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投稿日:2025年12月24日

営業と購買を兼ねることでどちらも中途半端になる恐怖

はじめに:営業と購買、兼任のリアルな現場課題

日本の製造業、とりわけ中小・中堅クラスの工場では、人員のスリム化や合理化の流れの中で、営業と購買業務を兼任するケースが少なくありません。

「人手が足りないから」「どちらも対外業務だから」という理由で、現場の実務者は二つの視点を持ち業務対応していることでしょう。

しかし、どちらも“中途半端”になる恐怖を、当事者やマネジメントが強く自覚しているかは甚だ疑問です。

この記事では、営業と購買を兼ねることによる現場のリアルな課題や、そこに起きている昭和的な業務慣習への警鐘、そして明日からできる現場視点の解決策について、20年以上製造業一筋で働いてきた私の実体験をもとに深堀します。

営業と購買を兼任する現場の実情

理由なき“兼任”の増加

元々、営業と購買は全く異なるKPI(評価指標)とカルチャーを持っています。

営業は売上拡大・顧客満足・市場開拓が指標です。

一方、購買はコストダウン・納期順守・サプライヤー管理が主眼となります。

本来は、利益相反になりえる立場同士。

しかし、人手不足の解決策として現場のベテランや部署の“何でも屋”に、営業と購買が兼任で割り当てられる問題が、今もなお製造業界では根強く残っています。

業績評価の矛盾

営業であれば売上目標、購買なら原価低減や安定調達が指標となるはずです。

ところが、兼任者にはあいまいな評価基準しか与えられません。

顧客のご機嫌をとりながらも、原価のためにサプライヤーとは値下げ交渉をする。

自分の中で矛盾のジレンマが起きます。

結局、どちらも中途半端になり、結果も評価も曖昧。

自責と他責の区別が不鮮明な中、心身ともに疲弊するだけです。

営業×購買兼任 “昭和的”慣習がもたらす問題

一人の多能工化が招く属人化リスク

兼任という名のもとに、現場のノウハウ・顧客リスト・サプライヤーとの個別の信頼関係が、たった一人に集約されていきます。

よく言えば多能工、悪く言えば属人化です。

ブラックボックス化による情報の沈殿、ナレッジの未共有というリスクが積み上がります。

退職・休職・異動などが発生した際、商流や仕入力が一気に断絶するリスクは人口減時代、現代の工場にとって無視できません。

取引先や現場スタッフとの信頼のズレ

“あの人は何でもやってくれる”という神話は、製造現場の美談ではありません。

営業として顧客ニーズを引き出し、購買として社内工場をコストと納期で締め上げ、サプライヤーには厳しい条件を出す。

一見オールラウンダーですが、どこの立場の味方か分からないと、周囲から徐々に信頼を損ないます。

また、現場スタッフから見れば「もっとたくさん現場情報を拾い上げてほしい」「コスト優先で現場の声が聞こえない」など、微妙なズレが生じやすくなります。

兼任だから“中途半端”になる構造的な理由

営業と購買の思考法の違いと摩擦

営業には「案件を取る」「顧客満足重視」という攻めの姿勢が必要です。

一方、購買は「コストダウン」「リスクヘッジ」という守りの思考が基本です。

攻めと守り、真逆の価値観を約一人で運用すると、どうしてもどちらも「もう一歩」の決断ができなくなりがちです。

例えば、営業視点で柔軟に納期を受けてしまい、購買としては仕入先や生産の納期調整が困難になる。

逆に、購買としてサプライヤーに厳しすぎる交渉を重ね、営業側で取引魚を逃してしまう。

結果、現場の最適解ではなく、自分だけの都合の良い落としどころを探すことになってしまいます。

責任分界点(バウンダリ)の曖昧化

業務の専門性をもち、明確な成果責任・分担責任があれば、自己の持つKPIに集中できます。

しかし、兼任を認めてしまうと「この業務はどこまで自分の責任?」という線引きが不明確に。

与えられる目標も二軸・三軸になり、その全てで高評価を得ることは極めて困難です。

それゆえ、「どちらも中途半端だった」と自己評価してしまいがちです。

製造現場の「営業と購買」兼任が残る理由とは

“やりくり根性”と“最後は現場まかせ”

日本の製造業の背景にあるのは、設備投資より現場の工夫・労働力に依存するという昭和から続く価値観です。

人員不足・業務合理化も「現場が頑張る」「多能工でやりくり」といった美辞麗句で覆われがちです。

現場の頑張りだけで組織課題が“解決した風”になることで、長期的なシステム投資や業務BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)を先送りにしてきた歴史が今でも根強く残っています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の遅れ

製造現場のアナログ志向や、対面主義で人間関係を重視する企業風土も兼任の温床です。

エクセル管理、紙の伝票、口頭指示。「見て覚えろ文化」も根強いままです。

加えて、デジタル化への投資より、現場ノウハウの“属人的な継承”に任せてしまいがち。

DXの推進が遅れ、組織としての業務標準化が進まないのです。

現場目線で考える「兼任中途半端」からの脱却策

現場主導の業務プロセス設計

トップダウンで「兼任禁止」を打ち出すよりも、まずは現場主導で業務フローの可視化・洗い出しを行いましょう。

購買業務、営業業務の具体的なKPI、商流・支流の情報フローを整理します。

標準化した業務分担・チェックリストを可視化し、属人化を減らす仕組みを現場主導で作るのが有効です。

これにより、どこまでを1人が担い、どこから分担・連携が必要かを明らかにできます。

業務支援システム(SFA・購買システム)導入

営業管理にはSFA(Sales Force Automation)、購買管理にはE-procurementやSRM(Supplier Relationship Management)などのITツールを活用しましょう。

システム上で顧客対応・進捗管理・原価シミュレーション・取引履歴を共有することで、業務の透明性が担保され、引き継ぎや協業・情報共有が容易になります。

IT投資に腰が重い企業でも、月額サブスク型の安価なツールから第一歩を踏み出すことが可能です。

リスキリングと多能工の“限定的な最適化”

多能工は全否定する必要はありません。

大切なのは、営業・購買両方のノウハウを最低限理解しつつ、主担当/副担当の分業体制を明文化することです。

例えば、営業は営業活動60%+購買支援40%、購買はその逆など、比重を決めた業務設計により“なんでも屋”防止に繋がります。

同時に、勉強会やOJTで相互の目線をリスキリングし続ける太いパイプを作ることが重要です。

バイヤー/サプライヤーの目線で伝えたいこと

バイヤーに求められる“見える化”スキル

今まさにバイヤーを目指している方へ。

営業も購買も経験できるのは大きな資産です。

しかし、どちらにも共通する根本的スキルは「全体最適を徹底的に見える化し、論理と感情の両面で伝わる仕事をすること」です。

物の流れ・お金の流れ・情報の流れ。

すべてをフローで理解し、社内外で共有できる力があれば、組織内でもサプライヤーからも本当に信頼される存在になれます。

サプライヤーはバイヤーの葛藤を読み解こう

自社の担当バイヤーが営業と購買を兼ねている場合、サプライヤーが期待しても無理な要望があることも。

「急な短納期」「突然のコストダウン要求」が飛んでくる背景には、そのバイヤー自身が社内の営業プレッシャーや現場の人手不足に悩んでいるジレンマがある可能性が高いです。

いかに相手の内情を想像し、Win-Winに歩み寄れる提案・交渉ができるか。

単純な価格勝負でなく、調達リスク低減やサプライチェーン全体の最適化という上流からの提案型取引が、これからは重要となります。

まとめ:現場目線で創る“未踏の地平線”

製造業の現実として、営業と購買の兼任は残念ながら今すぐゼロにはできません。

しかし、兼任者の属人的な頑張りや精神論ではもはや限界の時代です。

今こそ、現場ベースでの業務可視化、IT活用、リスキリング、分担意識の強化がより一層求められます。

“昭和”の慣習に依存せず、未来の製造業の新たな地平線を切り開くために、自社、自職場、自分自身を少しずつアップデートしていきましょう。

どちらも「専門家」として胸を張れる、新しいバイヤー・営業・購買スタッフが増えることを、製造業界の一員として心より願ってやみません。

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