプライヤーの方が「発注側の考え」を知りたい場合も、同様に「技術力がある」だけでは不十分です。
現場の求める品質、納期、生産効率、その真意を理解しつつ、IT技術でそれをどう実現できるかを考える力。
製品の仕様やコスト低減、QCD(品質・コスト・納期)最適化こそが最大のテーマであり、その「業務をITで助ける」という構図です。

「大量採用」に走るより、例えば「現場に一人、現場とITをつなげられる人材を育成する」ほうが遥かに組織にインパクトを及ぼします。
この「バイリンガル型人材」とは、「システム要件定義が書ける」だけでも、「購買の調達表が読める」だけでもありません。
両方の言語を話せる、現場事情を理解しながら、IT化のハードルと現場文化のギャップを翻訳できる能力なのです。

現場出身×ITリテラシー=最強のDX推進役

例えば、調達購買現場で10年、「なぜこのサプライヤーの納期トラブルが起きるのか」を肌で知っている人材が、BIツールやVBAで集計、ルール策定を実現出来ればどうなるか。
生産管理現場で20年以上の経験者が、簡単なIoTデバイスを導入してリアルタイム在庫を見える化できればどうなるか。

こうした「両刀遣い」が各部署で1人でもいれば、現場発のDX、地に足の付いた改善が進みます。
外部IT人材増員頼みから脱却し、「自前で変革を推進する」体質を作ることが、最も持続可能なIT人材戦略なのです。

昭和型「現場の勘コツ依存」から脱却するために

アナログ現場文化こそ、デジタル化の「土壌」

筆者は、昭和から続くベテラン主義や勘・経験に依存したアナログな現場こそ、実は「最大のデジタル化候補地」だと考えています。
なぜなら、「紙の帳票」「口頭指示」「転記ミス」「属人化された帳簿」がまだ多いからこそ、小さなIT化で抜本的な潜在能力が引き出されるからです。

デジタル化の出発点は「現場の不満」や「無駄に感じる手作業」です。
このボトムアップ型の課題抽出から始めることで、業務×ITの連携が生まれやすくなります。
若手メンバーや製造リーダークラスから、「現場の痛点」をIT視点で企画し、「最初に使うのは現場自身」という流れに転換することが会社全体の体質改善にも繋がります。

現場主導のIT改革が、製造業の未来を変える

「IT人材がいないから採用する」という、量の論理からは卒業すべきです。
採るべきは、「現場業務に精通し、かつITを理解し活用できる“ハイブリッド”」です。
数だけを増やしても根本的な解決にならず、真に必要なのは「両面を理解し、橋渡しできるバイリンガル型人材」だと声を大にして伝えたいです。

このような「現場のリアルな課題解決×IT活用」を担う人材こそ、これからの製造業の現場力、生産性、そして真の意味でのDXを牽引していくのです。

まとめ:採用至上主義から、「現場ITハイブリッド思考」へ

製造業の「IT人材不足」は、採用数で語れるほど単純ではありません。
適切な人材を、どこのポジションに、どのように配置し、どう育て、どう連携させるか。
調達、購買、生産管理、品質管理、工場自動化…あらゆる現場が、「現場の分かるIT人材」「ITの分かる現場人材」を必要としています。

今こそ、人員数ではなく「質」「現場との融合」にこだわるべきです。
現場目線で、本当に価値を生み出すIT人材戦略が、これからの製造業を強くします。
「数」重視から「ハイブリッド思考・現場連携」へ、時代の地平線を切り拓いていきましょう。

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